7月19日、那覇地裁は識名トンネル 住民訴訟で、仲井眞県政時代の県幹部らの違法行為により県に損害が生じたことを認定し、県幹ら部に7177万円の損害賠償を命じた。
今日(31日)、原告団として県に控訴を断念するよう申入れを行った。しかし、道路街路課長は、「まだ知事とは相談していないが、土木建築部としては控訴の方向で考えている」と答えた。私たちは、「せっかく県の損害が補填できるという判決が出たのに、県が控訴するということは、県の損害を県民の負担としておくということで許されない」と強く抗議。最終的には、この要請文を知事にも必ず届けるよう確認してこの日の申入れを終えた。
(原告団としての要請書を道路街路課長に手交)
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以下、知事宛の要請文を掲載する。
沖縄県知事 翁長雄志様 2017年7月31日
要 請 書
識名トンネル住民訴訟原告団
団長 内海 恵美子
日々、沖縄県民のための県政運営にご尽力いただいていることに敬意を表します。
本年7月19日、那覇地方裁判所は、仲井眞県政時代に県が施工した識名トンネル工事をめぐる住民訴訟において、知事に対し、当時の土木建築部長であった漢那政弘氏、南部土木事務所長であった赤嶺正廣氏らの違法行為による県の損害を認定し、両者に対して7178万円の損害賠償請求ないし損害賠償命令をせよとの判決を言い渡しました。
当時の責任者であった仲井眞前知事や大成建設らの共同企業体(以下、「大成JV」)らの責任を認めなかった点は納得できませんが、沖縄県が被った損害の一部を補填するために、原告らが求めた損害額の全額の賠償を命じた画期的な判決です。
今回の地裁判決は、沖縄県が被った損害を、違法行為を行った当事者らに賠償させるよう命じたものです。国に求められて返却した識名トンネル工事の国庫補助金の返還額5億8千万円は、全て県民の血税から支払われました。今回、知事が控訴すれば、それは、職員らの違法行為による損害を、県民に負担させ続けるということに他なりません。
言うまでもなく住民訴訟は、原告らの個人的利益のためではなく、地方自治体に代って住民全体の利益を守るための訴訟です。今回の地裁判決によって、県民負担とされていた県の損害の一部が回復できるのですから、私たち原告と知事は同じ立場のはずです。知事は県民全体の利益のために控訴は断念すべきです。
この識名トンネル問題は「沖縄県政始まって以来の不祥事」と言われてきました。
会計検査院が識名トンネル工事に対し、「虚偽の契約書等を作成するなどして工事の実施を偽装し、不適正な経理処理を行って国庫補助金の交付を受けた」と指摘。国は沖縄県に対して補助金5億708万7000円及びその利息7177万6779円の返還を求め、沖縄県は、県議会の反対にもかかわらず、県民の血税からこれを支払いました。
国は、補助金適正化法違反、虚偽公文書作成・行使罪に当たるとして県職員らを刑事告発。沖縄県警は、県庁等に家宅捜査に入り、県職員や大成JVの担当者ら15名を書類送検しました。
また、沖縄県監査委員は、住民らの監査請求に対して、記録の残る1984年以来初めてという勧告を出し、違法行為による県の損害を認定した上で、「県が被った損害金の補填のため、本件に関わった職員及び関係人を改めて調査の上、必要な措置を講じること」と求めました。
さらに、県議会にも調査特別委員会(百条委員会)が設けられ、「談合と指摘されてもやむを得ない著しく不適切な対応」、「損害金補填に必要な措置を講じるよう求めた監査委員の勧告を尊重するべき」との調査報告書がまとめられています。
識名トンネル問題は、問題発覚以来、すでに5年、住民訴訟提訴からも4年半が経過しています。本来なら、県は、少なくとも沖縄県監査委員の勧告が出た時点で、自ら不正の解明に取組み、勧告に従って「県が被った損害金の補填のために必要な措置」を講じるべきでした。県民負担とされてきた県の損害が補填できる地裁判決が出たのですから、いつまでも裁判を続け、仲井眞県政時代の不祥事をかばい続けることは許されません。
私たち原告団は、知事が今回の地裁判決を真摯に受け入れ、控訴することなく、県民が被った損害を速やかに補填させるよう要請します。