3.好き好き大好き超愛してる/舞城王太郎
■ストーリ
愛は祈りだ。僕は祈る。
小説家である主人公と、主人公の亡くなった恋人柿緒との恋愛小説。
柿緒I、柿緒II、柿緒IIIで小節に分かれており、その小節の間に
全く別の話になるSF的な恋愛小説を挟むような形式になっている。
柿緒の小説の間にある一見関係なさそうなSF的な恋愛小説は、
小説家である主人公が柿緒の死に影響をうけて書いたもの。
■感想 ☆☆☆☆*
完全に食わず嫌いだった作家、舞城王太郎さん。
私の中では、西尾維新さんや清涼院流水さんの作品と
同じカテゴリに入っていて、「食わず嫌い」というよりは、
「気になってはいるけれど、パワーがありすぎて近寄るのに
勇気がいる」作家さんだった。その「食わず嫌い」感は、
脱力感さえも感じさせるこのタイトルによって、さらに強くなった。
しかし、この強烈なタイトルに却って目が離せなくなり、
「とうとう」(という気持ちに勝手になりつつ)手に取った。
癖のある文体は、慣れるまで違和感を覚え、少々戸惑いながら
他の作家さんの本よりも時間をかけて読み進めた。
パワーと勢いがありすぎて、文章に引きずられてしまう。
そのパワーに委縮してしまう。恐れを感じてしまう。
最初の印象どおりの作品なのかと思いながら読み進めた序盤。
章が変わり、「主人公が書いた小説」から「主人公の話」に話が移り、
物語は更に勢いを増し、いつしか私は物語の中に完全に
引きずり込まれていた。そのパワーに心底、圧倒された。
この作品は「世界の中心で愛を叫ぶ」のアンチテーゼとして
書かれたものらしい。けれど、そういったことは無関係に、
純粋に言葉の持つ力そのものに圧倒された。
言葉は言葉だけでは無力で、それに力を与えるのは結局のところ
人の想いなのだという当たり前のことに改めて思いを馳せた。
「祈り」に「人の想い」に「言葉」に力はあるのか。
それらは世界を変えることはできるのか。
そういった問いかけに舞城さんは力強く答える。
言葉に力はある、と。祈りは無駄じゃない、と。
特に祈りに関する文章には心打たれて何度も読み返した。
祈りは「そうなってほしい」と願っていることを口にすること。
自分が願っていることを確認する行為。
欲望を口にする行為でありながら、どこまでも無欲な行為で
だから人は祈りが聞き届けられなかったからといって
「祈って無駄だった。祈った時間返せ。」なんて思わない。
それが祈りだ。こういった論旨の文章に、心底納得した。
今まで漠然と続けてきた行動が言葉とすっきり結びつき、
爽快感を抱いた。
食わず嫌いなんてするもんじゃない。
気になる出会いは大切にしなければ。そう思った作品。
■ストーリ
愛は祈りだ。僕は祈る。
小説家である主人公と、主人公の亡くなった恋人柿緒との恋愛小説。
柿緒I、柿緒II、柿緒IIIで小節に分かれており、その小節の間に
全く別の話になるSF的な恋愛小説を挟むような形式になっている。
柿緒の小説の間にある一見関係なさそうなSF的な恋愛小説は、
小説家である主人公が柿緒の死に影響をうけて書いたもの。
■感想 ☆☆☆☆*
完全に食わず嫌いだった作家、舞城王太郎さん。
私の中では、西尾維新さんや清涼院流水さんの作品と
同じカテゴリに入っていて、「食わず嫌い」というよりは、
「気になってはいるけれど、パワーがありすぎて近寄るのに
勇気がいる」作家さんだった。その「食わず嫌い」感は、
脱力感さえも感じさせるこのタイトルによって、さらに強くなった。
しかし、この強烈なタイトルに却って目が離せなくなり、
「とうとう」(という気持ちに勝手になりつつ)手に取った。
癖のある文体は、慣れるまで違和感を覚え、少々戸惑いながら
他の作家さんの本よりも時間をかけて読み進めた。
パワーと勢いがありすぎて、文章に引きずられてしまう。
そのパワーに委縮してしまう。恐れを感じてしまう。
最初の印象どおりの作品なのかと思いながら読み進めた序盤。
章が変わり、「主人公が書いた小説」から「主人公の話」に話が移り、
物語は更に勢いを増し、いつしか私は物語の中に完全に
引きずり込まれていた。そのパワーに心底、圧倒された。
この作品は「世界の中心で愛を叫ぶ」のアンチテーゼとして
書かれたものらしい。けれど、そういったことは無関係に、
純粋に言葉の持つ力そのものに圧倒された。
言葉は言葉だけでは無力で、それに力を与えるのは結局のところ
人の想いなのだという当たり前のことに改めて思いを馳せた。
「祈り」に「人の想い」に「言葉」に力はあるのか。
それらは世界を変えることはできるのか。
そういった問いかけに舞城さんは力強く答える。
言葉に力はある、と。祈りは無駄じゃない、と。
特に祈りに関する文章には心打たれて何度も読み返した。
祈りは「そうなってほしい」と願っていることを口にすること。
自分が願っていることを確認する行為。
欲望を口にする行為でありながら、どこまでも無欲な行為で
だから人は祈りが聞き届けられなかったからといって
「祈って無駄だった。祈った時間返せ。」なんて思わない。
それが祈りだ。こういった論旨の文章に、心底納得した。
今まで漠然と続けてきた行動が言葉とすっきり結びつき、
爽快感を抱いた。
食わず嫌いなんてするもんじゃない。
気になる出会いは大切にしなければ。そう思った作品。