昨日、9月21日にNHKで放送された「プロジェクトX」をご覧になった方もおられると思いますが…。
「はやぶさ1号」。
コレ、よく帰ってきたものだと私は思います。
一応、元人工衛星のシステム屋をやっていましたが、正直…。
人工衛星って、予期せぬ回転が加わってしまうと、もうどうしようもないものなのです…。
通常、人工衛星って、自分の位置を知らせるためにビーコンという信号を出しています。
地球局では、このビーコン信号を追いかけることにより、正確な人工衛星の位置を知ることが出来るんですね!
しかし…。
通常使っているビーコン信号は、指向性が高い…。つまり、一方向にしか飛ばないので、一度その信号の向きがそれてし
まうと、なかなか元に戻せないんです…。
しかも、はやぶさ1号の場合…。
衛星本体が回転してしまったので、太陽電池パドルもほとんど使えなくなりました。
太陽電池パドルは、文字通り太陽光から電気を作る装置です。
これがほとんど機能しなくなったんだから、衛星としては死んだも同然だったのです。
でも…。
衛星が回転しながらも、一瞬太陽電池パドルが太陽の方を向き…。
尚且つ、それで出来た電気で作るビーコン信号が、これまた、たまたま地球を向く瞬間…。
まさに、偶然と偶然が重なる瞬間を見逃さないようにして…。
広い宇宙で迷子になったはやぶさ1号を見つけ出したわけですね!
更に…。
はやぶさ1号の位置を見つけたとしても…。
今度は衛星の回転を止めなければいけません!
これもまた、時たま地球に飛んでくるビーコン信号の周期などから、衛星の回転を予測し、見事に止めることが出来たん
ですね!
この一連の行動って、はっきりいって根性と執念がなければ、絶対に出来ないものだと思います!
さらに、はやぶさ1号に積まれていたイオンエンジン、コレ、それほど実績もなかったものですが…。
そんな実績が少ないこのエンジンの採用を、決めたその勇気もスゴイと思います!
テレビでも言っていましたが、確かにイオンエンジンでも使わなければ、このミッションは出来なかったとは思います
が…。
(通常の人工衛星は、ヒドラジンという推薬を、酸化剤の入った燃焼室に噴射して推力を得るという、単純な構造が使わ
れている。)
そして、そもそもなんですが…。
こんな困難なミッションに対し、よく予算を出させることが出来たと思います!
失敗しそうなものだったら、絶対に予算は降りなかったでしょうね!
ちなみに…。
大型衛星では、宇宙で迷子になりにくいようにサンセンサーと言われる、常に太陽の位置を補足するセンサーが積まれて
いるのですが、いろいろと検討した結果、はやぶさ1号にはこれを積まなかったんでしょう。
恐らく、はやぶさ1号はM(ミュー)ロケットという、小型固体燃料ロケットで打ち上げているので、おそらくこのロケ
ットに積むことが出来る小型衛星には、このセンサーを積むことが出来なかったんでしょう。
私は、はやぶさ1号が帰ってきたことは、アポロ13号クルーの生還に次ぐ、宇宙事業の偉業だと思います!