2017横浜市長選の課題と見通し~仙台市長選の野党勝利に続け2017横浜市長選~
櫻井 智志
1 概要
林文子市長は、民進党(当時は民主党)の推す候補として、横浜市長選の最初の当選を果たした。私は前回の市長選の時に林文子さんのホームページを見て、なかなかのつわものと感じた。きめこまかく広く見渡し、ひとつひとつに念が入っている。
今回、横浜市長選は自民公明が推す現職の林文子(現在2期目)、元衆議院議員・長島一由氏と元民進党横浜市議・伊藤ひろたか氏の両新人候補による3名での選挙戦。この選挙は、選挙権が20歳から18歳に引き下げられてからのものであり、未成年の有権者の投票率と投票動向も選挙戦の課題のひとつとなる。
最近までは林候補の圧勝と思われてきた。しかし国政安倍政権のあまりに傲慢で強引な滅茶苦茶な実態が、支持率急降下となり、昨日の仙台市長選では、自公候補148,993票に対して民進党を中心とする野党統一候補が165,452票を獲得し、一万七千票もの差で惨敗。にわかに横浜市長選が、反現職が分裂していても、林候補安泰と安閑としていられなくなった。
ただ、今回早くから横浜市の市の財界、医師会など広範な地元団体が林支持を掲げ続けてきた。さらに公明党・創価学会の動員力や市内のエリート会社員層、連合の締め付けのある大労組が、自民党シフトしていることを冷静に認識しておくことが必要だ。
繁華街で宣伝カー壇上で野党幹部と知識人が同乗して、大勢の市民に手を振っても、市民と立憲野党の共闘が機動的に草の根でどれだけ市民の支持を集める地道な蓄積が功を奏することがあってはじめて「市民と野党の共同」と呼びうる。
黒岩祐治神奈川県知事は菅義偉官房長官の直属に近い。菅氏は横浜市内選出の代議士。また県知事をつとめて現在国会議員の松沢成文氏は、福田川崎市長の後見人。横浜市からは市長をつとめた中田宏氏や横浜市内を選挙区とする江田憲司氏など、自民党や民進党の有力者が目白押し。水面下のそれら実力者の動きも、横浜市長選に一定の効果的な影響力を及ぼしてきた。
なお、民進党について東京新聞. (2017年6月13日)で【横浜市長選 民進党は自主投票へ 林市長と伊藤市議のどちらも推薦せず】と詳報している。
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横浜市長選 民進党は自主投票へ 林市長と伊藤市議のどちらも推薦せず
2017年6月13日
七月十六日告示の横浜市長選で、民進党県連は十一日、常任幹事会を開き、県連に推薦依頼を出していた林文子市長(71)と横浜市議の伊藤大貴(ひろたか)さん(39)のどちらも推薦せず、自主投票とすることを決めた。ただ、伊藤市議はまだ出馬の判断を保留しており、流動的な部分がある。
県連の森敏明幹事長は「党は割らない。どちらを応援しても選挙後はノーサイドだ」と話した。伊藤市議は取材に「なるべく早く出馬の可否を判断したい」と回答。林市長は「議論を重ねた上での結論と承知している」とコメントした。
伊藤市議は出馬する場合、離党して無所属となり、幅広く支援を募る。市内への誘致が取り沙汰されているカジノ反対を訴える見込みで、共産党は独自候補擁立を見送り、実質的に支援する検討に入った。
共産市議は「伊藤市議はカジノ反対に加え、(横浜市立中学で未実施の)中学校給食実現に前向きだ」と評価。市民の市長をつくる会や市民連合横浜☆ミナカナなど複数の市民団体が伊藤市議を支援する方針。関係者は「国政と同じで野党共闘を目指す」と話す。
市長選では、元衆院議員の長島一由さん(50)がカジノ反対を掲げ、既に出馬表明している。主張が重なる部分があるため、伊藤市議を推す関係者は「候補を一本化できるかが鍵。長島さんと調整したい」と話す。ただ、長島さんは「まだ伊藤市議側から相談を受けていないし、出馬を取りやめる気はない」とする。
一方、林市長は十二日夜、自民党市連大会に推薦候補として登壇。「何としても(市議会の)議場に戻らなければならないという強い決意でいる。決して油断はしない。必ず勝つ」と話した。 (志村彰太).
