もう30年前になるか、学生時代に同人誌を作ろうという
呼びかけがあって参加したことがある。
が、例によって中学時代の卓球クラブ同様、長続きはしなかった。
その集まりの中で、気に入りの作品の書評をしようではないか、
ということで挙げられたのが森鴎外の「じいさんばあさん」。
私は読んだ記憶がないので、そういうことを決めた段階で
集まりから離れたのかも知れない。
ただ、その作品名は長いときを隔てて今もしっかりと
頭の中に残っている。
読んでみた。
時代は移って、ネット時代である。
青空文庫で「ぢいさんばあさん」森鴎外を読むことができる。
短い掌編ともいえる作品である。
掌編という言葉もそのとき知った。川端康成に「掌の小説」というのも
あるらしい。(未確認)
------------------------------------------
出張の折、自転車販売店の店先を通り過ぎた。
中古と思えるのだが、その走りの良さそうなカラーリング、姿かたちが
彼の心を射抜いた。
値札を見ると○○万円とある。ちょと高い。でも、どうしても手に
入れたい。長の出張という事もあり、そこそこ不便を感じないようにと
用意はしてあるが、それをもってしても足りない。
店の主人に掛け合い、もう少し負けられないかと交渉する。
こちらの用立てできるぎりぎりのところで、予約したからと主人に
何度も何度も念押しをし、取って返しお金を気軽に融通して
くれるという同僚の某に寸借を願う。
手に入れた自転車は、確かに逸品と思えるものであった。
早速に手入れをすると新品のように輝いた。
自転車仲間にご披露すべく集まりを設け、仲間といつもの集合場所で
披露する事にした。
集った仲間は口々に良い自転車を手に入れたと褒め称えた。
そこに、寸借した某が通りかかり、私が貸した金で手に入れたのに
その披露に呼ばないとは、と罵詈雑言を浴びせ掛けた。
お金を借りた恩ある人とは言え、こうも口汚く罵るとは、と
怒り心頭に達し、
目の覚めるような走りっぷりの愛車にまたがると、「おのれぇ~っ!」
と大声で叫びながら某を追いかけ、そして、自転車で某をひっかけ
怪我を負わせた。
まだ、怒りが収まらぬと再び某に自転車を向けるのを仲間が
ハンドルを押さえ、押しとどめた。
某は打ち所が悪かったのか2,3日して亡くなった。
事の是非を問われ、永の遠所へと異動となった。
30年余の後ようやく許され戻ってきたのを、気丈に留守を守っていた
妻と再会し、弟の離れで暮らす事となった。
人生の半分にも及ぶ長い期間、志操堅固に夫の帰りを待ち続けた
妻なる人への賞賛の声が世に広くあがったのは言うまでもない。
不始末を仕出かした夫に対してかくも自らの人生を待つことに
捧げられる妻というのはあの時代においても鴎外の心を揺さぶるほど
稀有のことだったのだろう。
これは、「幸せの黄色いハンカチ」だ。
今なら即刻○○だろう。
呼びかけがあって参加したことがある。
が、例によって中学時代の卓球クラブ同様、長続きはしなかった。
その集まりの中で、気に入りの作品の書評をしようではないか、
ということで挙げられたのが森鴎外の「じいさんばあさん」。
私は読んだ記憶がないので、そういうことを決めた段階で
集まりから離れたのかも知れない。
ただ、その作品名は長いときを隔てて今もしっかりと
頭の中に残っている。
読んでみた。
時代は移って、ネット時代である。
青空文庫で「ぢいさんばあさん」森鴎外を読むことができる。
短い掌編ともいえる作品である。
掌編という言葉もそのとき知った。川端康成に「掌の小説」というのも
あるらしい。(未確認)
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出張の折、自転車販売店の店先を通り過ぎた。
中古と思えるのだが、その走りの良さそうなカラーリング、姿かたちが
彼の心を射抜いた。
値札を見ると○○万円とある。ちょと高い。でも、どうしても手に
入れたい。長の出張という事もあり、そこそこ不便を感じないようにと
用意はしてあるが、それをもってしても足りない。
店の主人に掛け合い、もう少し負けられないかと交渉する。
こちらの用立てできるぎりぎりのところで、予約したからと主人に
何度も何度も念押しをし、取って返しお金を気軽に融通して
くれるという同僚の某に寸借を願う。
手に入れた自転車は、確かに逸品と思えるものであった。
早速に手入れをすると新品のように輝いた。
自転車仲間にご披露すべく集まりを設け、仲間といつもの集合場所で
披露する事にした。
集った仲間は口々に良い自転車を手に入れたと褒め称えた。
そこに、寸借した某が通りかかり、私が貸した金で手に入れたのに
その披露に呼ばないとは、と罵詈雑言を浴びせ掛けた。
お金を借りた恩ある人とは言え、こうも口汚く罵るとは、と
怒り心頭に達し、
目の覚めるような走りっぷりの愛車にまたがると、「おのれぇ~っ!」
と大声で叫びながら某を追いかけ、そして、自転車で某をひっかけ
怪我を負わせた。
まだ、怒りが収まらぬと再び某に自転車を向けるのを仲間が
ハンドルを押さえ、押しとどめた。
某は打ち所が悪かったのか2,3日して亡くなった。
事の是非を問われ、永の遠所へと異動となった。
30年余の後ようやく許され戻ってきたのを、気丈に留守を守っていた
妻と再会し、弟の離れで暮らす事となった。
人生の半分にも及ぶ長い期間、志操堅固に夫の帰りを待ち続けた
妻なる人への賞賛の声が世に広くあがったのは言うまでもない。
不始末を仕出かした夫に対してかくも自らの人生を待つことに
捧げられる妻というのはあの時代においても鴎外の心を揺さぶるほど
稀有のことだったのだろう。
これは、「幸せの黄色いハンカチ」だ。
今なら即刻○○だろう。
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