http://digital.asahi.com/articles/ASH4Q533SH4QUTIL032.html?iref=comkiji_txt_end_s_kjid_ASH4Q533SH4QUTIL032 杉原里美2015年5月13日05時14分
塾講師や家庭教師として働く大学生の間で、休めなかったり、残業代が出なかったりする「教育ブラックバイト」の被害が目立つ。業者によっては違法な契約を結ばせているところもあるという。学生には、受験勉強でなじみの深い世界だが、注意が必要だ。
「1コマ80分1600円。ということは時給で1200円か」。神奈川県の私立大3年の男子学生(20)は昨夏、大学のホームページからリンクしているアルバイト紹介サイトで、塾講師の募集を見つけた。
50校以上を展開する個別指導塾。割高な時給の魅力に加え、大勢の生徒を相手にするより、1人のほうが気が楽だとも思った。でも、働き始めてほどなく、「思ったほど楽ではない」と気づいた。
指導時間の20分前の午後6時半には出勤しなければならず、指導の後は、学習カルテの記入など雑務に追われた。2コマ連続で指導して、午後9時半に授業が終わるのに、塾を出るのは午後10時半になることも。冬期講習がある冬休みは直前にシフトを決められ、自分の都合で休めない。試験勉強もできなかった。
やめようと思ったものの、契約では後任が決まるまで勤務しなければ、損害賠償を請求する――などと決められていた。
ふと、高校で習った「最低賃金」という仕組みを思い出した。調べてみると、神奈川県の最低賃金は時給887円。実際の労働時間で計算すると、700円台でしかなかった。1人でも加入できる労働組合「ブラックバイトユニオン」に相談し、現在、団体交渉の準備を進めている。
都内の私立大に通う別の男子学生(20)は、家庭教師のアルバイトで怖い思いをした。昨年8月、インターネットで見つけた家庭教師派遣の会社に登録。高校3年生の指導を紹介され、時給1800円で週2回90分の指導を受け持った。
ある日、アルバイトの日に寝坊すると、数日後、会社から電話があった。「ふざけんな。お前のせいで、会社に損害が出た。被害額の60万円を支払え。訴えるぞ」と脅された。
この学生はネットで検索してたどりついた組合「首都圏青年ユニオン」に相談。この会社は、別の学生にも同じ額の損害賠償を請求していたことが分かった。会社から呼び出された際、ユニオンのスタッフに同行してもらったところ、会社は請求を撤回した。
「最初は恫喝(どうかつ)におびえたが、冷静に考えると、おかしなことが多かった。勇気を出して相談して良かった」と男子学生はいう。
■シフト確認、労働時間記録を
大学教授や弁護士などでつくる「ブラック企業対策プロジェクト」が4月末に発表した全国調査によると、賃金未払いを経験した学生の割合は、塾や家庭教師が最多だった。経験者276人のうち、「準備や片付けの時間に賃金が払われなかった」と答えたのは約3割。約2割は「残業代が時間通り支払われなかった」と答えた。
学生アルバイトの定番ともいえる教育系のバイトがなぜ、「ブラック」化したのだろうか。
ブラックバイトユニオンの坂倉昇平さん(31)は、「教育業界の人手不足への対応」を挙げる。10年ほど前から、学習塾では個別指導塾が増え、多くの講師が必要になった。個別指導塾は、集団で教える塾に比べ、指導力はあまり問われず、研修などのコストがかからないため、小さな会社も参入しやすい。「本来は時給を改善して人を集めるべきだが、利益を確保するために既に働いている人を辞めさせないようにしている」と指摘する。
総務省の労働力調査によると、2014年3月時点の教育・学習支援業の就業者数は303万人。10年前より26万人増えた。全国学習塾協会によると、少子化で1人あたりにかける教育費が増え、個別指導のニーズが高まっているという。
ブラックバイトに詳しい佐々木亮弁護士は、被害を受けないために、契約時にシフトや勤務地を確認することと、労働時間の記録をつけることを勧める。
また、学生に損害賠償の請求をする場合は、実際の損害額でなければならない。業者が事前に損害賠償の金額を定めている場合、「無効になる可能性があるので、専門家に相談してほしい」という。
ブラックバイトは、学生に辞めさせないケースも多い。しかし、期間の定めがない場合は原則、退職届を2週間前に出せばいい。期間の定めがある場合でも、やむを得ない理由があれば、退職できる。佐々木弁護士は「ブラックバイトで働くのに慣れると、ブラック企業への就職の入り口になる。親も、変な働かせ方に気づいたら指摘してほしい」と助言する。(杉原里美)
感想;
ブラック企業は弁護士に相談して法すれすれのことをやっている場合があります。
一人では弱いです。その場合は、このケースのように「首都圏青年ユニオン」に相談するとか、労働基準局に相談するとか、誰かに相談することだと思います。一人だと正しくても、いろいろ言われると自分が間違っているように思えてくる場合もあります。
心理学の実験でも、周り(実験の協力者)の数人が間違っていることでも正しいと言うと、自分は(自分以外は実験の協力者)その間違った意見に影響されてしまうとの結果が出ています。
人に話すことが大切なのです。話すは、放す、離すとも書きます。話すことは放すことであり、それにより自分から間違った影響から離れていくことができるのではないでしょうか。
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