ジュディ・ガーランドはショー、映画を代表するエンターテイナー。子役でスタートし、「オズの魔法使」のドロシーに抜擢され一躍スターに上り詰めた。
ハードなスケジュールをこなすために興奮剤や減量剤、アルコールまで大量投与された。
結果、神経を病んで自殺未遂、入退院を繰り返し、結婚を五回、カムバックを六回経験している。
栄光と悲惨に彩られた伝説的な生涯は、これまでにも何度かドラマ化されている。
この映画は、そのような暴露的なモノではない。
ロンドンのクラブのライブに出演した際のエピソードを中心に、最後の華やぎの日々を控えめに描いている。
主演のレネー・ゼルウィガーは持ち歌を研究し、歌い込み、ジュディ独特の泣き笑いを見事に表現している。
この演技でアカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞した。
しかし本人のジュディは映画史に輝く傑作「スタア誕生」で本命と言われたもののオスカーを逃し、失意の果てに、ふたたび薬物依存症に陥ってしまった。
ジュディの生涯最高のパフォーマンスは「サマー・ストック」のラストで歌い踊る官能的なシーン。
そこに漂う妖しいまでのゲイ・テイスト。
ジュディの存在は現在、ゲイのアイコンと化している。
感銘を得るのは絶望の淵に追いやられたジュディと、疎外されていた性的マイノリティたちの熱い連帯が表明されているからでもある。