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アフガン・イラク・北朝鮮と日本

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死滅するアマゾン

2018年08月29日 17時23分21秒 | 職場人権レポートVol.3

先日、知人から赤旗記事のコピーを戴きました。この夏、同紙に掲載された「資本主義の病巣 君臨するアマゾン」全11回の連載記事です。ネットではその全てを見れないので、知人にコピーを頼んでいたのです。何故、この記事を入手しようと思ったのか?それは、アマゾンが通販大手の外資でありながら、その実態がウチの会社と余りにも酷似しているからです。

連載記事は神奈川県にあるアマゾン小田原物流センターの労働実態から始まります。関東・東海の数拠点を統合して出来た同センターは5階建てで、東京ドーム4個分を超す広さがあります。そこで起こっている事は次の3点に集約されます。

第1は休憩時間の削減。稼働当初は1時間の昼休みとは別に30分の中休みがありました。ところが、やがて昼休みは45分間、中休みも15分に短縮されます。たった15分の中休みでは、作業場から遠く離れた休憩室に行って戻ってくるだけで休憩時間の大半が失われてしまいます。これでは全然休憩できません。
第2は過酷な労働環境。エアコン経費節減の為に、構内の空調が余り効きません。蒸し風呂状態の中で、重い荷物を運んで構内をひっきりなしに行き来させられるものだがら、熱中症で倒れる労働者が続出します。
第3は低すぎる賃金。世界企業のアマゾンで、過酷な労働を強いられているのに、労働者の時給は神奈川県の最低賃金ギリギリの900円台。おまけに短期バイトの時給の方が長期バイトよりもはるかに高いのです。
この3点の問題点は、それぞれ単独で起こっている問題ではなく、互いに密接に結びついています。その背景にあるのは、アマゾンの非人間的な経営戦略です。

ネット掲示板「2ちゃんねる」(現5ちゃんねる)にはアマゾン小田原センターのスレッド(専用掲示板)があり、そこには次の様な書き込みが。「倉庫で人死んだらしいね」「夜勤の20代前半」「最近休憩も減らされて勤務きつかったからな」「会社の体質が『事件になるまではほったらかし』だからこうなる。熱中症対策もバタバタ倒れてから」「最後にピック(商品採集)してから20分後に発見された」「猛烈暑い。熱中症で1日に何人も倒れるのが普通です。一年通しても夏・夏・夏・春です」「まだ4月にも入ってないのに暑すぎ」「中2階みたいなところ36度まで上がるらしいぞ」

私がかつて働いていた冷蔵品の物流センターも、熱中症こそ無かったものの、短い休憩や過酷な勤務、低賃金という点ではアマゾンと同じでした。午前10時に最初(1便)の積み込みを終わらさなければならないので、7時の始業から10時まで、ひたすら商品の仕分けと搬送に追われていました。その後、10時半の午後作業開始までの30分間で昼飯を掻き込みます。朝10時台にもう昼飯ですよ。昼飯は会社が注文した仕出し弁当でしたが、まるで豚の餌みたいな弁当でした。

10時半から13時半までが2便の商品仕分けと搬送で、13時半から14時まで30分の休憩。当時は1時間の休憩を前後2回に分けて取っていました。その後、14時から3便の商品仕分けに入ります。その後半30分の休憩も、2便の作業が長引けば削られます。どんなに作業が遅れていても、14時から3便の商品が容赦なく納品されて来るのですから。たった時給890円前後の時給で、ここまで酷使されていたのです。もう10年近く前の事なので、詳しい勤務シフトは覚えていませんが、大体そんな感じでした。そこで、私が怒って個人加盟の労働組合に単独加入したのです。

現在勤務している冷蔵の物流センターも、状況は似たようなものです。確かに、低いながらも時給は900円以上になり、食堂でまともに飯が食え、休憩も1時間きっちり取れるようにはなりました。でも、朝7時に出勤しても事務所には誰もいない。下手すれば現場にも社員がいない時がある。人は大勢いても全部、配送部門のドライバーや夜勤者、他社の派遣社員ばかりです。そんな中で、誰か病気や怪我で倒れても、誰が対応できます?「労働者が熱中症で倒れてから20分後にようやく発見された」アマゾン小田原センターの労働実態は、我々にとっても決して他人事ではありません。

 

私の勤務先では、短期バイトの求人でも「涼しい物流センター」と謳っている程ですから、仕事場で熱中症で倒れる事はありません。でも、その代わりに夏場は外気温との差が30度位に広がります。こんな環境で働いていたら確実に風邪ひきます。摂氏0度近い環境で作業しなければならない畜産庫は、もっと悲惨です。外気温との差が40度近くにもなります。畜産庫のバイトは体が冷え切っているので、夏場でも防寒着を着たまま休憩します。これでは、いつ心臓病や脳卒中で倒れても、おかしくありません。

