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映画「君の名は。」:聖地巡礼が始まっている,というのも肯ける

公開後2週目の興行が最初の週を上回るという,今の日本の興行では考えられない事態が起こっている,と話題の作品。私が観に行った平日の夜の回も,学校帰りの高校生,それもカップルよりも5〜6人の男女混成グループを中心に8割程度の入りで,子供向け大ヒットアニメ作品に多い「幼児とその親」による昼間に偏った稼働という状況に比べても,アニメーション作品としては異例の腰の強い興行となっているのではないかと思われた。洋画に興行界を牽引するような大ヒット作品がなかった中で,これまたまさかの大ヒットとなった「シン・ゴジラ」と併せて,2016年の夏は東宝の笑いが止まらないシーズンとなったようだ。

新海誠監督作品は初めてだったが,最初は大林宣彦の「転校生」の焼き直しなのか,と思わせておいて,震災を経験した今の日本ならではの「アンチ・デザスター映画」へと繋げる発想には,「今まで知らなくてごめんなさい」と素直に頭を下げた次第。物語が進んでいく過程で,都会と田舎,震災前と被災後,思春期の男子高校生と大人の女性,そして男と女という,はるか隔たった存在を等値のものとして描くことにより,それをつなぐための想像力の大切さが滲み出てくる構成力の巧みさにも拍手を送りたい。特に奥寺さん(長澤まさみ)が,青葉が入れ替わった瀧に惹かれてデートをするが,男の子の瀧にはすぐに飽きてしまうというエピソードには,同性に対するシンパシーを超えた感情さえ仄めかしていて,唸らされた。
更に物語の重要な鍵となる流星や田舎に残る自然は勿論,ジブリ作品とは趣を異にする独特の陽光と影の描写が印象的な作画も強い印象を残す。主人公の二人を演じる神木隆之介と上白石萌音も適役で,その溌剌さは実写映画以上に二人の個性を輝かせていたように思う。

ただこの大人気を支えている大きな要素であるらしいRADWINPSの挿入歌に感じた違和感は,最後まで拭えなかった。かつて長澤まさみが「大好きです」と告白していたように覚えているが,かねてから低めのエネルギー準位で自己完結しているという印象を持っていたバンドの音は,残念ながらパラレルワールドをつなぐバイパスとしての役割を果たしているとは思えなかった。
その辺は感受性の問題というよりも,好みの領域なので,それをそのまま評価に持ち込むのも大人げないとは思うが,総合芸術の宿命として涙を呑んで「★ひとつマイナス」ということで。
★★★
(★★★★★が最高)
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