アフガン・イラク・北朝鮮と日本

黙って野垂れ死ぬな やられたらやり返せ 万国のプレカリアート団結せよ!

当ブログへようこそ

 アフガン・イラク戦争も金正日もNO!!搾取・抑圧のない世界を目指して、万国のプレカリアート団結せよ!

 これが、当ブログの主張です。
 詳しくは→こちらを参照の事。
 「プレカリアート」という言葉の意味は→こちらを参照。
 コメント・TB(トラックバック)については→こちらを参照。
 読んだ記事の中で気に入ったものがあれば→こちらをクリック。

チリ鉱山作業員救出報道が決して伝えなかった真実

2010年10月21日 23時53分20秒 | 監視カメラよりも自由な社会に
・ウィキペディア「コピアポ鉱山落盤事故」の項目より
チリは鉱業国として長い歴史を誇り、事故当時は銅生産世界シェア35%程と、リチウム生産量世界一を誇っている。しかし、一方で採掘現場の安全確保は立ち遅れ、2000年から年平均で34人が採掘中の事故により亡くなっている。
1995年に鉱山労働組合は、サンホセ鉱山の閉鎖を要求し、話は裁判所にも持ちだされた。2005~2007年にかけて労働監督局は閉山を決定したものの、なんらの改善措置も行政監督もなく、2009年操業の再開が認められた。今回の事故の原因となった強度の欠如も、事故が起きる前の段階で予測が可能だった物を、早期に鉱山閉鎖をしなかった理由について国内外問わず論争を引き起こしている。全国地質・鉱山事業局(Sernageomin)の果たした役割が疑われ、Sernageominの17人の監督官による責任のなすりあいが行われる一方で、鉱山経営者との間に利益提供があったことが疑われている。アタカマ州には2000から3000の鉱山があるが、担当する監督官はわずか2名であった。
 
・8月26日付「しんぶん赤旗」
 チリ鉱山落盤/07年に死亡事故 避難階段設置せず/会社に批判 国が指導へ
 現地からの報道によると、事故が起きた鉱山は2007年にも岩盤崩壊で労働者が死亡。鉱山はいったん閉鎖され、政府は、事故発生時に労働者が地下から地上へ避難できる階段を設置するよう会社に指導していました。しかし会社は無視し、08年から掘削を再開しました。
 チリでは1973年から90年まで続いた軍事政権が、新自由主義の経済政策を取り入れ、労働安全基準の切り下げや非正規雇用の拡大などの規制緩和策を進めました。2006年発足のバチェレ前政権は新自由主義の弊害を是正する政策を取ってきましたが、今でも傷跡は多く残っています。
 同国最大の労働組合、中央統一労組(CUT)は、今回の事故は「利益を求める貪欲(どんよく)さが引き起こした」と述べ、背景に「会社による事故防止策の欠如」「政府の監督力の弱さ」があったと批判。労働条件がとりわけ劣悪な小規模鉱山では、会社が労災をもみ消す例もあることなどを挙げ、企業に対する政府指導の強化を求めました。
(以上、新聞等より引用)

 以上2つの記事を挙げました。いずれも、この夏に大規模な落盤事故が起こった、南米チリ・コピアポ近郊の、サンホセ鉱山の実態を報道したものです。この記事からは、今回の事故が、行政当局と結託した鉱山資本による安全軽視によって引き起こされたものである事がよく分かります。
 それだけではありません。この鉱山では、救出された作業員がマスコミの脚光を浴びる一方で、その他の230名の労働者への賃金未払いで、3度もストが起こっているのです。
 しかし、日本の殆どのマスコミは、この肝心な事は殆ど伝えずに、作業員33名救出作戦の垂れ流しや、お涙頂戴の「よく耐えた、頑張った」美談や、果ては「作業員の妻と愛人が救出現場で大喧嘩」みたいな報道ばかりに終始していましたね。今回の件でも、如何に日本のマスコミが腐っているか、ジャーナリズム精神のカケラもないイエローペーパーと化してしまっているか、官房機密費(マスコミ対策費)の毒が回っているかを、改めて思い知らされました。
 スポンサー大企業の機嫌を損ねるような、「派遣切り」や今回の事故の様な報道は、出来れば避けたいのでしょう。でも、全く報道しない訳にもいかないので、通り一遍の番記事や上っ面だけの美談報道でお茶を濁してきたのです。

 「911」と言えば、米国や日本では、2001年9月11日に米国で起こった同時多発テロの事を指します。しかし、中南米では全く様相が異なります。彼の地では、「911」と言えば、1973年9月11日に南米チリで起こった、米国CIAと右翼軍部によるアジェンデ政権打倒クーデターの事を指します。当時、選挙により成立したアジェンデ左翼政権に対して、鉱山国有化や農地改革などの政策を快く思わない米国が、ピノチェトを初めとした右翼軍人に、クーデターをそそのかしたのです。
 その結果成立したピノチェト軍事独裁政権の下で、その後に米国レーガン政権や英国サッチャー政権、日本の中曽根内閣や小泉内閣の下でも強行されたのと同様の、公共部門の民営化や、福祉・教育・医療・国内農業の切捨て、賃下げ・労働運動弾圧などの新自由主義政策が推し進められました。それが、上記のサンホセ鉱山での安全軽視を招いたのです。
 
