脳機能からみた認知症

エイジングライフ研究所が蓄積してきた、脳機能という物差しからアルツハイマー型認知症を理解し、予防する!

予想的中・・仮設生活に「小ボケ」が・・・

2011年12月17日 | エイジングライフ研究所から

3月20日に東日本大震災―高齢者を認知症から守るとして、エイジングライフ研究所の考え方から言えば、震災の後には認知症の発症が不可避なので、そのメカニズムを知ってどうか予防に励んでいただきたいと書きました。

そして9月19日には黄色信号が点灯しましたと、もう少し突っ込んでエイジングライフ研究所の主張を書いたのです。
「それまでの生活が一変して、その人らしくイキイキと生きられなくなる。
状況を判断して、見通しを立て、自分がどう進むか考え、決定する肝心かなめの前頭葉の出番がなくなる。
その結果、生きがいなく、趣味も交友を楽しむこともなく、運動もしない「ナイナイ尽くしの生活」に陥って、半年すると前頭葉機能ははっきりと低下してきます。」

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最近の新聞の記事ですが、とても興味深いことが書かれていました。

見出しは
「仮設生活、心身衰え増加
  厳冬、高齢者体動かして」


記事の前段では、「仮設住宅で暮らす高齢者を中心に、歩けなくなったり、心が沈んだりする『生活不活発病』と見られる症例が目立ち始めている」と述べられています。
記事本文では、震災前に行っていた仕事をしなくなったために「歩くのが難しくなった」などと運動面に重きが置かれている印象が強いです。

また、記事中の別枠を使った「生活不活発病」の解説は、「身体を動かさないことが理由で、歩けなくなる、ぼけたようになるなど心身全体の機能が衰える状態」でした。

2011_1225_140300p1000007「ぼけたようになる」という表現に注目しましょう。

「徘徊」「不潔行為」「粗暴行為」「夜中に騒ぐ」「家族もわからない」「食べ物でないものを食べる」などの症状がある時、世の中では「あの人ボケちゃった」というのではありませんか?

この解説では、続けて「外出の機会が減った、家事の一部をしなくなった」と説明されています。
通常使われている「ボケ」とは違って、「ボケたようになっているレベル(がある)」と言っているのです。

その通りです。エイジングライフ研究所はそれを「小ボケ」レベルといいます。

ある時突然「徘徊」「不潔行為」「粗暴行為」「夜中に騒ぐ」「家族もわからない」「食べ物でないものを食べる」ようなことが始まるでしょうか?

震災直後、避難所に高齢者が集まってきたときに、すでに「ボケて」いた高齢者はその生活に適応できるはずもありませんから、夜中に騒いだり、不穏になったりして、本人も大変ですが周りも大変という状態になります。
あちらこちらの避難所で、ボケた人たちのために、急きょ施設や病院にお願いしたり、特別な部屋を用意したりということが行われたと聞きました。

今回の記事は、避難所から仮設住宅に移った「普通」の高齢者の変化について、警鐘を鳴らしているのです。

エイジングライフ研究所は、この主張をし続けてきました。2011_1210_114900p1000082 12月のアジサイ
生活のあり方でボケは発生するのだと。
趣味も生きがいも交友もなく、運動もしない「ナイナイ尽くしの生活」こそボケの元凶であると。
その考えから言えば、今回の震災ほど危険な生活上の変化はないわけですから、二度にわたってお話ししてきました・・・
予想が的中したという思いは、満足とは程遠く、むしろつらく悲しい思いを引き起こしています。2011_1210_115100p1000083

でも、「小ボケは三年」まだまだ手を打つチャンスはたくさんあります。
「楽しく、打ち込める時間。友達を一緒に楽しんであっという間に経ってしまうような時間」が必要です。

いくつかの町には、友人たちの大きな協力をもらって手芸用品などをお送りしていますが、どうぞ活用してください。
その時の鍵は「手芸を楽しませることができる」人を見つけてくることですよ。


 十日町報告

2011年12月17日 | かくしゃくヒント

今回の十日町市の講演会は老人クラブ主催のものでした。2011_1207_155000p1000071_2

会長の櫻井さんです。
旅に出る楽しみはいろいろありますが、「お元気な生き方」をしていらっしゃる方々にお会いできることも、間違いなく私の旅の楽しみの一つです。

この写真は、控室でお話をしている時に撮らせていただきました。 

老人クラブの活動方針などのお話も伺いましたが、
「ご趣味は?」とお尋ねした時以降の盛り上がり方を、ぜひ聞かせてあげたかった!

