小林製薬の紅麹サプリメントによる健康被害は、なぜここまで深刻化したのか。科学ジャーナリストの松永和紀さんは「医療関係者は、医薬品に相当する成分が入っているのに食品として販売し、摂取を消費者任せにしていたことを問題視している」という――。
■小林製薬の企業倫理を問う
紅麹サプリメントによる健康被害の申し出は、小林製薬の厚生労働省への報告によれば、医療機関受診者1381人、入院した人231人、死亡者5人に上っています(4月14日現在)。因果関係はまだ特定されていません。 この問題についてはこれまで、健康に良いとされる「機能性表示食品」の制度的な欠陥、カビ毒の専門家が「プベルル酸とは断言できない」と慎重になる理由の2回にわたってお伝えしてきました。 このままでは、第2、第3の紅麹サプリメント問題が起きかねない、と思います。これから連続して、紅麹問題と、その背景にある機能性表示食品や日本の食の安全の課題などについて整理してお伝えします。 最初は、小林製薬の企業としての倫理、製品倫理を問う話です。
■医薬関係者の多くが激怒している
紅麹問題を取材しているうちに、医薬関係者が非常に怒っていることに気づきました。毒性物質の混入以前の問題として、「なぜ、医薬品と同等とも言える成分を、このようなずさんな形で安易に製造販売していたのか?」「LDLコレステロールを下げる医薬品を摂っていればうんと安全だったのに」と口々に言うのです。 栄養学者や農学者、獣医学者とはかなり温度差があります。メディアの報道を見ていると、どちら側の学者に話を聞いているかで、傾向が異なるように思います。多くの医薬関係者が怒り、小林製薬の製造上の過失以上に、企業姿勢と倫理を問うています。
医薬関係者の怒りの理由は、紅麹サプリメントの機能性関与成分「紅麹ポリケチド」にあります。ポリケチドというのは、酢酸-マロン酸経路で生合成される化合物の総称で、この命名は「紅麹が作る化合物」と言う程度の意味合いしかありません。
同社は、届出書類の中で「米紅麹のLDLコレステロール産生阻害作用はモナコリンKの作用によるもの」と説明しています。
モナコリンKは1970年代、遠藤章・東京農工大教授(当時)が紅麹菌の一種であるMonascus ruberから見出した化学物質です。 そして、モナコリンKは別名ロバスタチン。遠藤教授とほぼ同時期にメルク社が見出し、ロバスタチンと命名したために、こんなややこしいことになっています。ロバスタチンは世界保健機関(WHO)が医薬品成分と位置付け、米国やカナダ、オーストリアなどで医薬品として販売されています。日本では、医薬品としては未承認です。
■紅麹サプリの機能性成分の本体は医薬品
小林製薬が機能性関与成分とした紅麹ポリケチドは、モナコリンKが見出された紅麹菌とは異なる紅麹菌(Monascus pilosus)で精米を発酵させて作った物質ですが、その作用はモナコリンKによるものと同社が認めています。つまり、これは医薬品相当ではないか? という見方が医薬関係者の間では強いのです。 機能性表示食品制度はガイドラインで、医薬品成分を用いることを事実上、禁止しています。これについて、薬学博士で藤田医科大学名誉教授でもある長村洋一・日本食品安全協会代表理事は、紅麹サプリ問題が起きた後、協会のウェブサイトで緊急に情報発信し、次のように書いています。 「要約すれば健康食品の範疇であるが、有効成分として入っている物質の本体は医薬品である。医薬品が医薬品名で届けたらダメなのに、医薬品を含む総称名なら機能性表示食品の場合OKという事実に私は違和感がある」 同じ成分による作用を活かしているのに、言葉一つで医薬品になったり機能性表示食品になったり。製薬会社でありクスリを用いることの難しさと利点をよくわかっていたはずの小林製薬が、こうした手法を使ってサプリを販売していたこと自体に、医薬関係者は憤っています。でも同社だけの手法ではありません。長村代表理事は「機能性表示食品には同じように医薬品を含んでいて総称名で届け出が受理されている物が他にもある」と書いています。
■「根本的に安全性の概念がわかっていない」
健康食品の問題を長年検討し、著書『「健康食品」のことがよくわかる本』(日本評論社)も出版している立命館大客員研究員の畝山智香子さんも、同じ点に注目します。 さらに、医薬品ロバスタチンの海外での処方量が1日10mgであるのに対し、小林製薬がほぼ同じ効果を自認する紅麹ポリケチドの摂取量を1日2mgとして販売していたことを指摘します。「医薬品に近い効果を示す量を含むモノを、食品として売っていたところに、悪質さを感じざるを得ない。根本的に安全性の概念がわかっていない」と批判するのです。 医薬品は、効果を目的に副作用に気をつけながら、量を定めて摂取するものです。要するに、“効くものは危ない”。だからどんな人が、どの程度の量を摂取するか、というのが非常に重要です。 処方薬は、医師が患者の健康状態、疾病の有無などを踏まえて処方し、通常は4週間後に診察し、効果と副作用を確認します。 一方、食品は副作用を覚悟しながら食べるものではありません。食品には多種多様な成分が含まれ、人はそれを全部把握できているわけではありません。加えて食品は、摂取するのかしないのか、摂取する量や期間も、消費者に任されます。
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感想;
医薬品成分であれば、海外で医薬品で日本では未承認であっても、それを販売することは薬機法違反になります。
ところが厚労省はそこまで踏み込んでいません。
実際効果をうたっている成分は海外で医薬品として販売されている成分と化合物が同じなのかどうか。ぜひ、マスコミは確認していただきたいです。
もしそうなら、厚労省に「小林製薬の紅麹サプリメントは薬機法違反になるのではないか?」と尋ねていただきたい。
またまったく同じでなくても類似の骨格を持っていても問題になると思います。
”脱法ハーブ”に近い位置づけになります。
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