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子供の妄想

2020-02-12 12:59:43 | 映画
ナチスドイツ時代の戦争映画にしては、幕開けはカラフルでコミカル。
躍動するようにビートルズの「抱きしめたい」ドイツ語バージョンが流れる。
この冒険作は少年の誇大すぎる妄想をもとに展開される。
そしてその妄想を後押しするのが、妄想で出演するアドルフ・ヒトラー。
ただ誠実に描くのは、10歳男児の目を通して見た“戦争”という世界であり、戦時下に置かれた男児の“心”。
10歳くらいの男の子というのはたいてい女の子より未熟であり、無知で愚かで純粋で無垢。
経験の足りなさゆえ、妄想と思い込みの中に棲息するマジメな生き物。
ユーモアはほとんどが、そういう愛すべき男児のアホさ、けなげさ、滑稽さ、かわいさから来ている。
脳内アドルフがどこか間抜けなのも、少年の分身だから。
少年の描写は当然、戦争の非道さを浮かび上がらせる。
容赦ない現実の厳しさ、醜さに直面するが、それをもこの映画はコミカルに表現する。
影響を受けやすく、間違いやすく、それでも正しさを追い求めようとする人間の思い。
そして少年は気づき、成長し、失い、そして愛を知る。
彼を取り巻く大人たちの描き方も、胸を打つのと、何より10歳児のリアルを本能的に表現しきった演技が素晴らしい。
猫の目のように変わる小さな名優の表情1つ1つが、心を鷲掴みにする。
エンディングのデヴィッド・ボウイ「ヒーロー」のドイツ語バージョンも、母の遺志を受け継いだ、これからの少年の未来をも予感しているようだ。