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右翼新党にたったひとつ期待する事

2010年04月17日 00時52分28秒 | 貧乏人搾取の上に胡坐をかくな
 今まで自民党にいた奴等が、今頃になって我先にと自民党を飛び出し、新党を立ち上げている。言わずと知れた、「みんなの党」や「立ち上がれ日本」、首長連合などの右翼保守系新党の事だ。
 それぞれ新党のホームページで各党の主張も読ませてもらった。但し首長連合については、まだ結党準備中との事なので、母体の「日本志民会議」の主張を参考にした。どの新党とも、主張している事は、これまで自民党が言ってきた事の焼き直しでしかない。消費税増税や自主憲法制定などがその典型で、いずれも自民党が本音ではやりたいと思っていた事で、国民の抵抗によってなかなか実施出来ないでいる、そういう政策ばかりだ。
 そこには、現実に国民が直面している生活苦や失業・貧困の打開策について、具体的に書かれたものは一つも無い。確かに一部には、それらの問題についても憂えているかの様な記述や、「スポット派遣規制」なども謳ってはいる。しかし、それらの処方箋として挙げられているのが、とっくに破綻済の「トリクルダウン」(大企業繁栄のお零れ頂戴)理論なのだから、お話にならない。実際には、利潤は全て大企業が取り込んでしまい、国民には殆ど還元されず、バブル経営の尻拭いだけを一方的に押し付けられただけだったにも関わらず。その挙句に、それに対する国民の苦痛や正当な怒りに対してまで、「生活エゴ」と罵る輩まで登場するに至っては(西村眞吾など)、もはや何をか況やである。

  

 もう少し詳しく各党について見ていく。
 まずは「立ち上がれ日本」だが、結党趣旨として、「打倒民主党」「日本復活」「政界再編」の3つを挙げている。鳩山政権・民主党への国民の信頼が失われつつあるのはその通りだが、それはこの政権・与党が、悉く「反自民」の当初の公約を反故にしつつあるからである。然るに、この右翼新党は、「反日・売国=反自民」公約こそが諸悪の根源と、事実を逆さまに捉え、後ろ向きの反動的な立場からの政権・与党攻撃に終始している。だから、「普天間基地撤去」「派遣法改正」問題でも後ろ向きの議論に終始し、逆に「米軍基地の永続・固定化」や「外国人参政権・夫婦別姓反対」などを言い募る有様で、現実離れした「伝統回帰」に活路を見出そうとしている。その挙句に「政界再編」、つまり「せっかく民主党の人気に陰りが出てきたのに、このまま落ち目の自民党に居たのでは一生陽の目を見ない」「ここは自分たちを高く売りつける事で、少しでも有利に事が運ぶ様にしておこう」という、さもしい個人的打算を公然と主張しているにしか過ぎないのだ。

 その辺の事情は「日本志民会議」も同じだ。「改革派首長たちの集まり」との前宣伝とは裏腹に、そこに掲げられている公約は、「立ち上がれ日本」と同様に、情緒的・復古的な「観念のお遊び」でしかない。この21世紀において、未だに「天皇」がどうたら「日本書紀」や「憲法十七条」がこうたらと、そんな事しか書けず、現実に生起する生活苦や失業問題について、何ら具体的な対案を提示出来ないのだから。凡そ民主主義や人権擁護などの現代的価値観とは全く無縁の、観念の世界に生きているとしか言う他ない。
 ここまで来ると、もう旧来保守の国民新党や自民党の谷垣・石破あたりの方が、そこまで現実から遊離していない分だけ、まだナンボかマシだ。道理で、幾ら産経新聞あたりが、休日に「赤旗」号外を配布したヒラ公務員の「政治的中立」を槍玉に挙げながら、公務を放り出して「新党ごっこ」に現を抜かす石原・橋下など現役知事の「政治的偏向」には諸手を挙げて賛成するという、露骨なダブスタぶりで支援しても、ドッチラケムードにしかならない訳だ。

 それと比べると、まだしも「みんなの党」の方が、一年先輩格だけあって、まだ見るに耐える面がある。「立ち上がれ日本」や「日本志民会議」の様な、自分勝手な願望だけを書き連ねてそこに至る道筋が何も提示されていない「綱領・宣言」とは違い、具体的な数字や財源論らしきものもそこには提示されており、前二者よりも遥かにマニフェストとしての体裁が整えられているからだ。
 党の役者も、「立ち上がれ」の様なアナクロ・ウヨ爺とは違い、イケメン風のチョイ悪オヤジが揃っている。党の公約も、前二者の様なアナクロ二ズムは影を潜め、「脱官僚」「地域主権」「生活重視」といった耳障りの良い言葉が並ぶ。実際に、「スポット派遣規制」や「日米同盟を基軸としつつも闇雲な対米追従姿勢は取らない」といった主張も、目くらましとして散りばめられている。成る程、川田龍平といった政治家や、その他の少なくない国民が、この党に幻惑されるのも、何となく分かる様な気がする。
 しかし、この新党もよくよく見れば、核心を為す主張は、いずれも悉く新自由主義的なものでしかない。公務員・国会議員の大幅削減、独立行政法人の民営化、企業・団体献金禁止と引き換えに政党法制定、ハローワークの民間開放、道州制導入、農業の民営化・株式会社参入、国連決議に基づく海外派兵のルール作りと、「主権在民」ならぬ「主権財界」「主権在米」ともいうべき謳い文句がそこには並ぶ。社会保障を人権としてではなく単に税金の対価としてしか捉えていない点や、公務員を住民全体への奉仕者ではなく単に政府(内閣・官邸)の手足としてしか捉えていない点を見ても、この「新自由主義」新党も、所詮は民主主義や人権とは相容れない存在でしかない事が分かる。

