初めて名を覚えたジャズ・ピアニストは、パウエル、モンク、エヴァンスではなく、キース・ジャレット。勿論、ラジオなどから流れたピーターソンとワケありのフラナガンは知っていたけれど名だけだった。
ジャズ・ピアノが「こんなにカッコいい」とは・・・・・・、ちょっとしたカルチャー・ショックでした。でも、ロイドから離れたリーダー作3枚(VORTEX)には、あの「才気煥発」なプレイはなく、期待が大きかっただけに、自分の視界からキースの姿は消えた、否、消してしまった、という言い方が正確だろう。
暫くして、ECMから”FACING YOU”(1971年)を発表し、話題になったが自分が描くキース像とはかけ離れており、その後、ソロ・アルバム等で人気を博していたが、殆ど興味は湧かなった。
ある日、いつものレコード店で新譜コーナーの壁に飾ってあった現代アートのカヴァが目に留まり、ピーコックのリーダー作だったが直ぐ試聴させて貰い、一曲目の1/3も終わらない内に決めた。
”Vignette"、誰も足を踏み入れたことがない深い森、樹海を何かを求めるでもなく魅入られるように奥に進むキースとピーコック、そしてディジョネット、底知れぬ世界が広がる。若さに任せた才能ではなく、セルフ・コントロール出来るキースが鮮やかに自分の中に蘇った。あれから、もう10年が経っていた。
車で15分位の所に「青猫」というジャズ・カフェがある。インテリア等々、ECMの世界を表現した店造りになっていて、初めてか、二回目の時、このアルバムをリクエストし、CD中心なので「レコードのB・・・・・」と言い掛けた所で、マスターは「Trilogyですね」と、にっこり。
この作品の聴きものはやはりB面を占める”TrilogyⅠ、Ⅱ、Ⅲ”だろう。中でもⅡは、気恥ずかしいほどメロディアスなイントロから一転し、ff(フォルティッシモ)でドラマティックに打ち続けるキース、「お決まり」の展開と分かっていても殺られる。
所有盤は西独製(録音はNY)で、以前は良い録音と思っていたが、改めて聴くと、A面とB面のカッティング・レベルがちょっと違うことに気が付いた。B面が高くpの音がやや詰まり気味に聴こえる。カヴァには1977年2月録音とだけ記載されていますが、ひょっとして日が異なるのか、と調べると同じ2月2日でした。キースの呻き声の他、ハミング声?も盛大(笑)なので、マスタリングの際、減衰させるため何か手を加えたかもしれない。また、バランスがやや右に片寄っている。
なお、コメントするまでもなくピーコックのb、音色もパフォーマンスも素晴らしい。
本作はピーコック名義のためあまり知られていないが、ピアノ・トリオの最高峰と評するファンがかなり存在し、あながち荒唐無稽な話ではないと思う。6年後、このメンバーで「スタンダーズ・トリオ」を結成する礎になるとは、当時、誰も予測していなかった。
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