あれはどのくらい前になるのだろう。定かではないが数十年前のこの頃、桜が咲いていたからこの時期に間違いないのだが、吉井の伯父が逝った。
告別式の日、伯父の自宅は弔問客で溢れ、私は住職の読経を外で聞いていた。
読経が流れる間、私は、伯父や伯母や従兄弟達との楽しい日々を思い出していた。すると、そこへ一陣の風が吹いたかと思った瞬間、桜の花びらがヒラヒラと中空を舞った。
風に乗った花びらは、高く高く、まるで天にも昇るかのように美しい軌跡を残し流れた。私は、いつまでもそれを眺めていた。
桜の頃になると、私は、いつもその光景を思い出す。