「魂魄の塔」横の熊野鉱山で7月2日、2基の重機により土地の形質変更が始まった。業者の計画では、鉱山の開発予定地から北の農道に土砂搬出のための道路を造成し、シーガーアブ周辺にフェンスを設置するというものである。措置命令では事業開始前に県との協議を行うよう指示しているが、協議のないまま形質変更を行ったことは措置命令に違反する。
さらに、貴重な戦跡であるシーガーアブ(注)が壊されるおそれがある。シーガーアブの2つの壕は地下で繋がっている。その上で重機を動かし、土砂搬送のためのダンプ道路とすればアブは破壊してしまうおそれがある。シーガーアブ内部には戦没者と思われる遺骨も確認されており、周辺の緑地帯にも遺骨が残る可能性が高い。「遺骨の確認」をしないままの事業着手も措置命令に違反する。
そのため、具志堅隆松さんと宗教者グループは、昨日(7月6日)、県に質問書を提出した。知事との早急な面談を求めている。
(注)シーガーアブの貴重さについては、糸満市議会で採択された意見書も触れている(本年3月22日)。そこでは下のように指摘している。
「さきの大戦で甚大な犠牲が出た糸満市米須の採掘に対して同開発区域には、戦時中に避難場所として住民が身を潜めた自然壕が数か所あり、その中で命を永らえた地元住民も開発に対し懸念している。また、開発区域には琉球王府時代から地域住民が畏敬の念をもって接するシーガーアブと呼ばれる自然壕もあり歴史的事象を語る貴重な場所である。」
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沖縄県知事 玉城デニー様 2021年7月5日
質 問 書
遺骨収集ボランティア「ガマフヤー」代表 具志堅 隆松
島ぐるみ宗教者の会 谷 大二
日頃の県政運営に心からの敬意を表します。
知事は本年5月14日、「魂魄の塔」横の熊野鉱山開発計画に対して自然公園法に基づく措置命令を出されました。それ以来、現地での動きはありませんでしたが、本年7月2日に突然、重機による土地の形質変更が始まりました。
糸満市の担当課で確認したところ、糸満市は事業者からのシーガーアブ周辺の森林伐採届に対して、6月下旬、確認通知を出したということでした。この伐採届では、「壕への転落防止のためフェンスを設置する」とされており、風景づくり条例に基づく行為届出書でも、シーガーアブ周辺に高さ1.8m、延長85mものフェンスを設置する計画となっています。このフェンスの一部は開閉式となっており、北側の農道まで土砂搬出のための進入道路が造成されます。
しかし今回の事業着手は、知事の措置命令に定められた事前の協議を行っていないだけではなく、シーガーアブ内部や周辺の緑地での遺骨の確認も行われていません。
この問題について、下記のとおり質問しますので、早急に面談の場を持っていただくよう要請します。
記
1.熊野鉱山で7月2日に始まった作業は、措置命令の「遺骨の確認」、「掘採開始前に県に報告し、協議すること」に抵触する。いったん作業を中止させ、県と協議を行うよう指示すべきではないか?
2.今回、事業者はシーガーアブ周辺の「米須1470」、「米須1482」の土地(計852㎡)で伐採・整地、フェンス設置を実施しようとしている。事業者が県に提出した自然公園法に基づく「掘採行為届出書」には、このようなフェンス設置は記載されていたか?
3.事業者は「シーガーアブは壊さない」としているようだが、シーガーアブの2つの壕は地下で繋がっており、その上で重機による作業を行い、さらに、ダンプの走行が始まれば地下の壕は破壊される。また、壕の近くでの作業により壕が破壊されるおそれもある。
シーガーアブ内部では遺骨も確認されており、周辺の緑地帯にも遺骨が残されている可能性が高いが、これらの遺骨の収集もできなくなってしまう。
県として、早急にシーガーアブとその周辺で遺骨等の調査を行うべきではないか?
また、遺骨収集が終るまでは、周辺の形質変更を行わないよう求めるべきである。
(以上)