学問空間

「『増鏡』を読む会」、第9回は2月22日(土)、テーマは「上西門院とその周辺」です。

神の声?仏の声?

2008-01-16 | その他
投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2008年 1月16日(水)23時03分5秒

久しぶりに『古今著聞集』を通読してみたのですが、

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巻第一 神祇「八幡に通夜の夜、夢に北条義時は武内宿禰の後身と知ること」

誰と聞き侍りしやらん、名をば忘れにけり。その人、八幡に参りて通夜したりける夢に、御殿の御戸をおしひらかせ給ひて、誠にけだかき御声にて、「武内」と召しければ、・・・
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この「誠にけだかき御こゑ」とは誰の声なんですかね。
八幡の本殿に祭られているのは誉田別尊(応神天皇)、比※大神[※口+羊]、息長帯比賣命(神功皇后)ですから、一応、この三者が候補者になりますが、実はこの直前の段に、

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「興福寺の僧八幡に参籠し、夢に春日・八幡両大明神の託宣を得たる事」

興福寺の僧の、いまだ僧綱などにはのぼらざりけるが、学生にては侍りけれども、いと貧しかりければ、春日社に参りて申しけれども、そのしるしもなかりければ、寺のまじらひも思ひたえて、八幡に詣でて七日こもりて祈念しけるに、或る夜夢に、ゆゆしげなる客人の参り給へりけるに、大菩薩御対面あるよしなり。客人、「某と申す僧やこもりて候」と申し給ひければ、「さること候ふ」と答へ申させ給ひけり。・・・・
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とあって、こちらでは八幡大菩薩の声となってますね。
中世人の感覚だと義時化身譚の方も八幡大菩薩と考えるのが素直かもしれませんが、しかし武内宿禰と会話している訳ですから、どちらかといえば神話的人物の方がふさわしいような感じもする、と。
そして、女性の声ならばそれと記述するのが自然のようにも思えるし、御本殿中央にいるのは応神天皇だから、ま、応神天皇なのかな、とは思うのですが、他方、中世の説話・伝承の世界では神功皇后の存在感は相当大きいので、神功皇后であってもおかしくはないかな、と。
結論は、結局のところよくわからん、と。
(引用は新潮日本古典集成「古今著聞集」上より)

参考:石清水八幡宮御本殿
http://www.iwashimizu.or.jp/5/j/8/index.htm
コメント
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