礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

筆答試問は学力を考査するものでない(文部省)

2017-02-17 04:08:11 | コラムと名言

◎筆答試問は学力を考査するものでない(文部省)

 昨日の続きである。『週報』第420号(一九四四年一一月八日発行)から、「昭和二十年度 高等・専門学校の入学者選抜」を紹介してみよう。

 昭和二十年度 高等・専門学校の入学者選抜
 
 決戦下、文部省では、受験のための移動をできる限り制限すると共に、勤労の長短によつて成績が左右されたり、準備準備行為を誘発するやうな選抜方式を避け、且つ学校側、志願者側の選抜に要する手数をもなるベく省略するといふ方針の下に選抜実施要項を決定し、実施することになつた。その要点は次の通りである。

     出願期間  第一次銓衡結果発表  第二次銓衡施行  合格者発表

第一期 自十二月十五日   一月十一日   自一月二十三日  一月三十一日
    至十二月二十四日          至一月二十六日  

第二期 自一月十日     二月九日    自二月二十一日  三月一日
    至一月二十日            至二月二十四日

第三期 自二月八日     三月十一日   自三月二十三日  三月三十一日
    至二月二十日            至三月二十六日

各期施行学校種別

      決定セルモノ               各学校毎ニ期ヲ定ムルモノ

第一期 官公私立高等学校、高等師範学校、         官公私立大学予科
    女子高等師範学校                 公私立専門学校

第二期 官立専門学校、附設実業教員養成所、師範学校、   官公私立大学予科
    青年師範学校                   公私立専門学校

第三期 臨時教員養成所 公私立専門学校          公私立専門学校

各学校毎ニ施行期ヲ定ムル学校ニ付テハ決定後施行期及ビ校名ヲ一括公示スル予定

一、選抜の時期を左の通りとし、官公私立を通じ高等・専門学校の選抜実施期を三期に配分する。
二、選抜の方法を第一次及び第二次に分ち、第一次においては出身中等学校長の提出する生徒の学業、修練、さらに勤労成績等を記入した調査書を基礎とする書類審査を行ひ、中等学校からの従来の入学者の実績等を参考資料として、入学すべきものの約二倍(学校の事情により一倍半乃至二倍半)を選抜する。従つて第一次においては志願者は受験のために移動するを要しない。次ぎに第一次選抜者を受験場(本校一箇所を原則とす)に集めて、身体検査、口頭試問、筆答試問による第二次の選拔を行ひ、合格者を決定する。
三、第二次における筆答試問は、要項決定の根本方針に従ひ、学科に亘らない試問であり、従つて学力を考査する試問ではない。高等・専門教育を受くる素質、能力ありや否やを察知するのが眼目であるから、勤労動員のため授業を欠いたことが何等の影響をも及ぼさない試問が行はれる。
四、出顔は出身中学校を単位とし、中等学校長は志願学校別に自校出身志願者の所要書類を取纏めて提出する。
五、志願者は輸送状況等を十分に考へて、なるべく最寄の学校に志願することが必要であるが、さらに必ず留意すべきことは、(一)同一期間中に選抜を行ふ学校については一校に限り出願できることと (二)施行期を異にする二校または三校を志願することは出来ても、一旦合格が決定した場合には、他校の第二次選抜試験に受験できないことである。
六、外地または外国に在住する者で内地の高等・専門学校に入学を志願する者の選抜は、渡航その他の困難が予想されるから、別途の方法で実施する。 (文部省)

 いかにも、「敗戦直前」を感じさせる選抜要綱である。「勤労動員のため授業を欠いたことが何等の影響をも及ぼさない試問が行はれる」とあるが、その分、「調査書」や「身体検査」が重視されることになったと思われる。
 また、「一旦合格が決定した場合には、他校の第二次選抜試験に受験できない」とあるので、いわゆる「優秀」な人材が、第一期校、第二期校、第三期校の順に、振り分けられていったことは間違いない。もちろん、当時の文部省は、そのあたりを計算して、こうした選抜要綱を作成しているのである。

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