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幾ら民営化しても企業体質が変わらなければ同じ

2013年02月07日 00時38分03秒 | 都構想・IRカジノ反対!
 

 先日の通勤時間帯に、大阪市営地下鉄の駅で駅員が民営化宣伝のチラシを撒いていました。上記がそのチラシの表紙と1ページ目の紙面ですが、はっきり言って読む気になりませんでした。だって、こんなモノクロの社内会議資料みたいなものを、そのままクリアファイルに入れて、何の説明もなく「これどうぞ」といきなり渡されても、誰が読もうと言う気になりますか。こちらは社外の人間です。その社外の人間に本気で訴える気があるなら、こんな無味乾燥な資料をろくに説明もせずいきなり配ったりはしません。もっと多色刷りの分かりやすいパンフにして宣伝もしながら配ります。そんな事ぐらい、選挙の時に各陣営が街頭で配るビラを見ても分かるでしょう。その一事を以ても、大阪市営地下鉄の民営化が、如何に民意とは無関係に上から強引に押し付けられた「お仕着せの議論」であるかがよく分かります。

 その民営化宣伝のビラですが、大阪市交通局のHPからもダウンロードできるので、詳しく知りたければそちらを参照して下さい。
 私もざっと目を通しましたが、書いている事も配り方にたがわず支離滅裂でした。大阪市の地下鉄もバスも、運賃が高くサービスが悪いのは全て公営企業で「お役所仕事」だから。民営化して職員にコスト意識を持たせれば、運賃も値下げできるしサービスももっと良くなる、と。しかし、果たして本当にそうでしょうか?

 私が利用するのはもっぱら地下鉄なので、ここでは主に地下鉄の場合で考えて見ます。
 確かに地下鉄の運賃は高いです。初乗り1区間200円もしますから。でも、それは別に地下鉄が公営だからではなく、多額の建設費がいるからじゃないでしょうか。特に新線建設の場合は、既設路線を避ける為により深く掘り進まなければならなくなる。大手私鉄の運賃はなるほど地下鉄よりも安いですが、JRはもっと安い。それはJRが私鉄以上に長大なネットワークを有し、スケールメリットが活かせるからであって(だから旧国鉄時代から運賃は安かった)、「公営・民営の別」は余り関係ない。
 地下鉄と私鉄の相互乗り入れが進まないのも、私鉄王国の関西は私鉄の方が先に発達して、後発の地下鉄は寧ろその私鉄ターミナル同士を結ぶ形で、大阪市内に路線網が形成されてきたからではないでしょうか。それを今から東京並みに相互乗り入れを図るとなると、集電方式(一部を除き第三軌条を採用しており私鉄の架線式とは異なる)や鉄軌道の幅も全部変えなければならなくなり(標準軌の阪急・近鉄と狭軌の南海の一体どちらに合せるのかという点も含め)、そのコストは膨大なものになります。
 終電の時間がJR・私鉄に比べ早いのも、ドーナツ化現象の進んだ大阪市内を走る地下鉄に乗る人が深夜にはそんなにいないという、ごく単純な理由によるものでは。私鉄も郊外に向かう下りに比べ、中心部に向かう上りの終発時間は早い。それと同じ理由では。だから、地下鉄の終発時間をより遅くしても、郊外に向かう私鉄の終発時間を更に遅くしなければならなくなる。これでは深夜残業の蔓延に加担する(自らの首を絞める)事にもなりかねないw。

 地下鉄の運転手は高給を食んでいると言いますが、それは私鉄ほどには非正規雇用への置き換えが進んでいないという事もあると思います。関西の各私鉄では駅職員や車掌が時給800円、900円の非正規雇用によって担われています。コンビニ・バイト並みの低賃金で、安全運行を支える責任や事故時のリスクだけを労働者に負わせる方が、逆に「虫が良すぎる」のではないでしょうか。そんな低待遇と比較して地下鉄職員の「高給」ばかり言い募るのでは、「為にする議論」だと言われても仕方ないでしょう。確かに経営努力は必要です。その為には一定の賃金カットもやむを得ないでしょう。でも、その際に比較すべきなのは、あくまでも「乗客の安全や労働者の生計が維持できるかどうか」であって、それ抜きに「ただ安けりゃあ良い」という話にはなりません。

 そもそも、今の大阪の地下鉄・市バスは、急いで民営化しなければいけないほど赤字なのでしょうか。確かにバスや一部の地下鉄路線は赤字ですが、全体では大幅な黒字超過です。しかも、この数年の経営努力で財政収支は大幅に改善されてきています。それは他の大都市の地下鉄と比較しても抜きんでています。そんな状態の中で、何故今ことさら民営化を急がなければならないのでしょうか。

(参考資料)
・大阪市営地下鉄の路線別経常収支
 http://www.city.osaka.lg.jp/hodoshiryo/cmsfiles/contents/0000093/93476/100909_kousoku-chuuryou.pdf
・林横浜市長が市営交通の民営化否定「今後も黒字続けられる」/神奈川(カナロコ)
 http://news.kanaloco.jp/localnews/article/1202290023/
・都市公共交通の在り方~民営化の可能性について~
 http://www.ipp.hit-u.ac.jp/lectures/PPS1_2011/files/presentation20110714.pdf

 民営化推進論者はそれに対して、「黒字は市財政からの補助金によるもの」「少子高齢化で利用客が頭打ち・減少気味で、今のうちに民営化で低コスト体質に転換しておかなければならない」と言います。
 しかし、そもそも補助金は何の為にあるのでしょうか。赤字でも必要な路線を維持する事で地域を活性化させ、市の税収も増やして市民サービスに再び還元する為でしょう。採算性だけで議論するなら、千日前線も四つ橋線もニュートラムも全て廃止しなければならなくなりますが、そんな事をすれば大変な事になります。
 少子高齢化対策にしても、一民間企業だけで解決できる問題ではありません。その背景には格差拡大による生活困窮があり、子どもを育てたり老人を介護する余裕が社会から失われつつあるからこそ、この問題も起こってきたのです。その根本に手を付けずに、一企業の財務状況だけに問題を矮小化するのでは、「会社エゴ」の謗りは免れません。

 そもそも、運賃値下げやサービス向上は、民営でなければ出来ない訳ではありません。幾ら民営化しても、御堂筋線やそれと並行する堺筋線・四つ橋線も同じ会社のままで、他に競合する私鉄路線もなければ、「お役所」が東電やJRのような「独占企業」にとって代わるだけです。東電やJRも決して褒められた会社でない事は、福島原発事故や福知山線事故からも明らかです。では地下鉄もJRの様に分割しますか。そんな事をすれば、残るのは御堂筋線だけか谷町線・中央線と合わせた黒字三路線だけになってしまいます。
 「お役所仕事」や「大企業病」の弊害は、決してこれらだけに固有のものではありません。中小企業にも存在します。それが証拠に、中小企業のうちの会社も、「事なかれ主義」や「臭いモノに蓋」体質では決して役所や東電・JRに引けを取りません。トップがいい加減であればどんな組織にも起こり得る弊害なのです。
 運賃値下げもサービス向上も、決して公営だから出来ないという物ではありません。「トップに本気でそれを実行する気があるかどうか」で決まります。寧ろ下手に民営化して行政・議会や市民の監視の目が行き届かなくなる方が、逆に放漫財政を招くでしょう。
コメント (1)
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