貴船菊

武蔵野の夕日受けをり貴船菊



　



キンポウゲ科の多年草。

中国原産。







室町時代もしくはそれ以前に渡来し、寺院などで栽培されて

いたものが野生化したものと考えられている。







特に京都の貴船山に多く見られることから貴船菊の名があ

る。

また、秋に開花し、花が菊に似ているところから秋明菊とも

呼ばれる。







九～十月、茎の頂に菊に似た紅紫色または白色の花をつ

ける。







京都の貴船に多く見られるという貴船菊が武蔵野の夕日を

受けて咲いていた。

その姿がまた美しかった。






声明の聞えてきさう貴船菊



　

鰯雲

落暉より続いてゐたり鰯雲



　



巻積雲または高積雲のこと。

さざ波のような小さな雲片が空一面に広がる。

鰯が群れるように見えるので鰯雲、鱗のように見えるので

鱗雲、鯖の斑紋のように見えるので鯖雲などと呼ばれる。

秋の入日が白く輝いていた。

そこから鰯雲が伸びて広がっていた。






再会の便り貰ひぬ鰯雲



　

美術展覧会

乃木坂も美術の秋やダリを観て



　



「美術の秋」ともいわれる時期、あちらこちらの美術館では

展覧会などが多く催される。







東京では「二科展」「日展」「院展」などが有名である。







乃木坂の国立新美術館ではダリ展が行われていて、暇を

見つけて観に行った。

ほどよい客数で、絵に近づいてゆっくり観ることができた。






美術展あとのケーキを戴きぬ



　

紫式部

池廻る道の曲がれば実紫



　



クマツヅラ科の落葉低木。

暖地の山野に自生する。

六、七月頃、葉腋に淡紅紫色の小花を多数つけ、十～十一

月頃、球形で紫色の実を夥しく結ぶ。







紫色が特に美しいので、紫式部の名がある。

庭によく植えられるのは小式部（小紫）で、山野のものとは

実のつき方が異なる。







池を廻っていると、道を曲ったところに紫式部が生っていた。

その紫が鮮やかであった。






実むらさき一万歩にはあと少し



　

銀杏

ぽとりとは銀杏落つる音なりし



　



いちょうはイチョウ科の落葉高木。

中国原産。

雌雄異株。







晩秋に球形の果実が熟し、その後落下する。







実を包む種皮は黄褐色で悪臭がある。







実の中の白くて硬い部分が銀杏で、その中に種子があり、

焼いたり茹でたりして料理に使用される。







ぽとりという音がした。

見ると夥しいほどの銀杏が落ちて地面を覆っていた。






銀杏を拾ふ人なき径かな