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2 立候補者
林文子候補:はやし ふみこ
71歳 無所属(自民党・公明党推薦) 現横浜市長
元東京日産自動車販売株式会社代表取締役社長ほか
長島一由候補:ながしま かずよし
50歳 無所属「現在は無党籍]新 映画監督
元衆議院議員[衆議院議員時代の党派は民主党(当時)]
元逗子市長(第14・15・16代)
伊藤大貴候補:いとう ひろたか
39歳 無所属[(市民団体「市民の市長をつくる会」支援)
(江田憲司ら民進党の一部議員らが支援 日本共産党・自由党が自主支援)新 前民進党横浜市会議員(緑区)
3 戦後 公選制下の横浜市長
14 14 石河京市 1947年
15 15 平沼亮三 1951年
16 在職中死去
17 (13) 半井清 1959年 1941年も市長歴
18 16 飛鳥田一雄 1963年
19 1967年
20 1971年
21 1975年
22 17 細郷道一 1978年
23 1982年
24 在職中死去
25 18 高秀秀信 1990年
26 1994年
27 1998年
28 19 中田宏 2002年
29 任期途中退職
30 20 林文子 2009年
31 2013年現職
4 国会議員-横浜市域
国会議員衆議院小選挙区選出
選挙区 議員名 所属政党
神奈川1区(中区・磯子区・金沢区)松本純 自由民主党
神奈川2区(西区・南区・港南区) 菅義偉 自由民主党
神奈川3区(鶴見区・神奈川区) 小此木八郎自由民主党
神奈川4区(栄区・鎌倉市・逗子市・葉山町)浅尾慶一郎無所属
神奈川5区(戸塚区・泉区・瀬谷区) 坂井学自由民主党
神奈川6区(保土ケ谷区・旭区) 上田勇 公明党
神奈川7区(港北区・都筑区) 鈴木馨祐自由民主党
神奈川8区(緑区・青葉区) 江田憲司民進党
比例代表選出(カッコ内は所属政党と重複立候補した小選挙区)
篠原豪 (民進党、 神奈川1区)
山本朋広 (自由民主党、神奈川4区)
水戸将史 (民進党、 神奈川5区)
青柳陽一郎(民進党、 神奈川6区)
福田峰之 (自由民主党、 神奈川8区)
5 まとめ
国内政令指定都市でも最多の人口を擁する横浜市の市政は、国政にも影響をおよぼす。ただ、独自の地域カラーがあり、県内で社会党の飛鳥田一雄氏が市長となったことはあるが、東京都や川崎市などのような「革新統一自治体」の経験はない。いま民進党が林文子候補にも伊藤ひろたか候補にも、関連性や影響力をもちつつ、一応は等距離を保っている。それだけ横浜市の民進党の動向は無視しがたい。
市長選の要諦は
①市民運動団体がどれだけ無党派層、若者層の政治意識にアプローチしうるか
②政党が野党共闘しつつそれぞれの政党もフルに稼働するか
③特に今週一週間の国政の動向が横浜市長選に直接的に影響する
④林文子候補を支える陣営のウルトラC作戦に対抗して、伊藤ひろたか候補を斬新でユニークな作戦を駆使できるか
櫻井 智志
1 概要
林文子市長は、民進党(当時は民主党)の推す候補として、横浜市長選の最初の当選を果たした。私は前回の市長選の時に林文子さんのホームページを見て、なかなかのつわものと感じた。きめこまかく広く見渡し、ひとつひとつに念が入っている。
今回、横浜市長選は自民公明が推す現職の林文子(現在2期目)、元衆議院議員・長島一由氏と元民進党横浜市議・伊藤ひろたか氏の両新人候補による3名での選挙戦。この選挙は、選挙権が20歳から18歳に引き下げられてからのものであり、未成年の有権者の投票率と投票動向も選挙戦の課題のひとつとなる。
最近までは林候補の圧勝と思われてきた。しかし国政安倍政権のあまりに傲慢で強引な滅茶苦茶な実態が、支持率急降下となり、昨日の仙台市長選では、自公候補148,993票に対して民進党を中心とする野党統一候補が165,452票を獲得し、一万七千票もの差で惨敗。にわかに横浜市長選が、反現職が分裂していても、林候補安泰と安閑としていられなくなった。
ただ、今回早くから横浜市の市の財界、医師会など広範な地元団体が林支持を掲げ続けてきた。さらに公明党・創価学会の動員力や市内のエリート会社員層、連合の締め付けのある大労組が、自民党シフトしていることを冷静に認識しておくことが必要だ。
繁華街で宣伝カー壇上で野党幹部と知識人が同乗して、大勢の市民に手を振っても、市民と立憲野党の共闘が機動的に草の根でどれだけ市民の支持を集める地道な蓄積が功を奏することがあってはじめて「市民と野党の共同」と呼びうる。
黒岩祐治神奈川県知事は菅義偉官房長官の直属に近い。菅氏は横浜市内選出の代議士。また県知事をつとめて現在国会議員の松沢成文氏は、福田川崎市長の後見人。横浜市からは市長をつとめた中田宏氏や横浜市内を選挙区とする江田憲司氏など、自民党や民進党の有力者が目白押し。水面下のそれら実力者の動きも、横浜市長選に一定の効果的な影響力を及ぼしてきた。