 この様に、「立ち上がれ日本」「日本志民会議」の2つがどちらかといえば右翼寄りであるのに対して、「みんなの党」はどちらかといえば新自由主義的側面が強く出ている。しかし元々は、右翼と新自由主義は、根本的に対立するものではないのだ。
 何故なら、新自由主義者の言う自由化・民営化というのは、「勝ち組」資本家による「搾取の自由」でしかないからだ。他方で、右翼が美化してやまない伝統とか日本古来の文化とかいうのも、家父長制や封建道徳の称揚を通した、「負け組」庶民に対する「奴隷根性」の押し付けでしかない。何のことは無い、「勝ち組」の「搾取の自由」を、「負け組」の「奴隷根性」で下支えさせようとしているのだ。
 劃して、失業・低賃金・労働強化・低福祉への怒りが、グローバル資本や政府・財界・特権官僚などの「真の敵」には向かわずに、自分と同等かそれより下位の、末端公務員・高齢者・非正規労働者・女性・アジア系外国人などへの「弱者叩き」や「自己責任」追及に摩り替わる事となる。外国人・老人叩きに狂奔する「嫌韓流」漫画家や、上には何も言えず同類以下に当たり散らすしか能のない勤め先のボンクラ社畜の様に。
 「みんなの党」が、官僚・公務員は熱心に叩いても在日米軍の特権については通り一遍にしか触れないのも、「立ち上がれ日本」で、郵政民営化賛成の新自由主義者(与謝野)とそれに反対した右翼(平沼)が野合出来るのも、新自由主義者と右翼が、たとえ女系天皇・外国人参政権・夫婦別姓などの個別問題で利害が衝突したとしても、根本において両者が相互補完の関係にあるからである。ネットでは最新・最右翼の「立ち上がれ日本」に注目が集まっているが、先行ランナーの「みんなの党」も含め、「新自由主義者と右翼の野合」という本質において、これらの右翼新党は全て同根なのである。

  

 この様な、新自由主義者と右翼の野合による、「憲法改悪と消費税増税」「国家主義と規制緩和」「軍拡と弱いもの虐め」の同時遂行という、超最悪な組み合わせの右翼新党でも、ただ一つ期待出来る事がある。それは、「自民党の別働隊を目指したものの、選挙で足を引っ張り、実際には民主党の別働隊のような役割を演ずる」(五十嵐仁の転成仁語)事を通して、自民党の解体を更に決定づけてくれる所にこそある。
 しかも、その余波は一人自民党だけに止まるものではない。先の総選挙で、政権を自民党からもぎ取った民主党も、小沢執行部による「左旋回」で左派層の取り込みに成功したとは言え、元々は自民党から分かれた新自由主義者と右翼によって取り込まれた党でしかないからだ。自民党が「立ち上がれ日本」に足をすくわれる形で民主党に敗北するのに対して、民主党は「みんなの党」に侵食され、自民党の後をなぞる形で解体を遂げていく事だろう。
 国民不在の小選挙区制・二大政党制を終わらせる中での、第一段階としての自民党の解体・終焉、次いで第二段階としての民主党の解体・終焉。それこそが、今度の参院選で候補者を乱立させるであろう幸福実現党や維新政党新風も含めた、右翼新党に課せられた真の歴史的使命なのだ。

(その他の参考記事)
・参院選10議席目指す 消費税10%公約にたちあがれ日本(産経新聞)
 http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/100411/stt1004111230006-n1.htm
・新党ラッシュで既存政党は? 自民は危機 公明・みんなは歓迎、民主は無警戒(同上)
 http://sankei.jp.msn.com/politics/election/100409/elc1004092306002-n1.htm
・新党を「立ち枯れ?」 喜美氏がチクリ(同上)
 http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/100407/stt1004071840011-n1.htm
・「旧党」「矛盾感じる」 平沼・与謝野新党に各党、冷ややか(同上)
 http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/100405/stt1004051936007-n1.htm
・自民離れた保守層を取り込め! 新党は憲法、消費税を二大政策に(同上)
 http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/100404/stt1004042304004-n1.htm
・「首長新党」4月中に結成、参院選に10人以上(読売新聞)
 http://www.yomiuri.co.jp/feature/20100105-807334/news/20100407-OYT1T01467.htm
・「趣味の政治ごっこ」としての保守新党結成ブーム(村野瀬玲奈の秘書課広報室)
 http://muranoserena.blog91.fc2.com/blog-entry-1715.html
・毎日新聞が社説で「立ち上がれ日本」の大連立狙いを懸念(きまぐれな日々)
 http://caprice.blog63.fc2.com/blog-entry-1064.html
・与謝野・平沼新党は本当に民主離反票の「受け皿」になりえるか(田中秀征 政権ウォッチ)
 http://diamond.jp/articles/-/7831
・くさい芝居はもう沢山だ!(拙稿)
 http://blog.goo.ne.jp/afghan_iraq_nk/e/c888796e5108f14991501cb3376e4bc6
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4 コメント

