札幌を舞台にした和製ハードボイルドの第1作は,大泉洋と松田龍平のコンビが醸し出す味わいが大いに受け,興収10億円を突破。キネマ旬報のベストテンにも入選(第10位)し,まさかのシリーズ化も実現した。
ご当地札幌市民としては,よくある観光名所めぐりに終わらずに,何と言うことのない路地や「名店」とは呼ばれてこなかった(失礼)普通のお店をロケ地に選んだ制作陣の姿勢には,非常に好感を持ったものの,作品としてはそれ程高く評価した訳ではなかった。
その理由のひとつは,松田龍平演じる北大助教高田の役割が中途半端で,大泉とのコラボレーションが「名コンビ」というまでには到らなかったこと。
もう一つには,物語が主役のキャラクターに比べてウェットに流れ過ぎたことに加え,ヒロインを演じた小雪の一本調子な演技が,作品全体のフットワークを重くしてしまっていたことが挙げられる。
続篇となる本作でもその点が注目されたが,何より目立ったのはアクションの量的な増加だった。
室蘭からの帰途,中山峠を過ぎた後でスキー場に迷い込むという地理的な錯誤(ルスツも旧中山峠も峠の室蘭側)はひとまず置くとして,怪優浪岡一喜が高田の車にしがみつくシークエンスには,タランティーノの「デス・プルーフinグラインドハウス」を意識したかのような執念が画面に定着している。
市電車輌内でのアクションも,反原発派の素人を相手にした大乱闘というシチュエーションの新しさもさることながら,電車からトラックに飛び移るという大胆なアクションには,公共交通を使ったロケという制約も吹き飛ばすような勢いがある。
しかし,懸案だった松田の役割は改善されておらず,「北菓楼」のおかきの宣伝マン以上のはみ出し方は見られない。
物語にも際立ったツイストはなく,室蘭ロケも話を拡げる役割は果たしていない。
そんな中,もう一つの欠陥だったヒロインの造形についてだけは,大幅な改善が見られる。尾野真千子は作品全体に占めるコメディ的要素の分量を正確に測定し,そのペースを守りながら,運命に翻弄されるヒロインという役回りをきっちりと演じて見せている。コメディ・リリーフも引き受けつつ,クールな佇まいを印象づけるという尾野の卓越した力量があってこそ決まった第3作も,鍵はヒロインのキャスティングかもしれない。
★★★
(★★★★★が最高)
ご当地札幌市民としては,よくある観光名所めぐりに終わらずに,何と言うことのない路地や「名店」とは呼ばれてこなかった(失礼)普通のお店をロケ地に選んだ制作陣の姿勢には,非常に好感を持ったものの,作品としてはそれ程高く評価した訳ではなかった。
その理由のひとつは,松田龍平演じる北大助教高田の役割が中途半端で,大泉とのコラボレーションが「名コンビ」というまでには到らなかったこと。
もう一つには,物語が主役のキャラクターに比べてウェットに流れ過ぎたことに加え,ヒロインを演じた小雪の一本調子な演技が,作品全体のフットワークを重くしてしまっていたことが挙げられる。
続篇となる本作でもその点が注目されたが,何より目立ったのはアクションの量的な増加だった。
室蘭からの帰途,中山峠を過ぎた後でスキー場に迷い込むという地理的な錯誤(ルスツも旧中山峠も峠の室蘭側)はひとまず置くとして,怪優浪岡一喜が高田の車にしがみつくシークエンスには,タランティーノの「デス・プルーフinグラインドハウス」を意識したかのような執念が画面に定着している。
市電車輌内でのアクションも,反原発派の素人を相手にした大乱闘というシチュエーションの新しさもさることながら,電車からトラックに飛び移るという大胆なアクションには,公共交通を使ったロケという制約も吹き飛ばすような勢いがある。
しかし,懸案だった松田の役割は改善されておらず,「北菓楼」のおかきの宣伝マン以上のはみ出し方は見られない。
物語にも際立ったツイストはなく,室蘭ロケも話を拡げる役割は果たしていない。
そんな中,もう一つの欠陥だったヒロインの造形についてだけは,大幅な改善が見られる。尾野真千子は作品全体に占めるコメディ的要素の分量を正確に測定し,そのペースを守りながら,運命に翻弄されるヒロインという役回りをきっちりと演じて見せている。コメディ・リリーフも引き受けつつ,クールな佇まいを印象づけるという尾野の卓越した力量があってこそ決まった第3作も,鍵はヒロインのキャスティングかもしれない。
★★★
(★★★★★が最高)