エルソル飛脚ブログ ~Run 4 Fun~

四万十川周辺をチョロチョロしている飛脚の記録です。

エルソル大阪物語■57■「共同トイレはデンジャラス」

2018年01月30日 | エルソル大阪物語

■57■


「デンジャラスゾーン」

ヘアテック・コラージュ・学校職員・事務、
こんなにも多くの人がいるにも関わらず、トイレは男女共用でした。

僕は午前中にお腹が痛いのを我慢しながら仕事をいていたのが原因で、
お昼になると同時にトイレに駆け込みました。

幸いなことにトイレには誰もいませんでした。
洋式便器に座ると同時に下痢が出ました。

ホッとして、そのまま余韻に浸っていました。
すると、たくさんのヒールの靴音と共に学校受付事務のケバいお姉さん連中がやってきました。

トイレに入るわけでもなく、鏡のある洗面台で「化粧直し」をはじめているようです。

上田「・・・」(困ったぞ、恥ずかしくて出て行けんワ)

事務の姉さん達は、
昼休憩ということもあってペチャクチャ楽しそうで、なかなかその場を立ち去りません・・。

僕は恐ろしいことに下痢の「第二波」の我慢に耐えていました。

耐え切れるワケも無く、容赦なく「第二波」が音を立てて出ていきました。

事務姉さん達「・・・・」
ピタリと話すのを辞めて様子を伺われています。

上田「こりゃ~、絶対に出て行けんなった・・」

もうどのくらい座っているのだろう・・
と、その時です。

駆け込んできたヨシコが大きな声で叫びました、

ヨシコ「上田店長ぉー!!お客さんです!!」

 上田「・・・」(くそ~、名前で呼びやがった!)
   「分かった・・ちょっと待て」(小さな声)

ヨシコ「早く来て下さい!!」
   「メチャでっかい人が来て、店長呼べー、言うてます!!」

 上田「(何ぃ~?)」
   「・・・イカツイか?」

ヨシコ「イカツイです!」(即答)

ビビッた僕は、ケツも半拭きでトイレを出ました。
事務の姉さん達は「見て見ぬフリ」をかましていました。

「デンジャラスゾーン」を脱出し、超特急で店に戻りました・・

待っていたのは大相撲の「芝田山親方」(元横綱大乃国)でした。

親方「ダメだよ~ウンコなんかしてちゃ~」
  「今からTVなんだから早くやっちゃってよ~」

上田「スミマセン、今すぐ・・」

当然、親方なのでチョンマゲではなくて普通のオールバック。
(かなりこだわりがあるが)
シェーブ後のフェイシャルマッサージはやはりお気に入りで、すぐに寝入りました。

「大相撲」の季節がやってきました。

「カラコロ」という下駄の音色、街中の「ビン付け油」の香り、
府立体育館周辺は「大相撲」と共に「春」が訪れます。

「呼び出し」のカツユキさん、ミツアキさん、コトジさん、
などなど、連日相撲関連のお客さんで賑わいました。

そんな中、スタッフのヨシコが突然お店を辞めると言い出しました。

これはヘアテックのピンチです。
ヨシコのおかげで売上も順調に上がっていました。
ヨシコのシェービングでは、たくさんの常連客もついていました。

 上田「給料か?社長に交渉してあげるから、ちょっと待てよ」

ヨシコ「いや、そんなんじゃなく・・」
   「何か違うことがしたくなりまして・・」

 上田「は?何じゃそれ?・・」

もったいない・・・。
カットレッスンにも入って、「これから」という時に・・

自分が厳しくあたったから?
間違いなく自分に「非」があるのだろう・・。

とにかく連日に渡り説得しました。
しかし、ヨシコの考えはもう固まっているようでした。

コラージュの吉福店長が言いました、

吉福「上田さん、辞めるっていう者を追ってたらダメですよ」

確かに昔の自分の事を考えると頷けました。

上田「ヨシコ、1年間よう頑張ってくれた。」
  「でも、せっかくやってきたんや」
  「せめて来年の国家試験は受けときや」
  「その時は協力するから・・」

その後、
ヨシコは、お店辞めてからも菓子持って現れたりしました。
(これは修行中に嫌になって逃げていくのとはまた別のもんか・・)

