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映画「プロメテウス」:ラストカットの生物が続編を示唆。商売の巧さはエイリアンの生命力以上か

「人類の起源」という壮大なテーマを前面に出した宣伝が繰り広げられていた,リドリー・スコット監督の最新作。
内容は明らかに「エイリアン」のプリクエル(前日譚)なのだが,宣材は勿論のこと,予告編を観てもそれとは分からない作りになっているのは,果たして興行成績にどんな影響を与えたのだろうか。内容もさることながら,洋画離れが著しい興行レースと宣伝活動の関係を考える参考になるのではと思い,調べてみた。

すると,日本での公開最初の週は邦画・洋画合わせた興収ランキングで4位につけ,総興収20億円を狙えそうな勢い(映画.com)だったらしいのだが,4週目にはベストテンから落ち,ファーストランは5~6週で終わった一方で,世界興収では既に制作費(1億3千万ドル)の倍以上となる3億ドルを超えたことが分かった。
この結果だけを見ると,少なくとも日本では「エイリアン」シリーズの前日譚という位置付けをあえてしなかったことが,観客動員の上でマイナスに働いた,と結論付けることも可能かもしれないが,同時期に公開された「バイオハザードⅤ」の好調ぶりを見てしまうと,この国ではクラシックとなった映画よりもゲームの世界観の方が,時代のグリップ力が強い,と見るのが正しいのかもしれない。

物語よりもデザインの斬新さや美術の細部等に独自性を打ち出してきたリドリー作品の例に漏れず,今作も人間のオリジンとなった異星人と,エイリアンの起源となった生物が交配して新たな生物が生まれる,という筋立て自体には,さして吸引力はない。
スウェーデン版「ミレニアム」のリスベットを演じたノオミ・ラパスが,アンドロイドのデヴィッド(マイケル・ファスベンダー)の策略にはまり,謎の生物を身ごもりながら,自ら機械を使って帝王切開手術を行うシークエンスでは,「ミレニアム」で培ったラパスの生命力溢れるアクションが光るが,それ以外にSFアクション映画としての新機軸は見当たらない。更に言えばシャーリーズ・セロンを筆頭に,キャラクターがきちんと書き込まれていない登場人物だらけの上,アンドロイドの行動や異星人の意図など,解決されずに残る疑問も多い。「柄」だけの大作と言われても仕方ないだろう。

ではまったく魅力がない失敗作なのか,と問われると,一概にそうも言えないと答えざるを得ない。それは実はただもう「巨大さ」という一点で,見世物としてはきちんと成り立っているからなのだ。
プロメテウス号のヒューマンスケールのリアルな大きさから始まって,辿り着いた星の遺跡や遺構,更には砂嵐と続いて,極めつけは異星人(DNA上は≒人間)が操る宇宙船の途方もない大きさ。どれもが明らかに,かつてローランド・エメリッヒがひたすら追求した「馬鹿デカさ」に負けないぞ,という監督魂を感じさせるものばかりだ。IMAXで観ていたら,☆ひとつは増えていたかも。そんなことで良いのかどうかはともかく。
★★★
(★★★★★が最高)
コメント ( 1 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
beckettさまへ (searchers)
2012-10-11 23:51:26
beckettさまコメントありがとうございました。
お元気そうで何よりです。
とても懐かしく,以前いただいてiTunesに入れさせて戴いたマーク・リボー絡みの曲を聴きながら,昔のことを思い出しておりました。
職場にbeckettさんのような趣味人がいなくなり寂しい思いをしていますが,好奇心の量だけは90年代生まれの若い方々に負けないように精進したいと思っております。
何処かの映画館でお目にかかれる日を楽しみにしております。
 
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