アマゾンの物流センターで働く労働者はピラミッド型の三層構造になっています。最も身分が高いのが日本法人アマゾンジャパンの社員ですが、この人達は現場にはほとんど出て来ません。代わって現場作業を指揮するのが一次請負業者の日本通運や、日通撤退の後を引き継いだ福岡市の人材派遣会社ワールドインテック。その下で実際に現場作業に携わっているのが、二次請負業者のファイズ(大阪市)、エヌエス・ジャパン(兵庫県尼崎市)、エイブル・スタッフ(神戸市)、ワールドスタッフィング(福岡市)等の派遣会社。その請負・派遣会社の中でも正社員と非正規社員の区別があります。

これでは江戸時代の士・農・工・商・エタ・と同じです。あるいは、山谷や釜ヶ崎の日雇い人夫や原発ジプシーと同じです。これらの業種も、何層もの下請け構造に分かれ、下に行く程、上の奴らに賃金をピンハネされた上、より危険な作業に従事させられる羽目になります。それで怪我しても「アマゾンの社員でないから責任持てない」で終わりです。最下層の労働者の時給は最賃ギリギリの900円台。ところが期間限定でかき集められた派遣社員の時給は2千円。何故、素人の時給が2千円なのに、ベテランのバイトは時給900円台なのか?

しかも、アマゾンでは、素人にもベテランにも過酷な作業ノルマが課されます。その日の商品の採集リストや収納場所が携帯端末に表示され、一品当たりの作業時間まで指示されます。集めた商品のバーコードをスキャンすれば次の商品集めです。配属初日の新人にもベテランの75%のノルマが課されます。未達成者はクビです。そんな中では、丁寧な荷扱いなぞ無理です。商品をポイポイ放り投げなければノルマはこなせません。

私が一時期ダブルワークで働いていたヤマト運輸の物流センターもそんな感じでした。ノルマこそ無かったものの、宅急便で出荷するアマゾンの通販商品が土石流みたいに次々と仕分けレーンに押し寄せて来ていました。研修で教わったOTN(音を立てない荷扱い)なぞやっていたら、直ぐに仕分けレーンが商品の山で埋まってしまいます。ここで働いていたベトナム人バイトは、まるで奴隷の様に扱われていました。

 

アマゾン小田原センターと同じ職場の三層構造は私の現勤務先にもあります。まず最上段にスーパーの社員・パートがいて、その下に一次請負業者のA社、その更に下に二次請負業者で私の勤務先のB社、という三層構造になっています。スーパーの社員・パートは食堂や休憩室で見かけるのみで、仕事場にはほとんど出て来ません。その下のA社が物流センターの予算執行権を握っており、備品の管理・発注も彼等が行なっています。B社はその下で構内作業や配送業務に携わり、スーパーからA社を通して作業手数料をもらうという関係になっています。B社にも社員とバイトがいます。私はそこのバイト(契約社員)です。

赤旗記事の内容と違うのは、その更に下に、B社系列や他社の派遣社員、他社の配送業者が控えている事です。派遣社員は構内作業の穴埋めという位置付けですが、一部のレギュラーメンバーはB社の契約社員と同等の作業を担っています。彼等が第4階層を形成しています。彼等には構内作業計画の策定権限や福利厚生(社会保険や交通費支給等)はありませんが、時給は彼等の方が高かったりします。その更に下に、第5階層とも言うべきベトナム人留学生バイトがいます。身分は第4階層と同じ派遣社員ですが、就業可能な業種や時間を制限され、言葉も通じない異国で働かされている彼等は、いわば最下層の労働者であると言えます。

以前、商品仕分け作業で使う看板(背中にラベル入れのポケットが付いた店名表示板)を、私が折角使い勝手の良い形に改良したのに、社員のノブ太(仮名)がまた元の形に戻してしまった事がありました。勝手に備品を改良してA社の機嫌を損ねる事を恐れたからですが、別にA社に迷惑かけた訳ではないのに、何故そこまで上の顔色を伺わなければならないのか疑問でした。今、その理由が分かりました。我が社にはその程度の権限すら無いのです。これでは業務改善も労働条件向上も図れる訳がありません。

アマゾンに搾取されているのは同社の正社員も同じです。アマゾンでは正社員も相対評価でランク分けされ、必ず一定割合の社員が退職勧奨に遭う様に仕向けられます。相対評価なので、どんなに頑張っても蹴落とされる様になっているのです。ダメ社員の烙印を押された社員には、PIP(業務改善計画)に沿った研修が課されます。しかし実際は、研修とは名ばかりの退職勧奨です。嫌がらせみたいな課題を与えられた社員が次々と退職に追い込まれて行きます。

アマゾンでは新卒採用はせず中途採用で社員を募集するのだそうです。中途採用で即戦力の人材を集める事で新卒社員に施す教育コストを省くのだとか。社員を駒としか見ず、人を育てるという発想がないので、ダメ社員をひたすらふるい落とそうとするのでしょう。その社員を採用しながら、まともに教育しなかった会社の責任を棚上げして。

