「平清盛」はアイデンティティを探す物語でもある。
まずは<もののけ>の血。
白河法皇(伊東四朗)と白拍子・舞子(吹石一恵)の間に生まれた清盛(松山ケンイチ)は、白河法皇の呪われた血に恐れおののく。
自分もあんな化け物になってしまうのではないか、と思うのだ。
一方で、平家の御曹司である清盛は<武士>でもある。
しかし、当時の武士は帝や貴族に媚びて生きていく<王家の犬>であった。
<王家の犬>として出世していく父・忠盛(中井貴一)を見ていると、清盛には<武士>が嫌悪すべきものに思えてくる。
清盛は忠盛を否定する。
「王家に媚び、出世をし、位をもろうて喜び、ありがたがる。
かようなつまらぬ武士にはなりとうないのだ」
忠盛が<王家の犬>としては振る舞っているのには、〝王家を利用して平氏を栄えさせる〟という理由があるのだが、若い清盛にはそれがわからない。
そんな反抗期の清盛に忠盛はこう糺す。
「お前と血を分けた父は法皇様だ。
だが、お前は平氏の子だ。平氏の子としてこの忠盛が育てたのだ。
今のお前は平氏に飼われた犬だ。俺のもとにおらねば生きていけぬ、飼い犬だ」
反抗する清盛を全否定する強い言葉だが、忠盛はこんな言葉をつけ加えるのも忘れない。
「死にたくなければ、強くなれ!」
飼い犬の境遇を否定して生きていくのは構わないが、結果は惨めな野垂れ死に。
だから強くなれと忠盛は言っているのだ。
すごい! 忠盛、カッコいい!
しかし、清盛も負けていない。
忠盛になおも反抗する。
「俺は父上のようにはならぬ!
貴族にも王家の犬にも!
平氏の犬にもなる気はない!
いっそたくましい野良犬になって生きていく!」
清盛の<野良犬>宣言だ。
清盛は<野良犬>というアイデンティティーを見出した。
清盛の持っている膨大なエネルギーは、安定した<飼い犬>という境遇を否定するのだ。
これに対する忠盛の返事もすごい。
「左様か……好きにせよ。
お前と次に会うは賭博場か?
それとも盗賊の隠れ家か?
言うておくが、わしは容赦せぬぞ!」
これまた<野良犬>宣言の完全否定だが、実は忠盛は自分を乗り越えようとしている清盛のことがうれしくてしょうがないのだ。
上手いせりふだ。
そして立派な父親。
<野良犬>というアイデンティティーを見出した清盛は、<おもしろく生きたい>という願いをつけ加えてこう語る。
「俺は父上のようにはならぬ。
王家の犬にも、平氏の犬にもならぬ。
野良犬の声が、このおもしろうない世を変えるまで、おもしろう生きてやる」
まずは<もののけ>の血。
白河法皇(伊東四朗)と白拍子・舞子(吹石一恵)の間に生まれた清盛(松山ケンイチ)は、白河法皇の呪われた血に恐れおののく。
自分もあんな化け物になってしまうのではないか、と思うのだ。
一方で、平家の御曹司である清盛は<武士>でもある。
しかし、当時の武士は帝や貴族に媚びて生きていく<王家の犬>であった。
<王家の犬>として出世していく父・忠盛(中井貴一)を見ていると、清盛には<武士>が嫌悪すべきものに思えてくる。
清盛は忠盛を否定する。
「王家に媚び、出世をし、位をもろうて喜び、ありがたがる。
かようなつまらぬ武士にはなりとうないのだ」
忠盛が<王家の犬>としては振る舞っているのには、〝王家を利用して平氏を栄えさせる〟という理由があるのだが、若い清盛にはそれがわからない。
そんな反抗期の清盛に忠盛はこう糺す。
「お前と血を分けた父は法皇様だ。
だが、お前は平氏の子だ。平氏の子としてこの忠盛が育てたのだ。
今のお前は平氏に飼われた犬だ。俺のもとにおらねば生きていけぬ、飼い犬だ」
反抗する清盛を全否定する強い言葉だが、忠盛はこんな言葉をつけ加えるのも忘れない。
「死にたくなければ、強くなれ!」
飼い犬の境遇を否定して生きていくのは構わないが、結果は惨めな野垂れ死に。
だから強くなれと忠盛は言っているのだ。
すごい! 忠盛、カッコいい!
しかし、清盛も負けていない。
忠盛になおも反抗する。
「俺は父上のようにはならぬ!
貴族にも王家の犬にも!
平氏の犬にもなる気はない!
いっそたくましい野良犬になって生きていく!」
清盛の<野良犬>宣言だ。
清盛は<野良犬>というアイデンティティーを見出した。
清盛の持っている膨大なエネルギーは、安定した<飼い犬>という境遇を否定するのだ。
これに対する忠盛の返事もすごい。
「左様か……好きにせよ。
お前と次に会うは賭博場か?
それとも盗賊の隠れ家か?
言うておくが、わしは容赦せぬぞ!」
これまた<野良犬>宣言の完全否定だが、実は忠盛は自分を乗り越えようとしている清盛のことがうれしくてしょうがないのだ。
上手いせりふだ。
そして立派な父親。
<野良犬>というアイデンティティーを見出した清盛は、<おもしろく生きたい>という願いをつけ加えてこう語る。
「俺は父上のようにはならぬ。
王家の犬にも、平氏の犬にもならぬ。
野良犬の声が、このおもしろうない世を変えるまで、おもしろう生きてやる」