平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

花燃ゆ 第24回「母になるために」~家族があって、命の重さを知っている。そげな男の志こそ強くて熱い

2015年06月15日 | 大河ドラマ・時代劇
 今回は文(井上真央)の気持ちを追っていた。

 何も告げず、危険な京へ旅立っていった久坂(東出昌大)に関しては、
「まだ喧嘩もロクにしとらんのに、いつもいつも何でそげに勝手なの?」

 確かになぁ。久坂は自分の考えていることをしっかり文に話せばいいのに。
 これに対して、伊之助(大沢たかお)は久坂の心中を説明する。
「お前の顔を見てしもうたら覚悟が鈍る。そう思ったんじゃろう」

 このドラマ、文の不安や心配、疑問には、すべて伊之助が答えてるんだよな。
 作家にとって、伊之助は本当に便利な存在。

 伊之助のアンサーはさらに続く。
 久米次郎を養子にもらう件で、文は次のような不安を漏らす。
「跡継ぎを迎えたら、あの人がおらんくなることを認めてしまうようで……」
 これに対して伊之助。
「俺が久米次郎を養子にやると言うたんは、久坂に死んでもらうためじゃない。生きてもらうためじゃ」
「家族があって、命の重さを知っている。そげな男の志こそ強くて熱い」

 作家は〝死ぬための養子縁組〟から〝生きるための養子縁組〟に解釈を変えたわけだ。
 伊之助のせりふにも「久坂と寅次郎では、大きく違うところがある」というのがあったが、この考え方は松陰の考え方とは180度違う。
 松陰は「志のために死ね」という人だから。

 この作品の久坂玄瑞。
〝松陰の考え方〟と〝伊之助の考え方〟で分裂している人物として描かれている。
 実際の久坂玄瑞は〝松陰至上主義〟の人物であったのだろうが、この作品ではふたつの人格の中で引き裂かれている。
 つまり〝志〟と〝家族〟、〝急進・過激〟と〝穏健〟だ。
 それが久坂を弱さのある〝迷える人物〟にしている。

 一方、そんなイジイジ・ウジウジの久坂と対照的なのが、高杉晋作(高良健吾)。
 彼は勇猛果敢。行動するのに迷いはない。
 いかにも大衆文学的な人物だ。

 引き裂かれて迷う久坂。
 作家さんの意図はわかるのだが、果たして、どうか?
 この作品の久坂玄瑞は無器用な男であり、〝志〟と〝家族〟の両方を手に入れるのは難しそうだ。
 彼と文の不幸はここにある。
『軍師官兵衛』など、歴代大河ドラマは〝志〟と〝家族〟を一応、両立させてきたが、今回はそれがないため、不安定なものになっている。
 
コメント (2)
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