おそらく自分のせいで、大切なスタッフをいとも簡単に失ってしまいました。

■57■

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エルソル大阪物語■56■「ヨシコは戦力」

2018年01月29日 | エルソル大阪物語

■56■


「ポリですか?」
ヨシコがお客さんに問い返しました。
田舎の同級生「カツノリ」(大阪府警)がCUTに訪れました。

カツノリ「ポリって言うな!!」

「ヘモですか?」
ヨシコが唐突にお客さんに聞きました。
田舎の同級生、あだ名が「ヘモ」の「シモムラ」がCUTに訪れました。

シモムラ「ヘモ言うな!!」

「ヘモ」というあだ名をヤンキー娘に呼ばれてしまった彼は、
友人達と劇団「下克上」を立ち上げて頑張っていました。
いつもお金が無さそうなんでこっそり「割引」を適用してやりました。

「ぼんじゅ~る!」
ヨシコがフランス人のオバサンに向かって言いました。
「関美」の海外姉妹校(パリ)からフランス人が視察に訪れました。
シェービング中のヨシコを見て何やら通訳にしきりに訴えています・・

フランスオバ「ムニャムニャムニャ・・・」
    通訳「毛剃りした後の産毛は濃くならないんですか?」

    上田「なりませんよ、一回やってみませんか?」

フランスオバ「ノノノノノノ」

フランス人オバサンがおどけるように逃げ去りました。

ヨシコ「店長ぉ、何か外人に慣れてますね~」

 上田「昔あの連中に『ジス・イズ・ア・ペン』言うた奴おったで」

ヨシコ「ハハハハ」


【夏になり】、
売上も目標を超え、ある程度格好はついてきました。
お隣りコラージュは、
もう外から見てもお客さんの出入りしているサロンという感じになりました。

【秋になり】、
月に2回、学校に講師として招かれ学生達とふれあいました。
ヨシコもレッスンをこなし、カット以外は任せられるようになりました。

そして、
関美学園恒例の『芸術祭』が行われました。
カットコンクールでは「審査員」を任せられました。

思えばその昔、
自信満々だったヘアスタイルが賞にかからなかった・・あの頃。
まさか同じ舞台に『審査員』として帰ってくるとは・・・。

当時の自分を思いながら真剣に審査に取り組みました。

「誰や?この若造」
審査員席の全理連のお偉いさん方にチェーン付きのメガネで睨まれながら、
「お前こそ誰や?」という気持ちでどっしりと座っていました。

【11月】、
結婚しました。
披露宴では同級生達により、人生初の「胴上げ」を経験しました。

【12月】、
 上田「ヨシコ!散髪屋にとって12月は特別や!」
   「俺とお前の二人しかおらん!正直手が回らんワ」
   「12月に一番大事なのはスピードや!頼むぞ!」

ヨシコ「ふぁ~~い!」(タバコ吹かしながら)

ヨシコもヨダレをタレ流すほどの忙しさ、
売上げも過去最高になりました。

バブルと呼ばれた経済はしだいに陰りを見せ、
関美が経営している結婚式場「高砂殿」の従業員がリストラにあい始めました。

「結婚式・披露宴はホテルでするもの」
そういう時代に突入していたのです。

「店長、気ィつけや、首切られる時は紙1枚やで、」
長年勤め上げた高砂殿戸田支配人が言いました。

古株事務の岡さんは元高砂殿職員だったらしく、
次々と首を切られる同僚達との別れにいつも涙していました。

事務の岡さんはヘアテックの僕達を大変可愛がってくれました。
「純粋関美出身」の僕達は仲間のように感じるらしく、
(コラージュには関美出身者はいない)
学校職員が帰った時間を見計らって、コーヒー・お菓子を差し入れてくれます。

