アフガン・イラク・北朝鮮と日本

黙って野垂れ死ぬな やられたらやり返せ 万国のプレカリアート団結せよ!

制裁でも対話でもなく北朝鮮の平和解放を

2008年10月19日 23時08分02秒 | 北朝鮮・中国人権問題
季刊リムジンガン 第2号(2008夏)―北朝鮮内部からの通信 (2)

アジアプレス・インターナショナル出版部

このアイテムの詳細を見る


・北朝鮮のテロ支援国家指定、米が解除 6者維持へ譲歩(朝日新聞)
 http://www.asahi.com/international/update/1011/TKY200810110170.html?ref=goo
・テロ指定解除:対北朝鮮で米政府が発表 核検証計画に合意(毎日新聞)
 http://mainichi.jp/select/world/america/news/20081012k0000m030079000c.html

 上記ニュースにもある様に、先日11日に、北朝鮮の核無能力化再開に伴い、米国が同国に対するテロ国家指定を解除しました。少し遅くなりましたが、今回はその件について、自分の思う所を書いておきます。

 911テロを機に、アフガン・イラク反戦を訴えて始めた私のHP・ブログが、北朝鮮問題にも言及する様になったキッカケは、あくまでも拉致問題でした。しかし、今はもう、北朝鮮問題に関して一番憂慮すべきなのは、核問題でも拉致問題でもなく、北朝鮮国内の人権問題だと思っています。

 金正日を中心とした個人崇拝・世襲政治の下で、身分制度や密告制度、強制収容所網によって国民が縛り付けられているこの国の実態は、もはや「社会主義国」とはとても呼べない、単なる「封建王朝」にしか過ぎないのは明らかです。
 その北朝鮮の人権状況を抜きにして、米国・ロシア・中国などの核大国が幾ら北朝鮮の核保有を論った所で、所詮は「核保有国のエゴ」でしかありません。また、幾ら日本人拉致ばかりを言い募っても、米国やその配下の軍事独裁政権が、アフガン・イラクや中南米で同様の犯罪行為に手を染めてきた事実には頬かむりでは、当事者以外にとっては「どっちもどっち」にしか映りません。

 確かに、北朝鮮の人権問題は、最終的には北朝鮮人民自身によって解決されるべき問題です。しかし、「世界人権宣言」が、国家・民族の枠を超えた人権の普遍性を謳っている様に、この問題は単に当該国だけの問題に止まるべきものではありません。限度を超えた人権抑圧に対して、「民族自決権」を口実に「知らぬ存ぜぬ」の態度を取る事は、とりわけ弱者の人権擁護を任じる左翼・リベラルにあっては、在ってはならない事と考えます。

 まず、金正日体制の崩壊によって、北朝鮮人権問題が解決に向かう事で、核や拉致の問題は言うに及ばず、今まで長年打ち捨てて置かれた日本の過去の帝国主義・侵略戦争に対する歴史総括や、国家間のODAや経済協力と引き換えに黙殺されてきた個人に対する戦時賠償の問題も、初めて本格的解決に向かい始めます。
 そして、東西冷戦の残滓と米国の軍事的・経済的支配の下で、「民主的」装いを凝らした新自由主義的搾取によって、「ネットカフェ難民生活」や「派遣イジメ」に痛めつけられてきた、日本などアジア資本主義諸国の人民にとっても、国内政治の民主化や対米従属からの解放、非核・非同盟・非軍事化への道に、本格的に歩み出せる展望が初めて開けます。
 斯様に、この北朝鮮人権問題は、単に日本人拉致家族だけの問題や、当該国人民の解放だけに止まる問題ではなく、周辺国人民の、我々の解放にも関わる問題でもあるのです。

 今の北朝鮮問題を巡る「制裁か、対話か」の議論の中で、どちら側の主張にも私が組する気になれないのは、そのどちらにも、前述の「人民解放」の視点が決定的に欠けているからです。「制裁論」にも「対話論」にも、北朝鮮やその近隣諸国で実際に生活している人民・民衆の姿が、全然見えません。
 ネオコン(新保守主義者)や靖国右翼が主張する北朝鮮「制裁論」は、軍需産業・軍拡勢力と金正日独裁体制との「鞘当て」にしか過ぎません。それを「お涙頂戴」の、拉致問題を自民党の悪政隠しに利用するNHK「命令放送」で誤魔化しているだけです。その一方で、ネオリベ(新自由主義者)や財界、共産党・社民党などの議会左派が主導する北朝鮮「対話、国交正常化実現論」についても、こちらも資本主義諸国と金正日体制との「談合」でしかありません。後者では確かに戦争は避けられるかも知れませんが、所詮は「新自由主義」の北朝鮮への拡大にしかならないと思います。今の中国がそうである様に。
 では、「戦争・ファシズム」でも「格差社会・新自由主義」でもない北朝鮮・東北アジアを作るには、どうしたら良いか。これは直ぐには答えが出る問題ではありません。ただ一つには、周辺諸国による脱北者の組織的受け入れで、東ドイツやチェコと同様に無血解放の道を辿る可能性があるのではないかと、漠然と予想しています。