なお、民進党について東京新聞. (2017年6月13日)で【横浜市長選 民進党は自主投票へ 林市長と伊藤市議のどちらも推薦せず】と詳報している。
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横浜市長選 民進党は自主投票へ 林市長と伊藤市議のどちらも推薦せず
2017年6月13日
七月十六日告示の横浜市長選で、民進党県連は十一日、常任幹事会を開き、県連に推薦依頼を出していた林文子市長(71)と横浜市議の伊藤大貴(ひろたか)さん(39)のどちらも推薦せず、自主投票とすることを決めた。ただ、伊藤市議はまだ出馬の判断を保留しており、流動的な部分がある。
県連の森敏明幹事長は「党は割らない。どちらを応援しても選挙後はノーサイドだ」と話した。伊藤市議は取材に「なるべく早く出馬の可否を判断したい」と回答。林市長は「議論を重ねた上での結論と承知している」とコメントした。
伊藤市議は出馬する場合、離党して無所属となり、幅広く支援を募る。市内への誘致が取り沙汰されているカジノ反対を訴える見込みで、共産党は独自候補擁立を見送り、実質的に支援する検討に入った。
共産市議は「伊藤市議はカジノ反対に加え、(横浜市立中学で未実施の)中学校給食実現に前向きだ」と評価。市民の市長をつくる会や市民連合横浜☆ミナカナなど複数の市民団体が伊藤市議を支援する方針。関係者は「国政と同じで野党共闘を目指す」と話す。
市長選では、元衆院議員の長島一由さん(50)がカジノ反対を掲げ、既に出馬表明している。主張が重なる部分があるため、伊藤市議を推す関係者は「候補を一本化できるかが鍵。長島さんと調整したい」と話す。ただ、長島さんは「まだ伊藤市議側から相談を受けていないし、出馬を取りやめる気はない」とする。
一方、林市長は十二日夜、自民党市連大会に推薦候補として登壇。「何としても(市議会の)議場に戻らなければならないという強い決意でいる。決して油断はしない。必ず勝つ」と話した。 (志村彰太).
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2 立候補者
林文子候補:はやし ふみこ
71歳 無所属(自民党・公明党推薦) 現横浜市長
元東京日産自動車販売株式会社代表取締役社長ほか
長島一由候補:ながしま かずよし
50歳 無所属「現在は無党籍]新 映画監督
元衆議院議員[衆議院議員時代の党派は民主党(当時)]
元逗子市長(第14・15・16代)
伊藤大貴候補:いとう ひろたか
39歳 無所属[(市民団体「市民の市長をつくる会」支援)
(江田憲司ら民進党の一部議員らが支援 日本共産党・自由党が自主支援)新 前民進党横浜市会議員(緑区)
3 戦後 公選制下の横浜市長
14 14 石河京市 1947年
15 15 平沼亮三 1951年
16 在職中死去
17 (13) 半井清 1959年 1941年も市長歴
18 16 飛鳥田一雄 1963年
19 1967年
20 1971年
21 1975年
22 17 細郷道一 1978年
23 1982年
24 在職中死去
25 18 高秀秀信 1990年
26 1994年
27 1998年
28 19 中田宏 2002年
29 任期途中退職
30 20 林文子 2009年
31 2013年現職
4 国会議員-横浜市域
国会議員衆議院小選挙区選出
選挙区 議員名 所属政党
神奈川1区(中区・磯子区・金沢区)松本純 自由民主党
神奈川2区(西区・南区・港南区) 菅義偉 自由民主党
神奈川3区(鶴見区・神奈川区) 小此木八郎自由民主党
神奈川4区(栄区・鎌倉市・逗子市・葉山町)浅尾慶一郎無所属
神奈川5区(戸塚区・泉区・瀬谷区) 坂井学自由民主党
神奈川6区(保土ケ谷区・旭区) 上田勇 公明党
神奈川7区(港北区・都筑区) 鈴木馨祐自由民主党
神奈川8区(緑区・青葉区) 江田憲司民進党
比例代表選出(カッコ内は所属政党と重複立候補した小選挙区)
篠原豪 (民進党、 神奈川1区)
山本朋広 (自由民主党、神奈川4区)
水戸将史 (民進党、 神奈川5区)
青柳陽一郎(民進党、 神奈川6区)
福田峰之 (自由民主党、 神奈川8区)
5 まとめ
国内政令指定都市でも最多の人口を擁する横浜市の市政は、国政にも影響をおよぼす。ただ、独自の地域カラーがあり、県内で社会党の飛鳥田一雄氏が市長となったことはあるが、東京都や川崎市などのような「革新統一自治体」の経験はない。いま民進党が林文子候補にも伊藤ひろたか候補にも、関連性や影響力をもちつつ、一応は等距離を保っている。それだけ横浜市の民進党の動向は無視しがたい。
市長選の要諦は
①市民運動団体がどれだけ無党派層、若者層の政治意識にアプローチしうるか
②政党が野党共闘しつつそれぞれの政党もフルに稼働するか
③特に今週一週間の国政の動向が横浜市長選に直接的に影響する
④林文子候補を支える陣営のウルトラC作戦に対抗して、伊藤ひろたか候補を斬新でユニークな作戦を駆使できるか