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掃き溜めに鶴

2017年05月31日 09時26分56秒 | モリカケも忖度もない公平な社会を

 

 安倍総理の「腹心の友」、加計(かけ)学園理事長の加計考太郎氏が経営する岡山理科大学が、獣医学部を創設する際に、愛媛県今治(いまばり)市の37億円相当の市有地を無償譲渡してもらっただけでなく、総事業費の半分にあたる96億円もの補助金を得る事ができました。この事が、総理による「えこひいき」、政治の私物化ではないかと、今、大騒ぎになっています。政府は従来、少子高齢化もあり獣医の需要も伸び悩んでいる事から、獣医学部の新設は基本的に認められないと言ってきたのに、なぜ加計学園だけ特別扱いされるのかと、問題になっているものです。土地譲渡を巡る利益供与についても、先の森友学園の8億円値引きと比べても、桁違いの金額です。森友学園疑惑よりも、むしろこちらの加計学園疑惑の方が、安倍政権にとって、よりダメージが大きいのではないかと言われています。

 その疑惑を裏付ける証拠として、今、注目されているのが、例の「総理のご意向」文書です。文部科学省の担当者が、当時の前川事務次官に説明用に作成したとされる文書ですが、内閣府が総理の意向を盾に、獣医学部の新設を渋る文部科学省に、圧力をかけてきた様子が、その中で克明に記されています。そこには、「何としても平成30年までに獣医学部を設置できるように、最短のプロセスで認可手続きを急いでくれ。これは総理の意向でもある」と、内閣府の担当者が言った事も書かれています。

 当然、加計疑惑については、首相サイドは躍起となって否定しています。そして、否定するだけでなく、「総理のご意向」文書の存在を暴露した文部科学省前次官の前川喜平氏を、出会い系バー通いの買春疑惑で「相殺」しようと図っています。読売新聞の記事によると、前川前次官は毎晩のように東京・新宿歌舞伎町の出会い系バーに通い、女性を物色していたとの事です。そこでは、「割り切り」と称して、女性から援助交際の話を持ちかけられる事も多いとか。でも、店側は客同士のやり取りについては一切ノータッチなので、前次官の買春容疑を立証する事は難しいのだと。そんな所に足繁く通い、文科省の天下り規制にも反して退職を余儀なくされた人物の「内部告発」を、安易に報道して良いのか?という事が、この記事から見て取れます。(上記左がくだんの5月22日付読売朝刊記事、右が週刊文春の前次官による内部告発記事。読売新聞の記事は既にネット上からは削除されていますが、図書館に行けば今でも好きなだけ読めます)

 その読売記事の見出しと本文の一部を、ここに文字起こししておきます。

 前川前次官 出会い系バー通い 文科省在職中、平日夜
 文部科学省による再就職あっせん問題で引責辞任した同省の前川喜平・前次官(62)が在職中、売春や援助交際の交渉の場になっている東京都新宿区歌舞伎町の出会い系バーに頻繁に出入りしていたことが関係者への取材でわかった。教育行政のトップとして不適切な行動に対し、批判が上がりそうだ。
 関係者によると、同店では男性客が数千円の料金を払って入店。気に入った女性がいれば、店員を通して声をかけ、同席する。
 女性らは「割り切り」と称して、売春や援助交際を男性客に持ちかけることが多い。報酬が折り合えば店を出て、ホテルやレンタルルームに向かうこともある。店は直接、こうした交渉には関与しないとされる。
 複数の店の関係者によると、前川前次官は、文部科学審議官だった約2年前からこの店に通っていた。平日の午後9時頃にスーツ姿で来店することが多く、店では偽名を使っていたという。同席した女性と交渉し、連れ立って店外に出たこともあった。
 店に出入りする女性の一人は「しょっちゅう来ていた時期もあった。値段の交渉をしていた女の子もいるし、私も誘われたことがある」と証言した。
 昨年6月に次官に就いた後も来店していたといい、店の関係者は「2~3年前から週に1回は店に来る常連だったが、昨年末頃から急に来なくなった」と話している。(以下略)

 私はこの読売記事を見て、逆に安倍政権の「えげつなさ、腹黒さ」に、改めて驚かされました。だって、仮に百歩譲って、前川前次官の「買春」疑惑が本当だったとしても、それと「総理のご意向」文書や加計学園疑惑の真実性と、一体何の関係があるのでしょうか?たとえ、告発者にどのような疑惑があろうとも、告発の内容が重大であるならば、それについては捜査するのが筋ではないですか。少なくとも、前川前次官は「証人喚問に呼ばれればいつでも応じる」と言っているのですから、政府も言いたい事があるなら、権力をかさにきて個人攻撃するような卑怯な真似なぞせずに、証人喚問の場で真実を明らかにすべきでしょう。ここは前川前次官だけでなく、もう一方の当事者である加計理事長や、ここでも森友学園の時と同様に、加計学園の名誉校長などに名を連ねている安倍夫妻も、是非、証人喚問に出席すべきだと思います。