 ※写真は、当時のクーデターによって虐殺された歌手ビクトル・ハラのポスター。

 中南米諸国では、何故、「911」が同時多発テロではなく、アジェンデ打倒クーデターの事を指すのか。何故、当時の膿を一気に吐き出すかのような勢いで、今や続々と各国に左派政権が誕生しているのか。それは偏に、当時荒れ狂った弱者切捨ての新自由主義経済政策が、余りにも酷かったからに他なりません。
 しかし、日本の全国紙・メディアの大半は、そういう事はおくびにも出さず、チリでの作業員救出劇の一挙手一投足ばかりを垂れ流していました。そして、南米チリの鉱山と同じく、会社の金儲け優先・安全軽視・ノルマ至上主義によって引き起こされ、現にこの日本で起こった、かつての北海道・夕張新鉱ガス爆発事故についても、その事実に触れたマスコミはごく僅かでした。

・2004年6月2日付「朝日新聞と北海道の45年(04年)」
 (5)北炭夕張新鉱事故―1981年10月16日 59人いるまま坑内注水
 事故直後、坑内に59人を残し、会社は延焼を防ぐため、注水を決断する。当時の林千明社長は「お命をちょうだいしたいということです」と家族に頭を下げた。
 ―今だって許してねえよ。遺体は上がってなかったし、お父さんの無線が応答しているって聞いてたから。生きてるもんを殺す気かって。
 会場となった清水沢体育会館は怒声で揺れた。須摩さんは直後から、折々の気持ちを便箋(びんせん)につづった。3枚目に《私は気も狂わんばかりに友達にすがって泣いた》と書いた。
 注水同意書への押印をもらうため、会社の2人が自宅に来た。
 ―「生きて返すんなら押してやる」って言ったらしいんだ。頭がぼーっとして自分では覚えてねえんだわ。義兄が代わって押した。近所では「殺す気か」って社員につかみかかった人もいた。
 23日午後1時半、注水を告げるサイレンが鳴った。あちこちでヤマ人が手を合わせた。寛さんの遺体が上がったのは翌82年3月23日。その5日後、163日ぶりに全遺体が収容される。
 ―繰込場のお父さんのロッカーを開けた瞬間、泣き崩れた。服や靴がきちんと整理されてるんだわ。きちょうめんな人だったから。

北炭夕張新鉱事故 
 81年10月16日午後0時41分、海面下809メートルの掘進作業現場付近で約60万立方メートルのメタンガスが突出、83人が死亡、39人が重軽傷を負った。その後の坑内火災で救護隊10人も死亡する大惨事に。
 石油危機を背景に「年産2千万トン体制の維持」を掲げる国の新石炭政策が打ち出された75年に営業出炭を開始。「国内最後の最有望炭鉱」と期待されるなか、出炭量が目標を下回ったことで、安全対策より出炭が優先された。事故が引きがねとなり、翌年閉山した。
(以上、新聞等より引用)
 
 ※写真は、北炭夕張新鉱の通洞口跡。 

 斯く言う私も、これらの事実について全て知ったのは、つい最近でした。日々仕事ばかりに追いまくられ、食う事にばかり汲々としていると、知らず知らずのうちに、こうなってしまうのです。「食う事にばかり汲々としている」のは、決して私たちの所為ではなく、政府・財界による弱者切捨て政策によるものなのですが。
 しかし、今さらそれを恨んでも始まりません。肝心なのは、一刻も早く、一人でも多く、この事実を知る事で、二度と夕張新鉱やチリ鉱山の被災者を生まないような世の中を作る事です。これは、決して数十年前の夕張や地球の裏側のチリだけに止まる話ではありません。方や、軍事政権とつるんで暴利を貪ってきたチリの鉱山主や、会社存続の為に生存者を見殺しにした夕張新鉱の経営者。もう方や、何でも上の言いなりで、労働者の安全や生存権は二の次のウチの会社。両者の間に、果たしてどれだけの違いがあると言うのでしょうか?

(追記:参考記事)
・サンホセ鉱山の労働者は英雄か犠牲者か(レイバーネット日本)
 http://www.labornetjp.org/news/2010/1287449592749staff01/view
・チリの亡霊は救われてはいない(マスコミに載らない海外記事)
 http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2010/10/post-05b5.html
・ミッシング ―もう1つの9.11 チリの軍事クーデターとアメリカ―(人類猫化計画)
 http://tekcat.blog21.fc2.com/blog-date-20060805.html
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする