脳機能からみた認知症

エイジングライフ研究所が蓄積してきた、脳機能という物差しからアルツハイマー型認知症を理解し、予防する!

同時通訳ーコミュニケーションには右脳が必須です

2013年12月13日 | 右脳の働き

先月になりますが、来日中のハワイ在住のすごい同時通訳者MPさんとお話ししました。
(彼女は、裏千家前お家元千玄室さんが英語圏を公式訪問するときには必ず同行するという実力者です)

赤沢海岸遊歩道
P1000021 お父さんがアメリカ人、お母さんが日本人。
翻訳や通訳をお仕事になさって30歳くらいまで日本で、それからアメリカで暮らしていらっしゃいます。日本語はもちろん完璧(これは私がよくわかります)
英語もまったく同じレベルなのですって!(残念ながら、わたしにはわかりませんが。だって私には英語を評価する能力がありませんから(笑))

日本語は完璧といいましたが、話すことができるというレベルと、ことばを使いこなすことができるというレベルは全く違います。

ことばを使うということは、社会情勢は当然のことながら、歴史も文化も人情もその人が理解できていることを基礎にして、その「ことば」を使うのです。
つまり理解できているレベルしか、「ことば」を使いこなすことはできません。

小さな子供が日本語を上手に使っている状態を考えてみてください。
発音もおかしくないし、文法も特別難しいことでない限りクリアできている・・・でも、私たち大人が日本語を使っている状態と比べてどうでしょうか?
語彙も違えば内容の深さも違います。                       柱状節理の海岸線
P1000032
状況が違った時にどのように話すでしょうか?
大人は使い分けることができます。

相手が、家族、親しい人、初対面の人。
大勢の人を相手に話すとき。

祝いの席、不幸の場。

公的な場、プライベートの時。

伝えたい状況と内容によって、語彙もかえます。

私たちは日本人ですから、日本語の範囲で考えると、このあたりまではちょっと考えてみればわかることですね。
これは何語でも同じことですが、使いこなせていない言葉に関しては「話せる」か「話せない」かしかわかりません。滑らかに話していても、「小さな子供が話しているのと同じような内容レベルかもしれない」というようなことはわからないものです。

まるでジャングルP1000018
P1000026   

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時通訳というのは、テレビなどで出会うと「すごいなあ」と感嘆するものですね。
もともとは第2次世界大戦後、ニュルンベルク裁判(ナチ戦犯の裁判)の時導入され、この同時通訳がなければ裁判が成立できなかったと言われています。(2013.11.30.日経新聞記事より)

命の継承
P1000027 その記事の後半に
「同時通訳者は数百人を試験して、合格者は数%にすぎなかったこと。外国語に堪能なだけでは通訳はできないこと。集中力や頭脳の回転の速さに加え、ストレスに耐える強さが必須である」ことが書かれていました。

「ストレスに耐える強さ」というのは、理解できた言葉が納得できなくて、とても口に出したくないものであっても、自分の意志は押さえつけて、理解したとおりに口に出さなくてはいけないことだと、私は理解しました。

そして、MPさんの言葉がよみがえってきました。

「今回の来日目的は、ハワイのヒーラー(ヒーリングを行う人)の講座の同時通訳だったんです。
今回のような仕事の時は、単に訳すというのではなく、『その気分』を伝えなくてはいけないのです。
例えば『意識を丹田に集中させて・・・』というときには、穏やかなゆっくりした低めの声で通訳しなければ理解しにくいですよね。
『さあ、楽しいことをイメージして!』というときは、大きめの声で、明るく元気よく言わないといけないのです」
                                             P1000020ヤツデの花、満開          

「当たり前のようですが、正確に通訳することができても、この口調や声の高低、強弱などが加味できない人っているんですよ。
そのような通訳を聞いていると、なんだかヘン。気持ちが悪いものです。
ビジネス分野や学術的分野の通訳の時は、それほどでもないんですけどね」

とっても納得。

ビジネスや学術の分野だと、伝えなくてはいけない最重要な情報はデジタルな情報(左脳の守備範囲)のはず。
もちろん微妙なアナログ情報(こちらは右脳担当)もあったほうが伝わりやすいかもしれませんが。
いずれにしても、私たちは「ことばは左脳が処理する」と教えられていますよね。それは正しいのですが、普通の会話となると話はまた別になります。

不思議な石食いの樹
P1000031 実は普通の会話、というか、ビジネスや学術という特殊な分野以外では、コミュニケーションは右脳情報なしには成立できません。
声の強弱、大小、緩急。声だけではありません。
表情、身振り。
「ことば」以外はすべて右脳が関与するものです。

まだ十分に言葉がつかえない幼子と「アババ」とか「イナイ、イナイバー」ぐらいの「ことば」でも、あやす楽しみや喜びってあるでしょう。
コミュニケーションの第一歩は、言葉はいらない・・・

「目は口ほどにものを言い」ということわざもあります!

「ことば」があっても自動販売機の自動応答と会話を楽しみたくなる人はあまりいないと思います。
                                          生命力!
P1000019MPさん。
逐次通訳でもびっくりするのですが、何時間でも日⇔英の両言語を繰り続ける能力(脳力)には脱帽!

MPさんのおかげで、日本語が全くできないアメリカ人のご主人と、一日ご一緒しても何のストレスも感じませんでした。
自然に会話しているような気分になりました。
ありがとうございました。

でもMPさんはストレスがたまったでしょう。
だって「いいたいこと」を言わずに「いわなくてはいけないこと」だけを話し続けるだけでなく、右脳をその人の気分になりきらせるのですもの。
どうぞお大事に。またお話を伺わせてください!


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