山里ひぐらしの小径

木曽路の入り口、岐阜県中津川市から
人と自然とのかかわりをテーマに、山里、植物、離島など。

椎葉村で 91歳の方から旅人への言葉

2010-02-03 | 山里
山里文化研究所の2冊目の聞き書き集は恵那市南部の「奥矢作」地域のもの。
刊行して10カ月(……もう何年も昔のような気がするけど)、
その地域のリーダー的な存在で、聞き書きのお世話をしてくれた大島さんに先日会ったらこう言ってくれた。
「あの本が出たとき、地域の人はとてもよろこんだ。自分が出ているとか、誰が出ているとか。いろんな人にお礼を言われた。山里の人は、話を聞いてくれる人を待っている。家では、息子も孫も話し相手にはならない。第一、家にいない。でも、ほんとうは話したいことがたくさんある。自分の持っているものを誰かに伝えたいと思っている」

そんなふうに思ってくれているとは、うれしい。
訪れる方は訪れる方で、家までおしかけちゃって厚かましくないだろうか、忙しいところ邪魔したんじゃないだろうか、お茶菓子などいただいちゃって大丈夫だろうか、ずかずかと土足で人の心の中に踏み込んでいるんじゃないだろうか、と
いろいろな心配が頭の中を駆け巡っている。

話を聞かせてもらうと、心から、ありがたく思う。
山里の人も、聞き手である都市の人も、お互いにうれしくなる聞き書きが
続けていけるといい。


昨年12月、椎葉村で、その日初めて会った91歳のおじいちゃんの言葉。
辺境の話を聞きに来た旅人である私に対して。
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いろいろなことを言うてお話するがいいですよ、田舎の者は。金もらおうと、何もらおうと思わんけど、変わった人が来て物言うてくれるとね、気持ちが違うですわ。もう、何にも欲も得もない。変わった人が来てあいさつでもしてくれればねえ、それが一番ありがたいですよ。
また時期があったら来てくださいよ。うちも3人や5人は寝るとこあるうて。あまり新しいことはないけど。おやじが二十歳んとき造ったっちう家も120年ばかなったもんね。
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なんてやさしいんだろう。