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今回は (修正資本主義者)
2010-04-17 19:50:13
今回はちょっとすべってる気がする
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新党連中は (GO@あるみさん)
2010-04-17 21:56:34
ご指摘のとおり「新自由主義政策」や「小泉構造改革」をいかに進めていくか競い合う人たちですね。それと違うベクトルのものを誰も持ちあわせていないのが「自民党」(および「民主党」も)なんですが…
それはそうと、「新党連中」は「普天間移設」問題はどう解決するつもりなんでしょう。どうせ「基地は沖縄」で済ませてしまおうと考えているでしょうが、そんな連中はまとめて民衆が拒否しますぞ
返信する
右翼新党と左翼の行く末 (プレカリアート)
2010-04-19 00:07:50
 GO@あるみさん、どもです。私も多分「基地は沖縄」で済ませてしまうだろうなと思っています。その上で、鳩山民主党叩きに最大限利用するだろうなと。沖縄・徳之島・岩国などの基地周辺・移設先の住民は、そんな右翼新党の本質も急速に見抜き始めていますが、その他の地域では、まだまだ新党への淡い期待が見られるのが、辛い所で。

 その右翼新党ですが、やはり警戒すべきなのは「みんなの党」ではないかと。
 「立ち上がれ」なんて、同じ右翼ネオリベ仲間の「みんなの党」からもロートル扱いされる体たらくで、時事の最新世論調査でも、調査対象にすらなっていない。参院選でも議席獲得までには至らないかと。
 本日時点で「日本創新党」に衣替えした「日本志民会議」も、こちらは現役首長が主導している分、議席獲得に至るかも知れませんが、それでも1~2議席が精々では。
 それに引き換え、「みんなの党」は、前述の世論調査では支持率2.1%と、3.8%の公明党に迫る勢いを見せています。
 でも、それでもたかだか数%でしかない。自民・民主の2党からは大きく引き離されています。右翼新党は、所詮は自民・民主の解体を促す「触媒」でしかない。今の第一院(衆院)での小選挙区制が続く限り、第三極にはなり得ないと考えています。
 http://www.jiji.com/jc/v?p=ve_pol_politics-support-pgraph
 
 それよりも、我々左翼が問題とすべきなのは、何故こんなパッチモンの右翼新党が、二大政党の対抗馬として「穴人気」を博すまでになってしまったか、という事です。
 日本では、市民革命で封建制を倒した歴史的経験がなく(明治維新は体制内クーデターでしかない)、労働組合や市民運動の力も弱く、西欧流の社民主義・福祉国家・市民社会の伝統もなかった。戦後の民主化も米国主導だった。
 そこに80年代以降、新自由主義イデオロギーがどっと入り込んできた。だから、米国流の新自由主義が、日本人の中に未だに残る封建的な意識(男尊女卑や過剰な自己責任論の横行)とも結びついて、世界でもより醜悪な形で広がる事になったのではないかと、推測しています。

 それに対して、90年代後半に一時的に、社会党崩壊の受け皿として、共産党が800万票まで国政選挙の得票を伸ばした事がありましたが、直ぐに「小泉人気」に取って代わられました。その原因は、当時の共産党が新自由主義に無警戒だったからだとも、北朝鮮問題によるものだとも言われました。
 では、その「小泉人気」が過ぎ去った今も尚、共産党が「みんなの党」の後塵を拝する立場に甘んじているのは何故なのか。国民が依然として新自由主義の幻想から完全に脱却出来ず、フランスの様な、非共産党の左翼第三極の動きすら一切見られないのは何故なのか。その原因は何なのか。単純に、冷戦崩壊や北朝鮮問題などに帰せられるべきものなのか。これを今考えている所です。
 でないと、せっかく自民・民主の二大政党制が崩壊しても、また別の新自由主義と右翼の二大政党制に置き換えられただけでは、依然として「勝ち組」の搾取が続く事になりますから。私は、もうこんな社会の下で、これ以上、労働強化と自己責任論に追い立てられるのはウンザリなのです。
返信する
Unknown (バッジ@ネオ・トロツキスト)
2010-04-21 09:10:00
みんなの党と靖国主義的復古主義新党を同列視するのは危険でしょうね。後者には物質的基盤が無い(=先細り)けど、前者には当面それがあると思いますから。

新自由主義政策は、社会全体で観た場合には世界的にも既に審判が下されていると思いますが、支持基盤の面では「労働者階級の上層」も含めた富裕層の支持がまだ失われていないと思います。

ただ、現在のあの支持率は、自民党支持層が分離したことによるのでしょうから、新たなバブルでも起きない限り今後そんなに急増することもないとは思いますけど・・・・
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