 しかも、別に犯罪が立証された訳でもないのに、なぜ一役人の「出会い系バー」通いがことさら問題にされ、警察の捜査情報が読売にリークされたのか?読売は、さも独自取材でこのネタを「関係者」から仕入れたかのように書いていますが、この「関係者」が内閣調査室や警察庁などの権力側の人間であり、彼らの言い分をそのまま垂れ流した「官報」記事に過ぎない事が、既に週刊現代などの取材でも明らかになっています。だから、読売や産経が御用新聞と蔑まれるのですが、私は、ここにこそ、共謀罪法案の恐ろしさが現れていると思います。現に、岐阜県大垣市で、風力発電所の建設に反対する住民の個人情報を、学歴や病歴まで含めて、警察が本人に無断で建設会社に流していた事が明らかになりました。住民の中には、実際には発電所建設の話すら知らなかったのに、以前、原発反対運動をやっていた事で、発電所建設反対運動にも関わり合いのある人物だと、警察に勝手に決めつけられた人もいたそうです(詳細はもの言う自由を守る会HP参照)。「共謀」自体を罪に問おうとする以上は、個人の内面や思想信条まで問題にせざるを得なくなります。今ですらこんな状態なのに、共謀罪法案が通ってしまったら、今以上に言論・表現の自由が侵され、冤罪(えんざい)事件が各地で頻発するようになるでしょう。

 そのくせ、安倍政権寄りの立場に立つフリージャーナリスト山口敬之氏(元TBSワシントン支局長)の準強姦疑惑については、ドラッグをかがされ強姦された被害女性からの告訴状が受理され、警察官が空港で山口氏を逮捕する寸前まで行きながら、警察上層部の指示で山口氏は逮捕を免れました。先日、被害女性がそれを実名で告発する記者会見を行いました。犯罪性という事であれば、前川氏の「買春」疑惑よりも、むしろ、こちらの山口氏の準強姦疑惑のほうが、よっぽど重大な事件なのに。本来は公正中立であるべき警察も、結局は当事者が政権よりかそうでないかによって、事件にするかどうかを忖度(そんたく)しているという事じゃないですか。それで法治国家と言えるのでしょうか。(参考記事

 その一方で、「出会い系バー通いも、行政官として女性の貧困問題を調査する上で、参考にする為に行なっていた」という前次官の説明も、いまいちしっくり来ないように感じていました。貧困問題の調査をするだけなら、わざわざそんな所に行かなくても、パートの低賃金など、他にいくらでも切り口があるのに。いくら出会い系バーが援助交際や売春の温床になっているからと言っても、行政官も人間である以上は、そういう所に通う事もあるでしょう。そんな事言いだせば、警察が事実上黙認しているデリヘルやソープ、飛田新地などに通った人間は、全部警察の捜査の対象にされなければならなくなります。また、前次官を放蕩三昧(ほうとうざんまい)と罵る人は、毎晩のようにマスコミ幹部や企業経営者と会食している安倍首相については、一体どう思っているのでしょうか?首相の方こそ、よっぽど放蕩三昧じゃないですか。ところが、安倍首相やソープ通いの人間はおとがめなしで、なぜ前次官だけがやり玉にあげられなければならないのか?前次官も、そんな下らない言い訳なぞせずに、堂々と「風俗に行きました。でも、そんな事は告発の信ぴょう性とは全然関係ありません」と、開き直れば良いのにと思っていました。

 しかし、朝日新聞に掲載された前次官の下記の退任あいさつを読んで、その認識を改めました。女性の貧困問題の中でも最底辺に位置づけられる「最貧困女子」の問題に、前次官は本当に真正面から取り組もうとしていたのではないか?それが、このあいさつ文からもうかがえるからです。風俗業に従事している女性が、全員、格差社会の犠牲者だと言うのは、余りにも一面的な認識でしょう。しかし、その中に、稼ぎ頭としてチヤホヤされる女子大生風俗嬢とは反対に、「地雷」と蔑まれ使い捨てされるシングルマザーや家出少女出身のメンヘラ(精神を病んだ)風俗嬢も少なくない事は事実です。前次官は、退任後は女性の貧困問題に取り組むNGOの活動にも参加しながら、そのような最底辺の女性の貧困問題にも、本気で取り組もうとしていたのです。果たして今の政府官僚の中に、退任あいさつでここまで言える人がどれだけいるでしょうか?(詳細は当該NGO主宰者ブログ記事を参照の事)

