平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

篤姫 第13回「江戸の母君」

2008年03月31日 | 大河ドラマ・時代劇
 この作品の基本図式は、篤姫(宮崎あおい)と人物との対決。
 斉彬(高橋英樹)、幾島(松坂慶子)らと相まみえ、今回も難敵が。

 江戸の薩摩藩藩邸。
 待ち受けていたのは老女の小の島(佐藤藍子)。
 篤姫に対して心を開かない軽んじている様な態度。
 小の島に比べたら、幾島の本音・体当たりの方がどんなにいいことか。
 さらなる難敵は斉彬の正室であり篤姫の母となった英姫(余貴美子)。
 西陣織、菓子……、篤姫は「お優しいお方」と喜ぶが、会っていきなり「薩摩の分家の娘が御台所など誰も認めておらぬわ。肝に銘じよ!」

 今回は完全な篤姫の負け。
 覚悟をしてきたのにいきなり梯子を外され、愛されたいと思っていた江戸の母君からは拒絶。
 これは落ち込む。

 今回は次のエピソードに移るブリッジ的役割の話。
 一応、ドラマとして結末をつけるために、
 「お殿様を信じること」~これは江戸に行けない尚五郎(瑛太)のエピソードでも語られた。
 「幾島との絆」で締めくくった。
 幾島のラストの言葉はなかなか泣ける。
 「老女とはおのが主をお守りするもの。私が守り抜いてみせる。裏の事情をつきとめてみせる。お心安らかに」
 幾島が強い人でよかった。
 幾島が弱い人間だったら篤姫はたちまち潰れていただろう。
 篤姫には立ち塞がる難敵が次々と出てくるが、彼女を支えてくれる人々もいる。
 父、母、菊本、尚五郎、幾島……。
 現実と戦っていくうえで、支えてくれる人・信じることのできる人は必須なのだ。

 それにしても身内の薩摩藩邸でさえこうなのだから、江戸城の大奥ではさらにハードになりそう。
 篤姫には曲がらずにいつものとおりでいてほしい。
 彼女がどんな大人になっていくかも今後の見所だ。

※追記
 桜島に続いて富士のお山に叫ぶ篤姫。
 「薩摩よりまかり越しました篤子でございます。この先より先よろしくお願い致します!」
 なかなか恥ずかしい。

※追記
 よくできた姫、郁姫の話を聞いて自分に仕える幾島が気の毒だという篤姫。
 船の中でのやりとりといい、篤姫は幾島に絆を感じている。
 ラストの幾島のせりふ(「老女とはおのが主をお守りするもの。私が守り抜いてみせる。お心安らかに」)はそんな篤姫に応えたせりふだ。
 この辺の構成は巧みに編み込まれた織物を見るようで心地いい。


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24 シーズンⅥ ⑦

2008年03月29日 | テレビドラマ(海外)
 18:00
 今回は非常に内容が濃い。
 ジャックを始めとする各キャラの行動が『ロシア領事館』に集中されているからだ。
 グレデンコの居場所・次の行動を知っているロシア領事。
 ジャックはそれを拷問で吐かせたが、領事館に囚われの身。連絡も遮断される。
 一方でロシアのスワロフ大統領を動かして領事館を動かそうとするローガン元大統領。彼は元妻のマーサにスワロフと話すよう説得する。
 CTUは領事館への突撃を準備。突撃すれば国際問題になるが、核攻撃を防ぐため仕方がない。

 この様に
 <ジャック><ローガン><CTU>、この三者がロシア領事館をめぐって行動する。
 しかもグレデンコによる核爆弾を積んだ無人飛行機の発射は着々と進んでいる。
 見事なサスペンス・アクションシーンだ。

 19:00
 ここでは第三次世界大戦へのシナリオ。
 爆弾テロで昏睡状態のパーマーに変わって副大統領が指揮を執る。
 彼は、アメリカを攻撃すれば報復を受けることを示すために中東の国への核攻撃を準備する。
 怖いのは副大統領ひとりの意思で簡単に核攻撃が決められることだ。
 もちろんトムやカレン・ヘイズら反対するものがいる。
 しかし副大統領の強行の前には無力。

 力を持てば使いたくなるのが心情。
 核爆弾を持っていれば、それを使うという発想が安易に出てくる。
 自分の威を示すためには、核爆弾は格好の武器だ。
 核兵器は全廃すべきでしょう。

 おまけに怖いのは、この核攻撃による報復が第三次世界大戦につながるかもしれないということだ。
 カレンによって語られるシナリオはこう。

・この核攻撃で中東の政治は親米から反米に変わる。テロリストも支援する様になる。
・この動きに対してロシアや中国も介入。
・アメリカ、中東、ロシア、中国による第三次世界大戦勃発。

 なるほど。
 目を凝らしてみると、現在の世界情勢は危うい。
 各国の矛盾・緊張が究極まで高まって暴発し始まった第二次世界大戦。
 これと同じ様な緊張関係が現在もある。
 何かきっかけがあれば、話し合いなど無力な紛争・戦争が始まってしまうかもしれない。

 シーズンⅥはアメリカ、中東、ロシア、そして中国をも巻き込んだ展開になる様だ。
 この点でシーズンⅥは現在の世界情勢の縮図でもある。


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島田紳介が芸能界の厳しさ教えます

2008年03月28日 | バラエティ・報道
 昨日の「島田紳介が芸能界の厳しさ教えます」でこんなドッキリがあった。

 インターネットテレビのゲストとして呼ばれた磯野貴理、北斗 晶、泰葉がパーソナリティの女の子の失礼な言動にどうリアクションするかというもの。

 失礼な言動は
 1.遅刻してやって来て謝らない。
 2.収録途中でトイレに行きたいといって中断する。
 3.トイレの後、タバコを吸う。

 これへのリアクションは三人三様。
 これで三人のいい人度を判定するのだが、一番評価を受けたのは北斗 晶さん。

 まず収録中は何も言わない。
 収録後に女の子を呼び出して説教。
 遅刻して謝らないのはいけない。
 トイレに行くのは生理現象だから仕方がないが、タバコを吸うのはダメだ。
 あんたがウチの子だったら、引っぱたいていた。
 わかったか?

