【現代思想とジャーナリスト精神】

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持続する意志~2018「平和のためのコンサート」第19回~

2018-05-18 06:30:07 | 政治・文化・社会評論
持続する意志~2018「平和のためのコンサート」第19回~


                   櫻井智志
 
 すでに紹介させていただいた、第19回平和のためのコンサートが6月2日(新宿区牛込箪笥区民ホール)が迫っている。
 第一部講演を「時代小説と戦争」と題して高橋敏夫早稲田大学教授が行い、第二部コンサートを~平和への意の祈り~をテーマとして、①語りと音楽による「おこりじぞう」金野実加枝さん、児玉さや佳さん②信田京子さんのバイオリン(violin)独奏、ピアノ末廣和史さん③アンンブル・ローゼ(ソプラノ:斎藤みどりさん・高橋順子さん・渡辺裕子さん メゾソプラノ:池田孝子さん・芝田貞子さん・嶋田美佐子さん・高崎邦子さん)の重唱 三つの構成で行う。
 
 19年間継続されているこのコンサートは、2001年に胆管ガンでご逝去された哲学者芝田進午さんとの邂逅の場でもある。ステージ右奥に笑顔の遺影が、会場を見守っている。このコンサートの主催者芝田貞子さんは、芝田進午さんとご夫婦で、「ノーモア・ヒロシマ・コンサート」1980年~1995年(被爆50周年東京)を東京と広島で開催し続けた。
 今は芝田貞子さんが、この「平和のためのコンサート」を継承し続けている。会場で、私たちは芝田さんのご家族、ご親友のボランティアを拝見する。芝田進午先生の法政大学・広島大学・岡山女子短期大学・聖泉短期大学・社会科学研究セミナーの教え子の皆さん。ステ-ジの黒子役に徹している方々と毎回コンサートに足を運び会場からコンサートを支えている皆さんがいる。芝田進午さんがすべてをかけて生存権、環境権などの市民が生存し生きるための権利を自ら*⓵原告団団長として闘った「国立感染症研究所、改称前の国立予防衛生研究所」との*②裁判闘争をともに戦った予研=感染研裁判原告の会・感染研裁判弁護団の皆さんがたである。
 
*1
芝田進午編 『生命を守る方法 バイオ時代の人間の権利』晩聲社 核時代43年(1988年)
予研=感染研裁判裁判原告の会・予研=感染研裁判弁護団編著『バイオハザード裁判 予研=感染研実験差し止めの法理』緑風出版 2001年1月31日初版
国立感染症研究所の安全性を考える会 編著『国立感染研は安全か』緑風出版 2010年3月4日初版
 
*2
 この実験差し止めの裁判は、先だって早大や医療施設・老人施設・住宅地に住民の意見も無視するかたちで強行移転に反対する住民運動である。アメリカなど国際社会では住民に被害が及ばない立地に徹している。また、感染菌の人体に強い被害を及ぼすことをしだいに重視し、P3施設は外部汚染の皆無を期してとくに研究所外部に漏れだす万一の安全対策上住宅地に立地されている国はない。P4施設はさらに危険な影響甚大なため設置そのものを各国では認めていない。強度の被害の細菌は発生国で封じ込め被害の最少化に徹している。研究のために国内に持ち込むレベルの安全さの担保はなく、細菌やウイルスに対する医療行政は、国際社会の常識が確立されている。
 芝田進午氏らの住民運動で、予研=感染研が戦時中の石井731部隊の医師が予研のスタッフとなっていたこともあきらかにされた。
 
 芝田進午先生の『実践的唯物論への道 人類生存の哲学を求めて』(青木書店2001年9月25日)は、三階徹氏・平川俊彦氏・平田哲男氏の「聞き取りと録音テープ起こしに芝田氏が手を入れて成ったものである」と編者あとがきにある。その略年譜には、「2001年3月14日死去。3月27日、東京地裁は国立感染研実験差し止め請求棄却の不当判決。原告団はただちに上告。」とある。著作出版、芝田進午氏死去、東京地裁判決の日付にご留意されたい。
 
 芝田貞子さんを中心に主催されてきた「平和のためのコンサート」とは、*「ノーモア・ヒロシマ・コンサート」の思想を体現化して持続されている。
 
*芝田進午著『現代の課題Ⅰ 核兵器廃絶のために』青木書店1978年4月20日初版
芝田進午著『核時代Ⅰ 思想と展望』青木書店1987年6月15日初版
芝田進午著『核時代Ⅱ 文化と芸術』青木書店1987年6月15日初版
 
 こういった背景をふまえると、「平和のためのコンサート」には3つの意義がわかる。
⓵ 核兵器や原子力発電所による生命の危機の存在を広く国民が知ること
② 生物兵器や細菌を使った実験の及ぼす危険性は、行政側研究機関の側が敢えて知らせてはいない。生物災害を市民の側が熟知しないと危険発生後は取り返しがつかない。
③ 芝田進午氏の問題把握・研究が提起した【人類生存、国民生存の「生きる権利」】を改めて想起し、希望の原点を見出したい。
 
*コンサートチケットなどのお問い合わせ TEL&FAX  03-3209-9666芝田様方