【現代思想とジャーナリスト精神】

価値判断の基軸は自らが判断し思考し実践することの主体であるか否かであると考えております。

【日本歳時記2019.5.4】~TBS報道特集~ 櫻井 智志

2019-05-04 21:23:54 | 政治・文化・社会評論
  序:現代天皇制論

 「天皇」及び「天皇制」については、立憲主義・民主主義の立場に立つ社会科学者から、幻想をもって天皇制賛美に立つことを戒める学問的見解が出ている。憲法学の清水雅彦氏や法社会学・憲法論の渡辺治氏が私のよく知る学者である。
国民主権といかなる君主制の復活も戦前・戦時中の「天皇制軍国主義」による国内の言論弾圧とアジア諸国への侵略戦争による外国人の多数の虐殺、自国民の徴兵による戦地での死亡など不幸な過去の教訓から日本国民は、学ぶ責務がある。



私は上皇ご夫妻と天皇ご夫妻の人格に好感を持つ。だが、敗戦までの日本国民が国粋的天皇制の枠組みで明治から1945年まで爆走してきた歴史を想起する。憲法を大切にされてきた上皇ご夫妻の善意と権威を、独裁権力に恣意的に悪用する一部勢力がもたらす悲劇の再現を危惧する。



明治時代に中央集権国家体制を完成させるために、明治天皇を中枢に据えて天皇制国家が作られた。大正天皇は病気がちと言われているが、リベラリストとしての評価も歴史家の間にはある。昭和天皇は相矛盾する激変期を生きた。



『報道特集』が発掘した代替わりの極秘文書は、日本現代史が様々な力学のせめぎ合いを水面下に秘めていたことを教えてくれる。昭和天皇と軍部の力関係も予想を超えている。歴史の同時期に国民が知ることの限界。沖縄返還時の日米密約を暴いた西山太吉記者の慧眼を思う。報道の意義だ。




原武史氏は、外交官としての実績ある新皇后とイギリスに留学し環境・水問題に専門的研究のある新天皇の世界に開かれた取り組みに期待する。保阪正康氏は天皇夫婦と国民の調和的関係がよい結果につながると発言された。私もお二人のご見解に共感をもつ。


まとめ

 現代日本においては、天皇ご夫妻や天皇家自身が緊急の問題ではない。天皇・天皇家の意思や見解を、悪用して政治的力学の場に引き出して、「天皇制」の反動的復古をはかる謀略勢力である。具体的に言えば、日本会議などをもとに急速な憲法改定により天皇制軍国主義国家体制を急ぐ安倍晋三自民党総裁とその支持グループが該当する。  ―了―