岡さん「コラージュなんかに負けたらアカンで店長!頑張り!」

「結婚式場高砂殿」は複合ビルに生まれ変わりました。
2Fに美容室「DEW」
3Fにエステサロン
3Fにクラブ「QOO」(クー)
4Fにライブハウス「WO’HALL」(ウォーホール)

これが当たりに当たりました。
特に、「QOO」「WO’HALL」は連日の大盛況でした。

【2月】、
店長会議。
去年度の決算報告を兼ね、今年度の豊富、
具体的な案をそれぞれのテナントが社長を前に報告します。
ヘアテックは今年度の豊富を少し語るにとどまりました。

関美はお隣兵庫県に大型美容院テナントも経営していました。
とんでもない売上を上げる「お化け美容室」でした。
客単価も1万円を超えており、神戸でもTOPクラスということでした。

「お化け美容室」の店長は少しエロいフェロモンを醸し出す綺麗な女性でした。
毛皮を着こなすイケイケの姉さん風な格好には、「繁盛店の風格」さえ感じられました。

自分達は足元をしっかり見つめ、前に進むのみでした。

「武ちゃん」がイギリスから帰ってきました。
間もなく住吉大社近くに『M’s美容室』をオープンさせました。

何でも「M」という文字は事業において縁起がいいらしく、お店の名前にしたそうです。
(マクドナルドなど、確かにMのつくものは多い)

■56■

イギリス帰りの武ちゃんと・・

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エルソル大阪物語■55■「初めてのスタッフ」

2018年01月29日 | エルソル大阪物語

■55■


【4月中旬】

「上田店長!」
ノックもせずに裏口ドアから長島先生が飛び込んできました。

長島「ヘアテック入りたいって子が来てるけどどうする?面接する?」

上田「会わせてください!!」

初めての自分のスタッフ、
予想が違い、若い女性でした・・・。

「よろしくぅおねがいしま~~す」

まったりと挨拶をしてくる女性は、
髪は背中まで長く茶髪で、サーフィンが趣味らしく春でも顔は日焼けしていました。
ブルーのアイシャドウが目をひき、爪も赤く伸ばしています。

「ポ~」っとした雰囲気は、
いかにも「仕事が出来そうにない感」に包まれていました。
しかし、今この状況ではそんなモン関係ありません。

上田「とりあえず明日から来れますか?あ、お名前は?」

女性「カワシマでぇ~~す」

とりあえずカワシマさんを帰し、長島先生に尋ねました。

上田「先生・・、大丈夫ですよね・・ね?」

長島「関美出身やから大丈夫やろ」(そこが一番心配・・)

コラージュに顔を出し、
翌日からの女性スタッフ入店を吉福店長に知らせました。

上田「ちなみに吉福君、専門学校は何処やった?」

吉福「高津です。」(やっぱエリートか・・)

【翌日】、
『川島』は何の緊張感も無く出勤しました。
新人川島には、最初に鏡を拭いてもらいました。

上田「川島さんの全力で鏡を拭いてみて」

水の入った霧吹きと乾いたタオルを渡しました。
早速川島は鏡全体に霧吹きを吹き、タオルで拭き始めました。
おおかた丁寧に拭いて終わりました。

上田「ヨシ、なかなか丁寧やな。」
  「しかしまだ甘い、」
  「川島さんの位置から見て綺麗に拭けてるかもしれんが、」
  「僕の位置から見ると数箇所に曇りが見える。」
  「こっちに来てみ」
  「鏡を拭くときには鏡の正面だけを見て拭いたらアカン」
  「横から見て、少し下から見て、色んな角度から見なアカン」
  「これはお客さんのCUTや全てに同じです。」

