名護市長選も明後日に迫っているが、ここにきて渡具知現市長をめぐる疑惑が大きく浮上してきた。
名護市の一等地にある市有地(旧消防署跡地)が、不可解な経過をたどって最終的に渡具知現市長の親族の会社に所有権移転されたという問題である。この間、東京の郷原弁護士が大きく取り上げているが、今週号の『週刊女性』も、下のような「沖縄版モリカケ事件」という記事を掲載した。
(今週号の『週刊女性』)
この問題については、1月14日には22名の名護市民が地方自治法に基づく住民監査請求に立ち上がった(詳細は1月14日の本ブログ参照)。
住民監査請求は請求があってから60日以内に結果が出される。ところが今回、名護市監査委員は、1月19日、受理もしないまま却下決定してしまったのだ。14日(金)は週末だったから、実質的には17日(月)、18日(火)のわずか2日間で処理されたことになる。
地方自治法242条では、「監査を行うにあたっては、請求人に証拠の提出及び陳述の機会を与えなければならない」とされているが、請求人の陳述の機会もなかった。
却下の理由は、「当該行為があった日から1年以内という請求期間を過ぎている」というものだった。確かに本件の土地の売買は2019年のことである。しかしその際、名護市が議会に提出した資料では、売却先が市長の親族企業だということは隠蔽されていた(詳しくは請求書参照)。請求人らは、「議会承認手続きを潜脱する目的だったことは明らかであり、違法・無効である」として本件監査請求を行ったのだ。
こうした事実は、本年1月4日、市民への公文書開示で初めて明らかになったものが多い。請求人らは弁護士とも相談して、請求書でこの点について詳しく説明し、1年以内という期間制限を超える「正当な理由」があったと主張してきた。
今回、監査委員は、「昨年3月の会議録は市議会のホームページでも公開されており、何人もその会議録から当該行為の存在及び内容を知ることができたから、『正当な理由』とは言えない」として、本件請求を受理もせずに却下してしまったのだ。
私たちは、仲井眞県政時代の県幹部の違法行為に対する住民訴訟で勝訴し、県幹部への7138万円の損害賠償命令が確定したことがある(識名トンネル違法公金支出住民訴訟)。この際も、審理の争点の一つが、監査請求の期間制限の問題だったが、それはあくまでも審理の中での争いだった。
今回、名護市監査委員も、請求を受理し、審理の中で双方に主張や証拠の提出を求めて判断するべきであった。審理が行われ、その結果としての却下であれば別だが、受理もしなかったこと、そして、実質たった2日での却下など、あまりに納得できない。
他にも疑問が多い。名護市の監査委員は、公認会計士の原田泰人氏と市会議員枠からの岸本洋平氏の2人だった。今回は16日に岸本洋平氏が市長選に立候補したため、原田氏一人の名前での監査結果となっている。しかし、14日の監査請求当時は岸本氏も監査委員だったが、意見は聞いたのか? また地方自治法第195条では、「(市町村の)監査委員は2人とする」とされているが、それに違反しないか? 何故、市会議員から新たな監査委員が選出されるまで待たなかったのか?
結局、今回の監査結果は、明後日の市長選投票日までに決着させようとした政治的なものとしか考えられない。
請求人らは弁護士とも相談し、住民訴訟に入ることも検討している。
(送付されてきた監査結果)