■内容
一枚のポスターや数秒のCMの中に時代を呼吸する女たち。
戦後五十余年のなかから、時代の画期を象徴した広告表現を
精選し、「ヒロイン」が示す「新しさ」とは何かを読み解いて
現代社会の輪郭を浮き彫りにしていく。最前線で批評を続ける
著者による、新鮮な広告史であり、広告を通して見た
「もうひとつの女性史」である。
■感想 ☆☆☆☆☆
昔から「女性」について書いた本が好きだった。
だから図書館にたくさん並んでいた伝記シリーズも女性を
先に読破し、その後に男性を数名ピックアップして読んでいた。
「女性」ががんばっている姿、悩んでいる姿に共感し
彼女たちが時代に爪あとを残している様子に元気をもらった。
その傾向は今も続いていて、フィクションであれば、どちらが
主人公でも特に構わないくせに、ノンフィクションになると
途端に「女性」をテーマとしたものを選び取っている。
この作品では女性の「実際のがんばり」を追っているわけでは
ない。あくまでもマスコミによって、スポンサーによって
作られた女性像の数々だ。CMは虚構の世界なのだ。
ホンモノではない。けれども、そこに映し出されている
女性像は、やはりどこか現実を反映している。
その時代の女性をリアルに描いている。
その変遷がとても面白かった。
戦前から戦後にかけて、女性の地位も役割も飛躍的に
変化し続けた。彼女たちは会社で、家庭で、恋人の前で
模索し続け、あがき続け、自分たちが心地よい場所を作り出そうと
必死に自分の周辺の環境を整備し続けた。その延長線上に
私たちは存在している。先輩方の恩恵をこうむり、そして
次世代の女性たちに更に快適な環境を受け渡すべく
今の時代を必死に生きている私たち。
おそらく10年後、20年後。
またこういった本は生まれる。客観的に2000年代の日本を
この時代の女性像を評した作品が。その作品に描かれる
私たちはどんな「女性」なのだろう。
本書に出てくる女性たちのように凛と前を向いているだろうか。
自分たちの環境を改善しようと必死にあがいているだろうか。
既成概念から脱出しようと、冒険しているのだろうか。
時代と共に女性たちも変わっていく。
その変化がよいものなのか、悪いものなのか
私たち女性にとって心地よい変化もあれば、今までより
重い責任を負うことになり、疲れを増大させるものもある。
そういったプラスマイナス面が客観的に論じられている
本作品を楽しく読み進めることができた。