朝、出勤して最初の仕事は鏡を拭かせました。

『考えて拭く鏡』

ここから入ると、その他の掃除・レッスン・仕事も『少し考える』ようになります。
「どうすれば綺麗になるのか?」
「どうすればお客さんは気持ちがいいのか?」
迷った時のすべての原点になるように、「朝の鏡拭き」は大事にしました。

まだまだお店は暇で、おおかたレッスンに費やせました。
「川島」の実力を少し見てみました。

【シャンプーレッスン】
自分がモデルとなり、出来るかどうか見てみました。
「大きくは問題なし」

【シェービング(顔剃り)レッスン】
・・・ウマイ、即戦力!!。

上田「上等!上手やね~、特に言うこと無しです!!」
川島「ありがとーございまぁ~す」

『川島ヨシコ』、インターン(女)
19歳、見た目はヤンキー娘、でも見た目と違いかなり真面目、
口が開きっぱなしなんでよくヨダレを流す。
派手目な化粧が好き。前髪命!

川島「あのぉ~、店長ぉ~、」
  「この制服のベスト、胸キツいんですけどぉ~」(Fカップ)

上田「・・・我慢し。」

こうして「ヘアテック」は『2人体制』となりました。

上田「川島って古内東子に似てんな~」
  「言われへんか?」

川島「誰ですかぁ~、それ?」

4月売上、まだまだ赤字。
胃が痛いが、お客さんの反応にも「手ごたえ」を感じる。

シェービングの上手い「ヨシコ」も戦力になっている。
まだ週に1度はチラシを配り続ける。

上田「こら!ヨシコーッ!タバコは隠れて吸えー!!」

5月売上、「2割引期間」終了。

専門学校はすぐ近くに結婚式場『高砂殿』も経営しており、
「社員割引」(50%オフ)を発行、
「紹介カード」(20%オフ)も発行して再度新規客獲得に力を注ぐ。

コラージュの売上げは当初の目標達成。
頑張らなくては・・・。

上田「こら!ヨシコーッ!空き缶を灰皿にすんなー!!」

「コラージュ」は連日の早出、終電までのレッスンでお店の質を高めます。
(若いスタッフ、よう辞めていかんな~)

ウチは暇なんで営業中に嫌がるヨシコをなだめすかしレッスン。

上田「ヨシコ!ウチもたまには終電までレッスンしようや!」

ヨシコ「嫌です。」(即答)

カルテはかなり細かく書きこみました。
髪の毛のクセ、細かい失敗、会話で得た情報、その方の理想のスタイル。

100万人いれば100万通りのカルテが出来上がり、
お客さん一人一人に真正面から向き合わなければなりません。

また、カルテに頼りすぎてもいけません。
「人」はいとも簡単に前言を撤回します。
生きている人間に接するには、こちら側が「生きて」いないといけません。
五感を研ぎ澄まし、生きた情報で動かないと失敗します。
でも、その基本となるのはやはりカルテなのです。

「この店主は自分の事をよく理解してくれている」
こう思って頂く安心感で、さらに奥深い情報を得られます。
そういう作業を繰り返し、お客さんが本当に希望するヘアスタイル、
癒しの空間が作れるのだと考えます。

そんなこんなで閉店後のカルテ整理だけで遅い帰宅となりました。

6月売上、やっと最初の目標額達成。
社長に報告、
上田「上向きなんでもう少しだけ長い目でみて下さい、スミマセン」

自分に気合を入れるために始発電車に乗り出勤しました。
難波に着き、まだ薄暗い中職場まで歩いていると、
信じられない事にハンバーガーショップから長蛇の列が出来ていました。

並んでいるのはあやしいオッサンばかりです。
何事か様子を眺めていると、古くなったパンを配っていました。

難波南側のこの地域はすぐ隣に西成区があります。
西成区は「日雇い労働者」が道端でたくさん寝ていたり、
難波にはたくさんの「浮浪者」が軒先で寝ていたりしていました。

