1963年夏 琵琶湖
学生時代最後の夏休みに、進路模索活動の一環として組合づくりを試みた。
洛南の従業員・数十名の合金会社に長期アルバイトで入った。
砂型に溶融アルミを流し込んで「ナショ」*ブランドの電気釜用内鍋を作っていた。わたしは場内の雑用(主に運搬)係だったが作業用安全ブーツを貸与されていた。
*下請けが常用していた表現
従業員は集団就職で入社した若い男が多かった。憶えている出身地は前橋市である。会社が募集に行ったのか群馬県の会社が京都に進出して来たのか分からない。
若い従業員たちは寮住まいだった。
彼らの悩みは将来にわたって希望を見出せないことだった。若い者のなかにも会社に目をかけられている者もいたが、その他おおぜいは会社の言いなりの低賃金で上司の指示通りにルーティンをこなすだけ、進歩も創造もない日常に不満を抱いていた。
組合づくりの話をすると目が輝いた。外の世界に一歩踏み出す目新しさ、自分もエキストラでない出演者として主体的に動く喜びを感じたのではなかろうか?
賃金と労働条件で会社に対して自分の主張をする場を作ること自体、かれらにとって非日常であり、何か期待を膨らませるできごとであった。
日曜日に保津峡や琵琶湖に遊びに行ってミーティングを重ねた。
そして具体的な段取りについて京都地評に相談に行った。
地評のオルグの指導で結成大会を開くところまで行ったが私は前日に雇止めになり結成に立ち会えなかった。
組合は結成されたが、事前にばれて、会社主導で完全な御用組合ができあがった。
友情を育むいとまもなく、わたしにはささやかな体験しか残らなかった。
形が有るものが一つ、今も残っている、ありがたくない水虫!
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