Viedel/KukiHairDesign/ヴィーデル/クキヘアデザイン 四条烏丸 美容室

ヴィーデルは四条烏丸の美容室です。フランス仕込みの技術 ナチュラルで優しく ふんわりとしたヘアスタイル

いつか、どこからか、捻じ曲がってしまった二人

2012-09-21 07:04:09 | 映画
お世辞にも美しくない、惨めな想いを抱えた淋しい女たちが、決してイケメンではない、誠実で優しい料理人の自己をさらけ出す言動にうっとりし、ついつい自分の思いと言う夢を託す。
しかし影で糸を引くのは彼の妻。
始まりは店を全焼させ、精神ともに困窮した夫婦が再起を懸けた資金繰りであり、騙された実感もないまま、このだまされた男と自分が輝くことを願う彼女たちの背中を、ほんの少し押すだけの悪いはかりごと。
役者が上手いからか?円満で幸せな夫婦の話であるはずが、一気に奈落に落とされ、一気に地に落ちて始まったはずの滑り出しのはずなのに何故か娯楽性が豊に感じる。
結婚詐欺ゲームはこの映画にとっては、ただの導入にすぎない。
好いた惚れたの季節をとうに過ぎ、奈落へ落ちた二人の、非日常生活という戦いの場で同士となった妻と夫の間を隔てる、どす黒い河の混濁した流れが大きくうねり早まっていく。
うしろめたさを重ね、屈折した関係を維持する妻が依って立つ正義は何なのかと、正論を求める者には感情移入など程遠い。
ここでは悪いままを理解するべきだ。
追い込まれた女性の視点が中心ではあるけれど、「生活」への脅えを少しでも抱いたことがある者なら分かるかもしれない。
それでも生きていく覚悟を決めた人間の理不尽さを。
他人同士が暮らしを共にするとき、沈黙が不確かな絆をつなぎとめることがある。
夫の無理解が一線を超え、妻のプライドを踏みにじってからの展開には、この映画の凄みをまざまざと見せつけられた。
もはや内面のゆらぎどころではない。
感情の大波が押し寄せる。
松たか子は深い闇、暗黒の瞳を微動だにせず、冷たい情念を表現してみせる。
この監督の映画が似ているもの、それは人生感なのだろうか。
一筋縄ではいかず、可笑しくて悲しくて複雑で。
体験した者でないと計り知れない大きな喪失と、深い絶望を抱く者の心に「そっと寄り添おう」とする寄生虫のような生きてゆくための悪の塊。
極度にねじ曲がった心理サスペンスだ。