ハンバーガーショップのすばらしいボランティアでした。
「いつの日か自分も散髪でこういうボランティアをしないと・・」
そう思いました。

■55■

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エルソル大阪物語■54■「お隣のコラージュ」

2018年01月29日 | エルソル大阪物語

■54■


【4月に入り】、
『コラージュ』はメンバー全員揃いました。

『吉福』店長(男)
甘いマスクで背も高い、2歳年下、カリスマ美容師。

『片岡』君、チーフ(既出)

『サンタ』さん、スタッフ(既出)

『山上』さん、スタッフ(女)
おとなしいグラマー女性、元銀行員、4歳年下。

『磯野』君、スタッフ(男)
痩せ型、クリクリくせ毛、サッカー得意、22歳。

『村木』さん、スタッフ(女)
ぶりっ子系のちっちゃな活発娘、22歳。

『川相』さん、新人(女)。

以上の「7人体制」らしいです。

早速店長の吉福君に挨拶に出向きました。
「仕事が出来る人」
少し喋るとすぐに判りました。

吉福店長は何といってもポジティブです。
社長に「スタッフ一人頭30万で・・」と言われているらしく、
すぐに連夜のミーティング、レッスンなどでスタッフをとりまとめていました。

それまでの片岡君達の「のんびりムード」が一変し、
「コラージュ」は「緊張感のあるお店」に変わっていきました。

上田「吉福君、コラージュはピリッとしていい感じやね」
  「ところで、前のお店からどれだけお客さん引き連れて来てんの?」

吉福「一応カルテは100人位持ってきましたけど・・」
  
上田「100人!?(くそ~、それ反則やん!)」

吉福「上田さんは?」

上田「・・・0人です。」

吉福「それってやりがいありますよね、」
  「だって、ヘアテックに来るお客さん、」
  「全部【上田さんのお客さん】って事でしょう」

上田「あらためて言われると何か新鮮やな~」

『吉福店長』と『片岡君』は同い歳です。
しかし「客層」は少し異なりました。
「吉福君」のお客さんはOLや上品なおばさんが多く、
「片岡君」のお客さんは学生・メンズが多い。

