3月20日に東日本大震災―高齢者を認知症から守るとして、エイジングライフ研究所の考え方から言えば、震災の後には認知症の発症が不可避なので、そのメカニズムを知ってどうか予防に励んでいただきたいと書きました。
そして9月19日には黄色信号が点灯しましたと、もう少し突っ込んでエイジングライフ研究所の主張を書いたのです。
「それまでの生活が一変して、その人らしくイキイキと生きられなくなる。
状況を判断して、見通しを立て、自分がどう進むか考え、決定する肝心かなめの前頭葉の出番がなくなる。
その結果、生きがいなく、趣味も交友を楽しむこともなく、運動もしない「ナイナイ尽くしの生活」に陥って、半年すると前頭葉機能ははっきりと低下してきます。」
最近の新聞の記事ですが、とても興味深いことが書かれていました。
見出しは
「仮設生活、心身衰え増加
厳冬、高齢者体動かして」
記事の前段では、「仮設住宅で暮らす高齢者を中心に、歩けなくなったり、心が沈んだりする『生活不活発病』と見られる症例が目立ち始めている」と述べられています。
記事本文では、震災前に行っていた仕事をしなくなったために「歩くのが難しくなった」などと運動面に重きが置かれている印象が強いです。
また、記事中の別枠を使った「生活不活発病」の解説は、「身体を動かさないことが理由で、歩けなくなる、ぼけたようになるなど心身全体の機能が衰える状態」でした。
「ぼけたようになる」という表現に注目しましょう。
「徘徊」「不潔行為」「粗暴行為」「夜中に騒ぐ」「家族もわからない」「食べ物でないものを食べる」などの症状がある時、世の中では「あの人ボケちゃった」というのではありませんか?
この解説では、続けて「外出の機会が減った、家事の一部をしなくなった」と説明されています。
通常使われている「ボケ」とは違って、「ボケたようになっているレベル(がある)」と言っているのです。
その通りです。エイジングライフ研究所はそれを「小ボケ」レベルといいます。
ある時突然「徘徊」「不潔行為」「粗暴行為」「夜中に騒ぐ」「家族もわからない」「食べ物でないものを食べる」ようなことが始まるでしょうか?
震災直後、避難所に高齢者が集まってきたときに、すでに「ボケて」いた高齢者はその生活に適応できるはずもありませんから、夜中に騒いだり、不穏になったりして、本人も大変ですが周りも大変という状態になります。
あちらこちらの避難所で、ボケた人たちのために、急きょ施設や病院にお願いしたり、特別な部屋を用意したりということが行われたと聞きました。
今回の記事は、避難所から仮設住宅に移った「普通」の高齢者の変化について、警鐘を鳴らしているのです。
エイジングライフ研究所は、この主張をし続けてきました。 12月のアジサイ
生活のあり方でボケは発生するのだと。
趣味も生きがいも交友もなく、運動もしない「ナイナイ尽くしの生活」こそボケの元凶であると。
その考えから言えば、今回の震災ほど危険な生活上の変化はないわけですから、二度にわたってお話ししてきました・・・
予想が的中したという思いは、満足とは程遠く、むしろつらく悲しい思いを引き起こしています。
でも、「小ボケは三年」まだまだ手を打つチャンスはたくさんあります。
「楽しく、打ち込める時間。友達を一緒に楽しんであっという間に経ってしまうような時間」が必要です。
いくつかの町には、友人たちの大きな協力をもらって手芸用品などをお送りしていますが、どうぞ活用してください。
その時の鍵は「手芸を楽しませることができる」人を見つけてくることですよ。