goo

映画「ミラクル・ニール!」:モンティ・パイソンの輝きよ,今いずこ!

モンティ・パイソンと聞いて真っ先に思い浮かべるスタッフの名前は,テリー・ギリアムと本作の監督であるテリー・ジョーンズだ。評判を呼んだテレビ番組終了後に,ギリアムがパイソンで培った諧謔趣味を最大限に活かして「未来世紀ブラジル」という,映画史に燦然と輝く金字塔を打ち立てたのに対して,純然たるコメディ路線に残って仕事を続けたジョーンズに対する世評は,残念ながらギリアムに対するもの程高くはなかったというのが正直なところだ。
十字軍を研究する歴史学者という側面を持ち,パイソンの(やや偏執的とも言える)中世趣味を支える支柱として活躍してきたそんな彼が,パイソンの後継者として新世紀を闊歩する(と勝手に私が見ている)サイモン・ペッグと組んだと聞けば,否が応にも期待は高まる。

文明の進んだ宇宙人たちがランダムに選んだ地球人にどんなことをも可能にする,いわば「万能力」を授け,その振る舞いから彼らの文明を滅ぼすべきかどうかを判断する,というのがメインプロット。
どうやらその宇宙人たちに扮しているアクターの声は,かつてサッカー場に集った哲学者たちや,変な歩き方を競った英国紳士たちのもののようだ。私を含むパイソン信者にとって,つかみはOK。
だが問題はその後だ。

ペッグは熱演している。ゾンビにアナログ・レコードを投げつけて鮮烈な日本デビューを果たした「ショーン・オブ・ザ・デッド」のように,典型的な「巻き込まれ型」の主人公として,あらゆる望みを叶えるために懸命に右手を振り続ける。しかし肝心のギャグがことごとく不発だ。
何よりも飼い犬が英語を話せるようにして,しかもロビン・ウィリアムズに声優をやらせるという,大ネタが活きていない。出演時にはすでに妻が公表した病気(レビー小体型認知症)の症状が現れていたのかどうか定かではないが,全盛時に見せたエネルギーはまったく感じられず,下ネタもヒロインのケイト・ベッキンセール同様に「どうぞご自由に」という反応しか出来ない。唯一笑えたのはニール自身の願いが「イギリス首相になりたい」ではなく「アメリカ大統領になりたい」だったことと,望みが叶った瞬間に暗殺者からの凶弾に見舞われるというギャグ。
そこで凶弾が命中して絶命する寸前に「やっぱりイギリス首相になって,パナマ文書で追求されるくらいの方が良かった」と呟いていたら,断然五つ星だったのに。残念。
★★
(★★★★★が最高)
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
« 2016年J2リー... 映画「クーパ... »
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。