 いずれにしても、「制裁か、対話か」の議論は、私にとっては、それ自体には余り興味はありません。私も、HP立ち上げ当初は、どちらかと言えば後者に近い考え方で、一時期はその是非を決めかねて態度を保留した事もありましたが、今はもう、そんなものは、「自民党と民主党のどちらが、より左寄り(革新的)か?」と言った類の、北朝鮮人権問題の本質を覆い隠す「ニセ対立」でしかないと、思っています。
 「救う会・調査会」界隈では何やら、今回の米国による「北朝鮮テロ国家指定」解除に対する怨嗟の声が満ち満ちている様ですが、そもそも私は、米国のキューバ・イラン制裁に見られる様な、特定の超大国・帝国主義国による恣意的な「テロ国家指定」そのものを認めない立場です。さりとて逆に、「指定解除」がそのまま「東北アジアにおける真の平和・人権・民主主義の確立」に直結するものか否かを考えると、手放しに礼賛する気にもなれません。その理由は前記で述べた通りです。
 北朝鮮の市場経済化への移行が、彼の国の民主化への契機にもなり得るという意味では、確かに少し期待も持てますが、そこで人民が民主化に立ち上がらなければ、それは単に「開発独裁」を補強するものにしかなりません。かつての朴正煕・スハルト・ピノチェト独裁政権がそうであった様に。過去の植民地支配に加えて、現在の「派遣イジメ」まで北朝鮮人民に味わせる様な真似は出来ません。それはもう我々だけで沢山です。

 そんな「制裁か、対話か」といった議論よりも、実際にそこで生活している北朝鮮人民や、彼の国と繋がりを持つ在日コリアンの方々が、何を思い日々生活を送っているのか、そこに寄り添う事の方が、一見地道に見えて、実は「制裁か、対話か」よりも遥かに重要であると思います。
 「護憲は言うが北朝鮮問題には及び腰」でも、「排外主義・国家主義扇動に乗せられてファシストの先導役を買って出る」のでもなく、日・朝をも含む全・東アジア人民の連帯で、改憲・右傾化策動や新自由主義にも、北朝鮮や中国の人権抑圧にも反対し、それぞれの国で民主化を勝ち取っていく。私は、この姿勢こそが、世界人権宣言・日本国憲法の理念を真に体現したものであり、左翼本来の立場でもあると考えます。
コメント (1)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« これでは共闘とは言えない | トップ | 有権者をバカにするな »
最新の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
北朝鮮・拉致問題を国家犯罪として捉える事の重要性 (プレカリアート)
2008-10-22 05:16:14
>米国やその配下の軍事独裁政権が、アフガン・イラクや中南米で同様の犯罪行為に手を染めてきた事実

 当該エントリー記事「制裁でも対話でもなく北朝鮮の平和解放を」文中の、上記「米国拉致」の内容について、もう少し補足しておきます。

 米国で弾圧の訓練を受けた軍人が、民主選挙で選ばれた左派・民族主義政権をクーデターで倒して各国で政権に就き、軍事政権同士で連携を取りながら、イスラエル・コネクションやナチ残党まで動員して、「アカ」「テロリスト」掃討の名目で、無実の市民を何十万人と拉致・暗殺。
 米国が今アフガン・イラクでやっている事は、それまで中南米諸国などで散々行ってきた上記の行為を、そのまま繰り返しているのに過ぎません。下記資料はそのホンの一部です。「南米、軍事政権、失踪者」や「コンドル作戦、汚い戦争、死の部隊、サルバドル・オプション、SOA」のキーワードでネット検索すれば、他にももっと出てくるかも知れません。

・ピノチェットとコンドル作戦(「鍼を送る会」HP)
 http://www.ne.jp/asahi/hari/nature/report_1/puente/25_01.htm
・中南米:映画に描かれた軍政時代(「Cafe Mexico」HP)
 http://www.cafe-mexico.com/database/peliculas/por_tema/epoca.html
・死の部隊(Wikipedia)
 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AD%BB%E3%81%AE%E9%83%A8%E9%9A%8A
・南米に逃げたナチ残党(「ヘブライの館2」HP)
 http://inri.client.jp/hexagon/floorA6F_hc/a6fhc400.html
・米、イラクで“サルバドル戦略”を実施か 準軍事組織による残虐な秘密作戦(日刊ベリタ)
 http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=200502281102161
・西半球安全保障協力研究所(Wikipedia)
 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B1%B3%E5%B7%9E%E5%AD%A6%E6%A0%A1

 勿論、これらの事実によって、北朝鮮やその他の共産主義国の犯罪行為が免罪される訳ではありません。旧ソ連も、東ドイツ・ポーランド・ハンガリー・チェコ・アフガンで、米国と同じ様な事をしてきたのですから。カンボジアのポルポトなんて、その最たるもので。

 ここで何が言いたいのかというと、この様な「国家の持つ暴力性」には「右や左の別はない」という事です。
 そういう意味でも、拉致問題についてもそうですが、北朝鮮の国家犯罪については、「保守イデオロギー」や「国家主義」の復権ではなく、寧ろ逆に「国家による人権侵害」として捉え直されなければならないのです。
 そういう視点を欠いた「ウヨクお花畑」の頭で、単に「あれは共産国の犯罪だ」だとか「工作員から国を守る」という観点だけで運動を進めていると、いつかは当の「自由主義国家」からも、散々利用された挙句に、足元を掬われ、「国益」の名の下に切り捨てられる時が来ます。その時になって初めて「騙された!」と気付いても、もう後の祭りです。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

北朝鮮・中国人権問題」カテゴリの最新記事