 思えば、ナチスの戦犯アイヒマンを告発したバウアー検事長も、同性愛者として脛に傷持つ身でした(映画「アイヒマンを追え!」HP参照)。米国の国家機関NSAによる個人盗聴疑惑の闇を暴いたスノーデンも、出会い系サイトで後の伴侶となるミルズと知り合う事ができました(私の過去記事参照)。確かに、前次官が出会い系サイトに通っていた事は、決してほめられた事ではありませんが、私はそんな事で彼の揚げ足を取る事よりも、前述の読売の揚げ足取り記事風に言えば、総理が「割り切り」と称してw、マスコミや企業幹部と会食を繰り返して、行政の公平性をゆがめ、かつてのフィリピン・マルコス独裁政権や韓国のパククネ政権のような不正に手を染めている事の方が、よっぽど重大だと思います。

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文部科学省の皆さんへ
 本日、私は大臣から辞職を承認する辞令を頂戴しました。
 文部科学省の皆さんが元気いっぱい仕事に打ち込めるようリードすべき立場の私が、このような形で退職することは、誠に残念であり申し訳なく思っています。
 国家公務員法が定める再就職規制を遵守(じゅんしゅ)できなかったことは事実であり、文部科学省として深く反省し、しっかりと再発防止措置をとる必要があります。
 私を反面教師として、二度とこのようなことが起こらないよう、職員の皆さんは遵法意識を徹底し国民の信頼回復に努めてください。
 しかし皆さん、動揺したり意気消沈したりしている暇はありません。
 一日たりともおろそかにできない大事な仕事があるからです。
 文部科学省の任務は極めて重要です。私が考える文部科学省の任務とは、教育・文化・スポーツ・科学技術・学術の振興を通じて、誰もが明るく楽しくしあわせに人生を全うできる社会をつくること、未知なるものに挑戦し限界を克服し輝く未来へと前進すること、さらには自由で平等で平和で民主的で文化的な国をつくり世界の平和と人類の福祉に貢献することです。
 そして、私が考える文部科学省職員の仕事は、子どもたち、教師、研究者、技術者、芸術家、アスリートなど、それぞれの現場でがんばっている人たちを助け、励まし、支えていくことです。
 特に、弱い立場、つらい境遇にある人たちに手を差し伸べることは、行政官の第一の使命だと思います。
 その意味でも、文部科学省での最後の日々において、給付型奨学金制度の実現の見通しがついたこと、発達障害や外国人の児童生徒のための教職員定数改善に道筋がついたこと、教育機会確保法が成立し不登校児童生徒の学校外での学習の支援や義務教育未修了者・中学校形式卒業者などのための就学機会の整備が本格的に始まることは、私にとって大きな喜びです。
 一方で、高速増殖原型炉もんじゅ廃炉と今後の高速炉開発に向けた取り組み、文化庁の機能強化と京都への移転、高大接続改革の円滑な実施など、数々の困難な課題を残して去ることはとても心残りです。
 あとは皆さんで力を合わせてがんばってください。
 そして皆さん、仕事を通じて自分自身を生かしてください。職場を自己実現の場としてください。初代文部大臣森有礼(もり ありのり)の「自警」の表現を借りて言うなら「いよいよ謀りいよいよ進めついにもってその職に生きるの精神覚悟あるを要す」です。
 森有礼は「その職に死するの精神覚悟」と言ったのですが、死んでしまってはいけません。人を生かし、自分を生かし、みんなが生き生きと働く職場をつくっていってください。
 ひとつお願いがあります。私たちの職場にも少なからずいるであろうLGBTの当事者、セクシュアル・マイノリティの人たちへの理解と支援です。無理解や偏見にさらされているLGBT当事者の方々の息苦しさを、少しでも和らげられるよう願っています。
 そして、セクシュアル・マイノリティに限らず、様々なタイプの少数者の尊厳が重んじられ、多様性が尊重される社会を目指してほしいと思います。
 気は優しくて力持ち、そんな文部科学省をつくっていってください。
 いろいろ書いているうちに長くなってしまいました。最後まで読んでくれてありがとう。
 それでは皆さんさようなら。
 2017年1月20日 前川喜平
 http://www.asahi.com/articles/ASK1N563DK1NUTIL031.html

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