
2013年のクリスマスシーズンに,クリスマスに集まった大家族の喧噪からちょっと距離を置いて,彼らの様子を見ていた思春期の男の子が,パーティーの終わりに自分が撮ったヴィデオをみんなに見せて,輪に入らない彼を心配していた母親やおばあちゃんたちの涙を誘うというiPhoneのコマーシャルがあった。
ベタとスタイリッシュの境界をうまくついた,いかにもアップルらしいオチのコマーシャルだったが,バックに流れるキャット・パワーの切ない歌声「Have Yourself a Merry Little Christmas」もまた,彼らの涙腺を刺激することに大きな役割を果たしていた。
ビートルズのカヴァーを大々的にフィーチャーして話題を呼んだ「アイ・アム・サム」の監督であるジェシー・ネルソンは,一見そんなアップルのCMの設定を劇場用にブローアップしただけのように見える新作「クーパー家の晩餐会」においても,音楽的センスをフルに発揮することによって,ドラマの緊密度を上げる事に成功している。
雪の街なみを写した冒頭に流れる,まるであつらえたかのようなフリート・フォクシーズ「White Winter Hymnal」から始まって,元ヒッピーだという主人公夫妻のキャラクター設定上,途中で何度も使われるボブ・ディラン,家族が表面上だけでも声を合わせようと歌ったら,あららみんなそんなに上手だったの?クリスマスキャロルに,ラストを締め括るアリソン・クラウスとロバート・プラント。空港でのフライト待ち中に即席カップルになってしまうオリヴィア・ワイルドとジェイク・レイシーがひとつのヘッドフォンのLRを分けて聴くニーナ・シモンと合わせて,クレジットに名前があったT・ボーン・バーネットの趣味と監督のセンスが合体した音楽に身を任せるだけでも,入場料金分の楽しさを味わえることは請け合える。
くだんのCMで言うと,少年役に近いポジションのメリサ・トメイ,ほとんど何もしないし,絡むエピソードも中途半端ながら,そこに「いる」だけで観客の心をさらってしまうアラン・アーキンが核となって,フライヤーにあるような「色とりどりの嘘」と言うには大げさ過ぎる,他愛ない隠し事程度のエピソードの連鎖を楽しむ107分。こんな団らんが,熊本で余震の恐怖にさらされている皆さんにも,1日も早く訪れますように。
★★★
(★★★★★が最高)
ベタとスタイリッシュの境界をうまくついた,いかにもアップルらしいオチのコマーシャルだったが,バックに流れるキャット・パワーの切ない歌声「Have Yourself a Merry Little Christmas」もまた,彼らの涙腺を刺激することに大きな役割を果たしていた。
ビートルズのカヴァーを大々的にフィーチャーして話題を呼んだ「アイ・アム・サム」の監督であるジェシー・ネルソンは,一見そんなアップルのCMの設定を劇場用にブローアップしただけのように見える新作「クーパー家の晩餐会」においても,音楽的センスをフルに発揮することによって,ドラマの緊密度を上げる事に成功している。
雪の街なみを写した冒頭に流れる,まるであつらえたかのようなフリート・フォクシーズ「White Winter Hymnal」から始まって,元ヒッピーだという主人公夫妻のキャラクター設定上,途中で何度も使われるボブ・ディラン,家族が表面上だけでも声を合わせようと歌ったら,あららみんなそんなに上手だったの?クリスマスキャロルに,ラストを締め括るアリソン・クラウスとロバート・プラント。空港でのフライト待ち中に即席カップルになってしまうオリヴィア・ワイルドとジェイク・レイシーがひとつのヘッドフォンのLRを分けて聴くニーナ・シモンと合わせて,クレジットに名前があったT・ボーン・バーネットの趣味と監督のセンスが合体した音楽に身を任せるだけでも,入場料金分の楽しさを味わえることは請け合える。
くだんのCMで言うと,少年役に近いポジションのメリサ・トメイ,ほとんど何もしないし,絡むエピソードも中途半端ながら,そこに「いる」だけで観客の心をさらってしまうアラン・アーキンが核となって,フライヤーにあるような「色とりどりの嘘」と言うには大げさ過ぎる,他愛ない隠し事程度のエピソードの連鎖を楽しむ107分。こんな団らんが,熊本で余震の恐怖にさらされている皆さんにも,1日も早く訪れますように。
★★★
(★★★★★が最高)