じゃあ、私の職場はどうか?スーパーやA社の事は分からないので、ここでは私の勤めるB社について書きます。B社ではPIPの様なシステムはおそらく無いでしょう。在れば、こんなダラけた職場にはなっていません。もっとギスギスした職場になっています。生き馬の目を抜く様な熾烈な社内競争は無い代わりに、積極的な人材登用や社内教育も無い。端的に言えば放ったらかし。それで使えない社員は飼い殺しにして、窓際族として塩漬けに。但し、社員を駒としか見ない点はアマゾンと何ら変わらない。昼勤の社員の勤務時間は、朝8時から夜19時位までにも及びます。

しかも、1つの事業所に副所長が3人もいながら、その下には主任もチーフもおらず、2人の平社員で昼の現場を回さなければなりません。こんな勤務で自己研鑽なぞ図れる訳ありません。私なら絶対に文句言っています。何故、平社員2人だけで現場を回さなければならないのか?そのくせ何故、副所長が3人もいるのか?同じ5人で回すにしても、普通は現場に4名配置し、副所長は1人にするものです。所長もいるのだから。現場の平社員も平社員です。何故、それ位の事すら言えないのか?飼い殺しにされてしまっているからです。だから、職場の矛盾にも不感症になってしまっているのです。

アマゾンに搾取されているのは労働者だけではありません。ネット通販で店舗を持たず世界中で24時間営業できるアマゾンは、他社や他産業も席巻し、次々と自社の傘下に収めて来ました。アマゾンの買収を拒んだ米国のベビー用品企業クイッドシーに赤字覚悟で紙おむつ3割引の安売り攻勢を仕掛け、同社を強引に傘下に組込み、大手玩具メーカーのトイザラスも破産に追い込みました。

宅配業者にも圧力を掛け、ヤマト運輸に法外な値引きを押し付け、ヤマトの宅配ドライバーを過労運転に追い込んだ末に、ヤマトから値引きを拒否された事がニュースになりました。

書籍販売でも、アマゾンは再販価格を無視した不当な安売り競争を仕掛け、中小の出版社や書店を次々と廃業に追い込んでます。本の定価は出版社と取次(卸売業者)の話し合いで決まります。これが再販価格です。完全な市場価格にせず再販価格を維持する事で、中小出版社でも本が出せる様にしているのです。ところが、アマゾンの様な不当廉売を認めてしまうと、「表現・出版の自由も金次第」という事になってしまいます。

それだけではありません。アマゾンの本社は米国ワシントン州のシアトルにあります。ワシントン州には法人税が無く州税も安いからです。そして、ネット通販で店舗を持たないのを良い事に、物流センターも子会社の所有にして、法人税の支払いを逃れて来たのです。

アマゾンの電子書籍キンドルを製造している中国の工場では、派遣社員は月100時間以上もの残業を強いられ、連続14日間ぶっ通しで働かされ続けているそうです。これは中国の労働法にも違反した明白な人権侵害ですが、中国政府は外国資本と癒着し目をつむっています。表向き人権問題で中国を批判している米国も、資本家の儲けの為には共産党独裁の中国と裏で手を握っているのです。

アマゾン物流センターでの過酷な勤務は、既に国際問題になっています。英国の物流センターにバイトに紛れて潜入取材した記者は、動作を監視カメラで常時監視され、1時間に300個もの商品を仕分けしなければなりませんでした。過密労働で、足は棒の様になり腰もパンパンになります。携帯端末を使って商品の仕分け・補充をするのですが、端末の電源を入れた途端に、まるで自分が端末の指令で動くロボットの様になった様だと、くだんの記者は述懐していました。正に「チャップリンのモダンタイムス」「現代のアウシュビッツ強制収容所」です。

 

この記事を読んで、私は逆に確信しました。これは「君臨するアマゾン」ではなく「死滅するアマゾン」だと。アマゾンの物流センターでは、私物は一切持ち込み禁止です。労働者は出退勤のたびにゲートで金属探知機にかけられ、携帯電話なぞ所持しようものなら、データを抜き取られた上、一週間没収されます。労働者をはなからスパイ扱いして、奴隷のようにこき使う。そんな中では、創意工夫なぞ生まれる訳がありません。これなら、たとえ幾ら低賃金のダラケタ職場でも、我が社の方がはるかにマシです。

しかし、労働者も負けてはいません。そんな地獄のようなアマゾンの職場でも、労働者は続々と闘いに立ち上がりつつあります。ドイツやスペインの労働者は労働協約の締結を求めストライキに入りました。市民の中にも、労働者の闘いに呼応し、アマゾンの税逃れを追及する動きが広がっています。世界を股にかけるアマゾンは、労働者の闘いもまた国際規模に押し広げました。日本も決してその例外ではありません。我々は奴隷ではありません。

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