「日本の夏の暑さは、年々過酷さを増しています。
毎年、ものすごい数の熱中症の患者さんが救急搬送されています」。
毎年のように続く酷暑に、こう警鐘を鳴らすのは内科・総合診療医の橋本将吉氏。
熱中症に夏バテ、気象病など、とりわけ高齢者にとっては、
生命の危機に直結するこうした「酷暑の三重苦」に対して、
どう対処すればいいのかを橋本氏が解説します。
※本稿は、橋本氏の著書『「老いても元気な人」と「どんどん衰えていく人」ではなにが違うのか』から、
一部を抜粋・編集してお届けします。
■「〇〇バテ」はエネルギー不足になっている可能性大
夏バテというのは昔からありましたが、
今は春バテ、秋バテ、冬バテなんて言葉もあるぐらいですから、
人間、年中バテていることになりますね。(略)
理由はさまざまあるでしょうが、
「バテる」というのは、いわば体がガス欠になっている、
つまりエネルギー不足になっている可能性が考えられます。
エネルギーを補うには、糖質がてっとり早いですが、
食べすぎは、当然体には良くありません。
糖質をプラスして補うというよりは、食事でタンパク質をしっかり補うことが大切です。
なかでも、低脂質・高タンパクな鶏のむね肉やもも肉などがおすすめです。
皮は脂質が多いので、できるだけ取り除いたほうがいいのですが、
それだとなんとも味気ないもの。
その物足りなさを補う工夫をご紹介しましょう。
例えば、エゴマ油などの体に良いとされている油を足してコクを出すのも方法です。
えっ、油って同じ脂質なのに大丈夫なの?
なるほどのご指摘ですが、心配ご無用。
一口に脂質と言ってもさまざまな種類があります。
そして、体に良い油もあるんです。
体に良いとされているのがオメガ3脂肪酸です。
エゴマ油もこれに分類されます。
青魚などに含まれているDHAやEPAなどの脂もオメガ3脂肪酸。
中性脂肪を下げる働きがあります。(略)
■気象病の原因、自律神経を酷使させるNG習慣
季節の変わり目は、気圧や気温の変化に応じて体内の熱を逃がして、
体温を調節する自律神経への負担が大きくなるため、体調を崩しがちです。
最近では、気圧や気温の変化が引き起こす不調を総じて「気象病」などと呼んでいるようです。
自律神経は、体温調節のほかにも心臓の拍動、ホルモン分泌、免疫機能、内臓など多くの機能をコントロールしているため、
自律神経が酷使されると体のさまざまな箇所に支障をきたします。
疲れやすくなったり、食欲がなくなったり、眠りづらくなったり、動悸がするようになったり……。
こうした季節の不調に対処するためには、できるだけ自律神経に負担をかけないような生活習慣がポイントになります。
やめてほしいことの1つめは、暴飲暴食です。
自律神経は内臓の働きのコントロールもしています。
食べ物が断続的に入ってきたり、一度に食べる量が多かったりすると、
内臓を動かすために、常に自律神経が働かざるを得なくなってしまうのです。
体温調節に頑張って働いている自律神経に、さらに負担をかけてしまうことになります。
食事は、毎日、大体決まった時間帯に食べ、量は腹八分目が理想的です。
自律神経をいたわるには、この決まった時間帯というのがポイントになります。
起床や入眠の時間帯も、なるべく同じにして生活リズムを整えましょう。
そのためには、朝、起きたらカーテンを開けてしっかりと日光を浴び、
朝が来たことを脳に知らせ、体内時計をリセットしましょう。
曇りや雨の日も毎朝、必ず行うようにしてください。
■誰かに「話すだけ」でストレスは解消できる
2つめは、ストレスをためないことです。(略)
話すだけでずいぶんストレスが解消され、気分がすっきりするものです。
適切な話し相手が見つからないという場合は、運動しましょう。
ウォーキングは気分転換にもうってつけです。
戸外を歩けば、季節を感じ、花々の匂い、すれ違う人々の笑顔や挨拶といったコミュニケーションに心ほぐされるものです。
かく汗も心地よく、格好のストレス解消になります。
■最近の「酷暑」から身を守るための熱中症対策
熱中症は体に熱がこもってしまうことで、
立ちくらみ、めまい、頭痛、吐き気などの症状をもたらします。
熱中症にならないためには、体に熱がこもらないよう、
上手に外に逃がすことがなによりも重要になります。
1つは、きちんと汗をかくこと。
汗は、蒸発するときに体から熱を奪うことで体温を下げます。
気化熱ですね。
とてもいい働きをしてくれている汗ですが、額や体に汗が出てくると、
なんだか気持ち悪くてすぐに拭いてしまいがち。
でも、これでは気化熱をうまく利用できません。
皮膚の上が水分で濡れていてこそ、熱がうまく逃げていきますから、
気持ち悪いのを少し我慢して、しばらく放置しておいてから拭くぐらいが望ましいのです。
汗をかくためには、水分補給も忘れてはいけません。
のどの渇きを覚える前に、水分補給するのが目安です。(略)
橋本 将吉 :内科・総合診療医・・ 》
注)記事の原文に、あえて改行など多くした。