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エンテベ

2019-10-27 07:23:35 | 映画
1976年に起きた「エンテベ空港ハイジャック事件」の映画化。
イスラエル発パリ行きのエールフランス機がパレスチナ人とドイツ人からなるテログループにハイジャックされ、ウガンダのエンテベ空港に着陸。
イスラエル政府が特殊部隊を派遣して空港ターミナルを襲撃し、100人以上の人質を強引に救出。
世界を騒然とさせたこの事件は過去にも3度映像化されている。
イスラエル政府内の水面下での政治的駆け引きを描く。
テロリスト側である犯人グループの内面に踏み込む。
犯人グループは全員殺害されているので、彼らの心情を“正確に”描くことなど不可能。
監督と脚本家は、状況証拠や当時の世相から類推することで、あえて犯人たちの心理ドラマを探求することに決めた。
ドイツ人活動家が機内を制圧している時に、乗客のひとりがためらいながらも指摘する。「ブラウスのボタンが外れていますよ」と。
ほんの些細な描写だが、その瞬間、犯人と被害者、脅す側と脅される側の垣根が一瞬だけ消える。
テロもハイジャック行為も許されることではないが、確かにそこにいた人々の人生が、想いが、それぞれの立場を超えて邂逅する瞬間が確かにあるのである。
最初に“ハイクオリティ”と書いたが、本作は実にソリッドに、複雑怪奇な事件を107分にまとめ上げている。
その手腕だけでも賞賛に値するにもかかわらず、極端に評価の点数が低いとすれば、この映画にはある種の人たちにとって、感情的に承服しがたい、どうしても呑み込むことができないゴツゴツした何かがある。
つまりは掛け値なしの問題作であり、ぜひ、その問題の在処を探しに劇場に出かけて欲しい。