■ストーリ
一人の男がいる。男には妻と愛人がいる。
男から離れていこうとしている妻。
男からの電話をひたすら待っている愛人。
ある日、男は不治の病におかされ、死期を宣告される。
その瞬間、ありふれた三角関係が、奇妙に揺らぎはじめる。
男が最後に愛したのはどちらだったのか。あるいは女たちが
真実愛したのは誰だったのか。
■感想 ☆☆☆*
やられた。見事にやられた。
彼女の世界にやられた。
元来、小説やドラマ、映画の世界にストレートに
ダメージを受ける傾向がある。ハッピーエンドのドラマを
見終わった翌日は、その結末を思い出してはほくそえんだり
反対に見事なまでに救いのないドラマを見てしまったら
その後数日はどんよりと落ち込んでいたり。
そういう傾向があるからこそ、井上荒野さんの絡みつくような
文体と、迷ってばかりで決断できないでいる登場人物たちの
心の迷路に一緒にはまりこんでしまった。
どの登場人物にも共感はできない。苛々させられる。
けれど、共感してしまう。彼女たちの弱さ、ずるさ、甘えに。
わかってしまう自分に女の性を感じてしまう。
普段、拒否している自分の中の「オンナ」の部分を突きつけられる。
男性はずるい。
どの女性が自分を甘えさせてくれるか、きちん見極める。
そして、甘えさせてくれることを確信しながら甘えてくる。
女性はこわい。
甘えてきた男性をきちんと甘えさせてあげる。
たとえ、心に闇を抱えていても。
その闇から目をそらすとができる。
そして、その闇から逃れるために、すきでもない男性に
甘えることができる。
そういうずるさも女性は持っているのだと思う。
「もう切るわ」
このタイトルを私は女性の言葉だと思っていた。
男性に最終通告を出している女性の言葉。
しかし、実際は男性の言葉だった。
それも別れの言葉ではなく、自分自身についての言葉。
軽やかで、浅はかで、弱さに満ちた言葉。
結局、この作品は男女の愛の物語ではなく
自分自身の心の本当の気持ちをつかめないでいる
登場人物たちの内面逡巡のストーリーなのだと思う。
お互いを見詰め合うのではなく、あくまでも自分自身を
見つめなおし、自分へ問いかけ続ける話なのだ。
一人の男がいる。男には妻と愛人がいる。
男から離れていこうとしている妻。
男からの電話をひたすら待っている愛人。
ある日、男は不治の病におかされ、死期を宣告される。
その瞬間、ありふれた三角関係が、奇妙に揺らぎはじめる。
男が最後に愛したのはどちらだったのか。あるいは女たちが
真実愛したのは誰だったのか。
■感想 ☆☆☆*
やられた。見事にやられた。
彼女の世界にやられた。
元来、小説やドラマ、映画の世界にストレートに
ダメージを受ける傾向がある。ハッピーエンドのドラマを
見終わった翌日は、その結末を思い出してはほくそえんだり
反対に見事なまでに救いのないドラマを見てしまったら
その後数日はどんよりと落ち込んでいたり。
そういう傾向があるからこそ、井上荒野さんの絡みつくような
文体と、迷ってばかりで決断できないでいる登場人物たちの
心の迷路に一緒にはまりこんでしまった。
どの登場人物にも共感はできない。苛々させられる。
けれど、共感してしまう。彼女たちの弱さ、ずるさ、甘えに。
わかってしまう自分に女の性を感じてしまう。
普段、拒否している自分の中の「オンナ」の部分を突きつけられる。
男性はずるい。
どの女性が自分を甘えさせてくれるか、きちん見極める。
そして、甘えさせてくれることを確信しながら甘えてくる。
女性はこわい。
甘えてきた男性をきちんと甘えさせてあげる。
たとえ、心に闇を抱えていても。
その闇から目をそらすとができる。
そして、その闇から逃れるために、すきでもない男性に
甘えることができる。
そういうずるさも女性は持っているのだと思う。
「もう切るわ」
このタイトルを私は女性の言葉だと思っていた。
男性に最終通告を出している女性の言葉。
しかし、実際は男性の言葉だった。
それも別れの言葉ではなく、自分自身についての言葉。
軽やかで、浅はかで、弱さに満ちた言葉。
結局、この作品は男女の愛の物語ではなく
自分自身の心の本当の気持ちをつかめないでいる
登場人物たちの内面逡巡のストーリーなのだと思う。
お互いを見詰め合うのではなく、あくまでも自分自身を
見つめなおし、自分へ問いかけ続ける話なのだ。