のりぞうのほほんのんびりバンザイ

あわてない、あわてない。ひとやすみ、ひとやすみ。

黒いハンカチ/小沼丹

2006年10月08日 20時52分49秒 | 読書歴
■ストーリ
 A女学院のニシ・アズマ先生の許に集まるちょっとした謎の数々。
 彼女は鋭い観察眼と明晰な頭脳でそれを解き明かす。
 昭和三十二年四月から一年間、雑誌「新婦人」に
 「ある女教師の探偵記録」と銘打って連載された短編集。

■感想 ☆☆☆☆
 軽妙で洒脱、小粋な作品。
 1編1編は短くさらっと読めてしまう。
 また、ニシ・アズマは犯人やトリックを解き明かすことに
 興味はあっても、犯罪が起きた理由や犯人の心理には
 興味がないらしく、そのあたりの説明は実にあっさりとしている。

 それはおそらく「哀しい過去」を持っている
 ニシ・アズマだからこその探偵哲学。
 「どうやって」を推理することはできても
 「どうして」なんて、人の気持ちを
 本当に分かることはできないから。
 分かることができないのに、分かった風に説明はしない。
 分かってあげることができないのに
 無理矢理に聞きだすことはしない。

 ワイドショーとは正反対に位置する
 そんな品のよさが随所にちりばめられている作品たち。
 だからこそ、「書き込み不足」という不満を感じさせない。

第三の時効/横山秀夫

2006年10月08日 20時15分37秒 | 日常生活
■ストーリ
 殺人事件の時効成立目前。現場の刑事にも知らされず、
 巧妙に仕組まれていた「第三の時効」とはいったい何か。
 刑事たちの生々しい葛藤と、逮捕への執念を鋭くえぐる
 表題作ほか、全六篇の連作短篇集。F県警強行犯シリーズ第一弾。

■感想 ☆☆☆*
 連作短編集だが、シリーズすべてが同じ主人公ではない。
 県警強行班第1班から第3班まで、そしてそのすべての班を
 統括する課長まで、舞台や中心人物を変えていく。
 ある作品では脇役だった人が2編目では中心に据えられる。
 そういった描き方をすることによって、人物に深みがでてくる。
 そのため、苦手な短編集にも関わらず、最後まで面白く
 読むことができた。

 作品の中心にいるのは主に4人。
 第1班班長でまったく笑わず、犯罪を憎み続ける朽木。
 第2班班長で公安上がりの冷酷な男、楠木。
 第3班班長村瀬は経験が培った職人芸的な勘で事件を
 解決に導く。
 そして、彼らの上司で優秀すぎる部下を持ったことを憂う田畑。

 それぞれが異なる考え方、異なるスタンスで事件にあたり
 解決までの道のりに闘志と競争心をもやす。
 繰り広げられるのはどこまでも「男たち」の世界。
 それがとにかくかっこいい。

 改めて横山さんの文章のかっこよさに痺れた作品だった。