「ちょっと、釣りを。ヘラブナをやるんですが、これがまた奥が深くて」
「同じところで、同じように釣っても釣果が違うんですよ。それで仕掛けを教えてもらったりもするんですけど、結局のところは、ヘラブナと対話ができるかどうか」
「ヘラブナは、ちょっとえさに食いついて放すんですね。その辺のタイミングというか」

お話はどんどん深くなっていって、私も水中のヘラブナが見えるような気持ちになりました。楽しかったです!

その時のお話しで
「十日町市の認知症予防の取り組みについては、もう少し高齢者にも目を向けてほしい。周り中80歳を超えた高齢者がいるから」と言われましたが、同席していた保健師さんが
「予防ですから。どうしても早くからでないと効果的でないのです」と即座に答えられたのは、実はとてもうれしいことでした。
川西地区の発表2011_1207_134000p1000070

講演に先立って、
「認知症予防教室を継続しているところの発表をお願いしましょう」ということになって、担当の保健師さんがお誘いしたら、川西地区の「脳いきいき教室」の皆さんが急な話にもかかわらず、すぐに参加してくださることになったのです。

そのうえ舞台のそでで、
「やっぱり、いつものように発声練習からにしましょう」と突然変更。
「えー」という声も上がりましたが、堂々たるもので、会場の皆さんまで大きな口をあけて唱和していました。2011_1207_133900p1000069

前列の素晴らしいリーダーさんに恵まれて川西地区の皆さんは楽しく教室を続けていらっしゃいます。
楽譜を統一して、ちょっとおしゃれですね。
右端の男性(霜条の山岸眞治さん)が作詞した「いきいき教室の歌(お座敷小唄のメロディで)」の合唱です。(スキャンしたのですが、pdfファイルのため表示できません・・・とても正しい歌詞でしたから転記します)

 1.いつも いきいき教室で 歌って踊って 輪になって
  多くの仲間と 楽しんで 老いても元気で ピチピチだ

 2.いつも いきいき教室は 人の気心 知り合って
  多くの仲間と 楽しんで ボケない様に 生き生きと

 3.いつも いきいき教室は  年はとっても 気は若い
  多くの仲間と 楽しんで 若く元気に 生き抜こう

  
認知症予防にはこういう生き方が、どうしても必要なのです。
  一つ、挑戦する姿勢
  二つ、楽しむ姿勢
  三つ、臨機応変
それは、どう考えても若い時から始めなくては、無理がありますね!繰り返し体験していくことで、自然に自分のものにしていけるからです。
前にも魅力的な方々に出会ったなあとブログを探してみました。続ー越後路で出会った人々
こういう方々が多くなるほど、「ボケのない町」に近づけるのです。

講演会の時には勉強会もします。2_2

今回の勉強会では、グッドニュースがありました。
松之山支所のT橋保健師さんが、松代支所に転勤になりました。
(これは私から見ると、とってももったいないことです。
保健師さんは多くの業務を担当しているわけですが、認知症予防に関して言えば、地区の住民の方々との人間関係がまずあって、それから、教室や脳機能検査や生活改善指導などが続きます。そして、それをベースにして継続した自主活動へつないでいけるものです。
ちょっと田舎に行けば、長くいらっしゃることで住民の方々と深い人間関係を築いている保健師さんによく出会います。
今回は、ちょうどクロスされた人事交換だったようです)

以上は私の感想で、とうのT橋保健師さんは
「新しくがんばります」と言いながら

「松代の地区の方々の成績をチェックしてみたら、軒並み成績が良くなっているんですけど」データを見せてくださいました。
ほんとによくなっていて、フォローできている方は全員が、維持か改善。
私は、松代地区のお母さんみたいだったK井保健師さんの顔が浮かんできました。
松之山で、T橋保健師さんがなさった予防活動も、こうしてずれていきながら実を結ぶのですよ。                   十日町の高齢者大学は明石学級と言います。明石縮からの命名2011_1207_160600p1000072

「脳機能はよくなっているけど、そのためには生活がどう変わったのかを確認しないと伝えきれないでしょ」と指摘したら
「春の地震と、秋の台風。自分たちでやるしかないという気持ちが、この改善を生みました」と即答。
そうだと思いますよ。生活ぶりと脳機能は離れることのないものですから。

「高齢になって、せっかく脳機能がアップできたのだから、歯を食いしばって頑張ることだけに使うのでなく、楽しい右脳活性化にも使ってもらってくださいね」といったら
T橋保健師さんは、いかにも松代支所の保健師さんの笑顔で応えてくれました。
「松代の住民のために当然です」と言っているようで、頼もしかったです。人事異動もいいかなとちょっと思いました。


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