子供はかまってくれない

子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。

2012年TVドラマ夏シーズン・レビューNO.1:「ビューティフルレイン」

2012年07月09日 23時43分04秒 | TVドラマ(新作レヴュー)
テレ東ならばビクともしなかったはずの平均視聴率「3.9%」で,フジテレビの屋台骨が傾いだかのような騒ぎを起こし,最後は途中打ち切りの憂き目に遭った「家族のうた」の後継番組「ビューティフルレイン」だが,初回の視聴率は「家族のうた」最終回の約4倍となる12.9%。数字に極度に敏感になっていると思しきフジテレビ幹部も,とりあえずホッと胸を撫で下ろしていることだろう。

主人公の名前を「木下圭介」としたことから察するとおり,どうやら「先人が作り上げてきたホームドラマの王道に戻ろう=原点回帰だ!」というのが制作方針のように思える。
豊川悦司が罹る「若年性アルツハイマー」がモチーフとして取り上げられてはいるが,あくまでテーマは父娘の無償の愛であり,その舞台となるのは,下町の人情が生きる古き佳き商店街。当然の如く底意地の捻れた悪役は出て来ない。でんでんは,あの「冷たい熱帯魚」の極悪殺人鬼からは想像も出来ない「善い職人」だし,蟹江敬三はNHK「胡桃の部屋」で見せた,心に闇を抱えた父親とは似ても似つかない「善い社長」。とにかくみんなが芦田愛菜ちゃんの引き立て役として,画面を清く美しく磨くことに専念しているかのようによく働く。
登場人物全てにかしずかれた愛菜ちゃんの演技は,といえば,これがやっぱりさすがの猿飛。水筒をなくしたことを告白する場面の,清らかな涙の量は,あの「巨人の星」における伴宙太のそれに匹敵する洪水状態だった。

そんな正統派ドラマだが,8日に放送された第2回目では,早くも一桁を記録してしまった。
芦田愛菜鉄板伝説が崩れるのかどうか,まだ答を出すのは早過ぎるかもしれないが,今後この昔懐かしいとさえ見える「単焦点ドラマ」に厚みが出てくるかどうかは,ひとえに中谷美紀にかかっているような気がする。

それにしても,堤幸彦が監督した「明日の記憶」もそうだったが,「アルツハイマー診断テスト」は恐ろしい。ドラマが終わってしばらくしてからも,豊川悦司が劇中で医師役の安田顕から覚えているかをどうか問われる「さくら,犬,オートバイ」の三つの単語を呟いては,安心している自分が怖い。


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