今回は、複合材を主に使った構造を持つ固定翼の量産機としては、初めて世に出たエクスタシーをご紹介します。
それまでもアルミパイプを使った固定翼機はありましたが、翼効率が悪かったためにそれほど高性能なものはありませんでした。
また、「スイフト」のように全FRP製の高性能機もありましたが、離着陸に難があり、フレキシブルのハングと同じように飛ぶ‥。という訳にはいきませんでした。
それらの問題を、カーボンを主体とした複合材で軽量化し、フレキシブルハングと同じコントロールバーを使用するというアイデアで、気軽にフレキシブルハングと同じように離着陸できるようにし、性能もフレキシブルハングよりずっと上‥。という夢のような機体へと仕上げられたのが、今回のエクスタシーです。
このエクスタシーを作ったのは、フェリックスというドイツ人で、彼はそれまで仲間と「ペガサス」という固定翼機を作っていましたが、この種の機体がビジネスになると考えてフライトデザイン社に入社。
そして、ペガサスの進化型としてこのエクスタシーを作り上げました。
今回私が名機としてこの機体を取り上げたのは、この機体が初の量産固定翼機であったからでは決してありません。
このエクスタシー。実はとてもよくまとまった安全で出来の良いグライダーだったからです。
まずこのエクスタシーは、当時のフレキシブルハングよりもずっと高性能だったことはもちろんなのですが、クセがなくまとめあげられており、サーマリング中も、フラップと風圧中心位置が良い関係にあったため、フラップの動作角に応じた、適切な滑空速度に自らが飛ぼうとする、パイロットにとって負担の少ない理想的なものを持っていました。
加えて、失速特性もとてもよく、速度を落として行ってもノーズダイブには入らずに、安全なパラシュート降下に入ってくれました。
更に、機体の構造も強度が十分あったことはもちろんですが、カーボンの表面に薄いグラスファイバーを張り付け、衝撃が加わっても白いひび割れが起こって、破壊を容易に見つけることが出来るという工夫がこらされていました。
このエクスタシーは商業的には成功し、世界中に近代固定翼機を広めるきっかけとなったのです。
その後、この機体を開発したフェリックスは、フライトデザイン社と別れてあの「ATOS」を作ることとなったのですが、その辺のいきさつについては後日少しご紹介する予定です。