子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。
子供はかまってくれない
映画「ライト/オフ」:昔,夏になると公開されていたB級「納涼映画」を思い出す
夜,灯りのスイッチを入れると部屋の向こう側に何者かの姿のシルエットが浮かび上がる。驚いて灯りを点けると,そこには誰もいない。もう一度消すと再びシルエットが現れるが,明るくすると消える。
フライヤーによると「全世界で1億5千万回再生された」という実在の恐怖映像を映画化した作品とのこと。その恐怖映像が果たして本物なのか,作られたものなのかはこの際置いておくとして,映像自体にインパクトがあることは間違いない。トイレに起きて,廊下で同様の現象に出くわとしたら,絶叫してしまうことに関しては絶大なる自信がある。佳作「死霊館」の監督ジェイムズ・ワンが食指を動かされたというのもむべなるかな。
しかしアイデア一発勝負で,それを1本の映画に仕立て上げるためには,相当の腕力が必要だ。ワンが監督ではなく制作に回ったのも,話題となった「衝撃映像」を,商品として流通し得る1本の「映画」に昇華させるために求められるフラットな視点が必要という判断だったと推測されるが,映画化の決断も含めてそこまでは理解できる。
実際,冒頭からクライマックスまで,何度も出てくる件の映像は,それだけ取り出せばかなり怖い。
だが「ファイナル・デッドブリッジ」を手掛けた脚本のエリック・ハイセラーと,「アナベル 死霊館の人形」の続編のメガホンも取るというスウェーデン人の監督デヴィッド・F・サンドバーグには,たったひとつの映像を90分の完結した物語として成立させるだけの構成力やアイデアはなかったようだ。母親の想像上の友人が実体化した死霊,というアイデアを活かす術を見出せなかった制作陣が頼ったのは,件の映像を過剰な音とショックでひたすら装飾して怖がらせるという,高校の学園祭のお化け屋敷的手法のみ。死霊の登場を彩る効果音が大きくなればなる程,執拗に生者を狙う死霊の怨念を,物語の中で立体化出来なかった恨みが前面に出てくるようで,空しいばかりだった。
昔,邦画洋画を問わず暑い時期を待って公開された,ハマープロや新東宝のB級恐怖映画(勿論,全てとは言わないけれど)には,クライマックスよりも死んでいく人間の怨念や情念にフォーカスした作品が幾つもあった。想像力とアイデアで低予算を補うためには,最も恐ろしい人間のダークサイドにスポットライトを当てるべき。本作の制作陣には,そんな方針を貫いた中川信夫を見直すことを勧めたい。
★
(★★★★★が最高)
フライヤーによると「全世界で1億5千万回再生された」という実在の恐怖映像を映画化した作品とのこと。その恐怖映像が果たして本物なのか,作られたものなのかはこの際置いておくとして,映像自体にインパクトがあることは間違いない。トイレに起きて,廊下で同様の現象に出くわとしたら,絶叫してしまうことに関しては絶大なる自信がある。佳作「死霊館」の監督ジェイムズ・ワンが食指を動かされたというのもむべなるかな。
しかしアイデア一発勝負で,それを1本の映画に仕立て上げるためには,相当の腕力が必要だ。ワンが監督ではなく制作に回ったのも,話題となった「衝撃映像」を,商品として流通し得る1本の「映画」に昇華させるために求められるフラットな視点が必要という判断だったと推測されるが,映画化の決断も含めてそこまでは理解できる。
実際,冒頭からクライマックスまで,何度も出てくる件の映像は,それだけ取り出せばかなり怖い。
だが「ファイナル・デッドブリッジ」を手掛けた脚本のエリック・ハイセラーと,「アナベル 死霊館の人形」の続編のメガホンも取るというスウェーデン人の監督デヴィッド・F・サンドバーグには,たったひとつの映像を90分の完結した物語として成立させるだけの構成力やアイデアはなかったようだ。母親の想像上の友人が実体化した死霊,というアイデアを活かす術を見出せなかった制作陣が頼ったのは,件の映像を過剰な音とショックでひたすら装飾して怖がらせるという,高校の学園祭のお化け屋敷的手法のみ。死霊の登場を彩る効果音が大きくなればなる程,執拗に生者を狙う死霊の怨念を,物語の中で立体化出来なかった恨みが前面に出てくるようで,空しいばかりだった。
昔,邦画洋画を問わず暑い時期を待って公開された,ハマープロや新東宝のB級恐怖映画(勿論,全てとは言わないけれど)には,クライマックスよりも死んでいく人間の怨念や情念にフォーカスした作品が幾つもあった。想像力とアイデアで低予算を補うためには,最も恐ろしい人間のダークサイドにスポットライトを当てるべき。本作の制作陣には,そんな方針を貫いた中川信夫を見直すことを勧めたい。
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(★★★★★が最高)
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