11月2日(木)の琉球新報が、沖縄県が辺野古埋立用石材の海上搬送のために、業者から出されていた国頭村奥の港の岸壁使用許可を出したと報道した。驚いて午後、県庁港湾課を訪ね、課長にその内容を聞いた。
業者は本年6月下旬、沖縄県が管理する奥港の岸壁使用許可申請と、港湾施設用地使用許可申請を北部土木事務所に提出した。運搬先が「辺野古沖」となっていたため、県が確認したところ、防衛局の業務で埋立用石材を海上搬送するためのものということが判明した。3組の台船と引船が岸壁を使用し、港湾施設用地を石材の仮置き場として使用するという。県は、辺野古関連ということで知事公室とも協議したが、結局、県の港湾管理条例に基づき、9月上旬にいずれも許可したという。
(2017.11.3 沖縄タイムス)
この県の許可は決して納得できない。今日の沖縄タイムスも指摘したように、翁長知事になってから辺野古新基地建設事業に関する許可や承認を与えたのはこれが初めてではないか。新基地建設事業阻止を県政の最大の柱としておきながら、個々の申請を許可していけば、結局事業はどんどん進行してしまう。知事が持つ様々な許認可の権限で、辺野古新基地を阻止することができると言われていたのではなかったか?
防衛局は、本年9月27日の環境監視等委員会で、突然、陸上搬送を予定していた護岸工事のための石材を海上搬送に変更し、K9護岸から陸揚げすると説明した。そして、翌28日には沖縄県にその説明に来ている。我々は、ちょうど28日に辺野古の問題で防衛省交渉を予定していたが、緊急質問ということでこの問題についても防衛省を追及した。
知事は10月2日、防衛局に「K9護岸を桟橋として使用して海上運搬を行う件について、実施設計及び環境保全対策等について県と事前協議をやり直すこと。また、協議が調うまでは海上運搬を実施しないこと」という行政指導の文書を出した。その後も文書照会を行っている。しかし、すでに県は9月上旬に、奥港の岸壁を石材の海上搬送のために使用することを許可していたのだから、10月になってからの行政指導は形だけのものであったと言われても仕方がない。
石材の海上搬送の問題については、10月1日のブログにも詳しく説明したので、ここでは、今回の奥港の岸壁使用許可の問題に絞ってまとめてみたい。
1.石材の海上搬送への変更は、「環境保全に関し措置を記載した図書の変更」であり、埋立承認の際の留意事項に基づく知事の承認が必要。奥港の岸壁使用申請についても、まず、その手続をさせるべきであった。
10月1日のブログでも説明したが、傾斜堤護岸用の基礎捨石等の石材の陸上搬送は、埋立承認願書に添付された「環境保全に関し措置を記載した図書」(6-1-3)に明記されているものである。海上搬送に変更するには、埋立承認の際の留意事項4に基づき、知事の承認が必要である。その手続を行わせることなく海上搬送のために岸壁の使用を許可したことは問題であった。
2.静かな奥の集落に1日、380台のダンプトラックが集中---県は許可にあたって、防衛局に環境への影響を説明させたか? 地元の了解をとるよう求めたか?
石材の海上搬送に使用する台船には、1隻にダンプトラック190台分の石材が積み込めるという。9月28日の我々の交渉で、防衛省は1日に2隻の台船を想定していると説明した。すなわち、1日にダンプトラック380台分となる。
このダンプの走行ルートは、現在も石材が陸上搬送されている国頭村の採石場から、国道58号線を通って辺戸岬周り、あるいは、与那から県道2号線を越えて安田に入り県道70号線を北上して奥港に向かうものと思われる。いずれにしろ、静かなヤンバルを大量のダンプトラックが走り回ることとなる。1日に380台というのはあくまでも平均、天候や作業状況により多い日にはさらに大量のダンプが走る。そして、港には大量の石材が積上げられ、台船への積込み作業が続く。港は集落にも近く、港への道路横には小・中学校もある。
防衛局は、第9回環境監視等委員会で、「海上搬送に切替えれば、辺野古集落付近においてダンプトラックが削減され、環境負荷が軽減する」と説明した。しかしダンプトラックはなくなるのではない。その分のダンプトラックが集中するヤンバル・奥の集落付近の環境への影響については全く触れていない。
沖縄県は、岸壁の使用許可を出す前に、防衛局に対して、環境への影響調査を求めるべきであった。また、この問題については、当初の「環境保全に関し措置を記載した図書」には記載されておらず、その変更であるから留意事項に基づき知事の承認が必要である。さらに、国頭村や奥の区民らの了解は得られているのか?