「吉福君」のCUTは基本がとてもしっかりしていて、
ラフなスタイルでも「安定感」が感じられました。

「片岡君」のCUTは「雰囲気づくり」が上手で、
「独創的」でした。

そこに加えて、仕事のできる「サンタさん」・「山上さん」もいて、
『コラージュ』はまるで美容師の「精鋭部隊」のようでした。

「美容室」が「オシャレ」を売っているのに対し、
「理容室」は「総合調髪」を売ります。

「総合調髪」とは、
カット、シェービング、シャンプー、マッサージ、ブロー。
その中に「癒し」「リラクゼーション」の要素もあります。

美容室と理容室、同じ「CUT屋さん」でも、
お店を出る時にお客さんが感じる事に違いがあります。

「美容室」を出たお客さんは、
「綺麗になった~、素敵になった~」となり、

「理容室」を出たお客さんは、
「サッパリした~、軽くなった~、スッキリ!」となります。

「ヘアテック」も基本的には「総合調髪」を売りにしますが、
「難波」という場所柄、お客さんに「オシャレ」も求められます。

「コラージュ」という洗練された技術をすぐ隣で、
すぐ間近で見られることはとても幸運でした。

『少しオシャレな匂いのする散髪屋』

「ヘアテック」が目指すところが決まりました。

「頑張らねば・・」

■54■

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エルソル大阪物語■53■「ヘアテックOPEN」

2018年01月28日 | エルソル大阪物語

■53■


『やろうか悩めば、迷いも誘惑も多くなる。
  やろうと決めれば、勇気も知恵も湧いてくる』

【3月4日】、『OPEN』を迎えました。

「え?一人でやってるん?」
事前に連絡しておいた大阪在住の田舎の同級生
『ヨシヒロ』が早速来てくれました。

真新しい椅子で最初のお客さんです。
カルテ№1番。
緊張で手が震えます。振るえが止まりません。

「最初のお客さんが同級生でよかった・・・」
どうしても動きの「ぎこちなさ」が拭えませんでした。

「花」が届きました。
田舎の同級生『坂本』(医師)からでした。
その豪華な花は殺風景なヘアテックを明るくしてくれました。

「え?一人でやってるの?」
続いて和歌山の会社員『水落君』が来てくれました。

「水落君」は関美職員を辞め、不動産会社で働いていました。
手の震えが少し治まってきました。

午後からは『TV撮影』(テレビ大阪)が入りました。
お客さんは学校職員のみなさんで、「サクラ」でした。
「インタビュー」のようなものは無く、仕事風景を淡々と撮っていました。
専門学校・併設店舗の紹介という内容の番組でした。

夕方、事務の岡さんがお茶を差し入れてくれました。

岡「店長、お疲れさん!」
 「そんな辛気臭い顔してはったらお客さんも来ィへんで」
 「そうや、写真撮りましょ!オープン記念写真!」

こちらの気持ちを知ってか、明るく盛り上げてくれました。

チラシ効果も無く、初日は二人のお客さんだけで終了しました。

裏口ドアから「コラージュ」を覗きました。
やはり「コラージュ」も少ないお客さんで終了していました。

片岡「まあ最初やからこんなもんじゃないですか?」
とはいえ、サンタさんは僕と同じく無口で、不安な気持ちのままのスタートとなりました。

【二日目】
知り合い以外の本当の新規客が入りました。
ビジネスマンです。

「さあこれからが勝負、自分の腕次第!」

新しいお店に期待して来てくれたお客さんを裏切らないよう
全力を尽くしました。

シェービング後のフェイシャルエステを取り入れ、
マッサージオイルにこだわり、
リラクゼーションをお店の特色として、少し高級感を持たせました。

全盲のおばさんが付き添いの人に連れられ毛剃りにやってきました。
よく喋ります。
「兄ちゃん上手やからお客さんいっぱいになるで~」
お世辞でも嬉しくなりました。

カルテを作成しました。
1ヶ月後、2ヶ月後に向けて、事細かに書き上げ、それを睨んでいました。

夕方、またまた事務の岡さんが和菓子を持ってきました。
岡「今日の饅頭は絶品やで~」

二日目も少ないお客さんで終わりました。

【3月中旬】
少し店内の動きに慣れて、思うように体も動いてきたある日、
少し変わった着物姿の標準語のお客さんがお見えになりました。
どうやら隣の府立体育館で大相撲がやっているらしく、『呼出し』と呼ばれる方でした。

「え?一人でやっているの?」
「若いのに大変だねぇ」
『カツユキさん』という呼出しさんは結構地位が高いらしく、
カツユキさん命令で次々と呼出しさん達が来店しました。

「え?兄さん一人でやってるの?」
カツユキさんが連れてきたひと際大きい人その人は、
引退したばかりの元横綱大乃国、『芝田山親方』でした。
親方はフェイシャルマッサージを大変気に入ってくれました。

親方紹介で、新聞記者、NHKアナウンサー、行司、
など色んな人が来店してくれました。

人が入り出し、お店に活気が出てくるとさらに入りやすいのか、
チラシを持った予備校生達が入るようになりました。
徐々にお客さんが入るお店になってきました。

一ヶ月経ちました。
「2割引」ということもありましたが、売上はまだまだ「さっぱり」でした。

しかし「手ごたえ」は感じつつありました。

社長に報告、
社長「3ヶ月は数字のことは気にしなくていいから」

ありがたいお言葉です。

■53■

芝田山親方と・・


事務岡さんと・・

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