 さすが上下関係の厳しいプロレス界で鍛えられてきただけのことはある。
 「ウチの子だったら、引っぱたいていた」というのもいい。
 収録中でなく収録後、楽屋でふたりだけで説教というのも大人の対応だ。
 収録中にスタッフの前でやれば本人もつらいだろうし、現場もいい雰囲気でなくなる。

 収録後、スタッフの前で説教を始めたのは泰葉さん。
 頭の下げ方がなってないと言って再度、頭を下げさせることも。
 かなり厳しい。
 みんなの見ている前で怒られて屈辱だろうし、それゆえ泰葉さんの言葉が素直に入るかわからない危うさもある。

 磯野貴理さんは最低の対応。
 女の子に特に説教することはない。
 ひとり楽屋に戻って夫のマネージャーさんに電話。
 「どうしてこんな仕事を入れたの? ギャラはいくらなの?」と不平不満。
 おそらく貴理さんの場合は、台本があってそうしているのだろうが、見事なオチになっている。

 この様にテレビのバラエティの世界はリアクション。
 リアクションの違いで貴理さん、北斗さん、泰葉さんのキャラがわかる。
 これが楽しい。
 同時に我々に人の叱り方、大人の対応というものも教えてくれる。

 
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クイズヘキサゴン SP

2008年03月27日 | バラエティ・報道
 クイズヘキサゴンSP
 相変わらず面白い。
 世の人は『おバカさん』と言ってバカにするのかもしれないが、そんなことない。
 こんなに楽しくしてくれて元気にしてくれる。
 政治家とか官僚とかいわゆる頭のいいとされている人よりどんなにか素晴らしい。
 先の見えない社会。
 頭のいい人たちは世の中にマイナスのエネルギーしか出していないですよ。

 番組を見ていて気になったのは堀江淳さん。
 ヘキサゴンメンバーの中にいてシロウトさんがいる感じ。
 ベテランなのに「もっとしゃべれ」と紳介さんにダメ出しさせれて痛々しい。(本番中でも平気でダメ出しをするのが紳介さんの芸風だ)
 テレビに出て輝ける人というのは、やはりパワーが違うのだろう。
 発するパワーがブラウン管を通じて伝わってくる。
 大声で叫ぶ人
 悔しい顔をする人
 ずっと黙っているがワンポイントで存在感を見せる人
 表現の仕方は様々だが、視聴者に伝わる伝わらないはやはりパワー。
 特に芸がなくて美人、かわいいというだけでブラウン管に映っている人もいるが、その人が美しくかわいく見えるのだってパワーがあるから。

 芸能人であるためには通常の人の何倍ものエネルギーがいるのだろう。
 あとは覚悟と自分を知っているということ。
 今回出ていた小島よしおからは、芸能界で生き残っていくんだという覚悟を感じた。
 また『2年目の崖っぷち』という自己認識、それをギャグにする頭のよさがある。


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プロポーズ大作戦 SP

2008年03月26日 | 恋愛ドラマ
★過去、恋愛シーンで婚約指輪は様々な形で描かれてきた。

 「101回目のプロポーズ」はボルト。
 「ALWAYS 三丁目の夕日」では、存在しない指輪。
 いずれもお見事!

 今回の「プロポーズ大作戦」ではサイズの違う指輪。
 アイデアとしては前のふたつには劣るが、健(山下智久)の無器用な愛は的確に伝えた。
 また、そんな指輪を「しょうがないなぁ」と微笑みながら見つめる礼(長澤まさみ)。
 これで彼女の気持ちも伝わる。
 婚約指輪は恋愛シーンに必須の小道具だ。

★この作品のキイマンは何と言っても鶴見尚(濱田岳)。
 今回もヘタレ健を動かす重要な役割。

 エリ(榮倉奈々)を喜ばすために、一生忘れられない結婚式にするために彼がしたことは、エリの人生に関わった人すべてにお祝いのコメントをもらうこと。

 作者がこのアイデアを思いついた時、このSPの物語のほとんどができたと言っていい。
 先程の指輪もそうだが、ドラマはいかに新鮮なアイデアを生み出せるか。
 おまけに鶴に「今のエリがいるのは彼女に関わった人たちがいるから。だから関わった人すべてに感謝したい」と言わせた。
 おそらく作者は鶴の気持ちをとことん突きつめた結果、このせりふに至ったのだろう。

 斬新なアイデアと人物の気持ちを突きつめて考えること。
 これでドラマはどんどん面白くなる。薄っぺらでなくなる。

 その他の鶴のヒット、ホームランとしては
 「エリは俺の憧れなんだ。都合のいい女なんかになるな!」

 三振・凡プライは
 「エリが女子」
 完全に三振だが、エリには絶対忘れられないエピソード。
 たとえ三振でも気持ちが伝われば人を動かせる。
 「ハチクロ」の竹本くんがイマイチだったのは、相手のために何ができるか鶴ほど一生懸命考えなかったし行動しなかったこと。
 青春ドラマの主人公はもっとあがいてほしい。

 面白いドラマでした。
 健は結婚式での略奪までしたのに相変わらずヘタレだし。
 相手のダメぶりを含めて愛せるようになること、これが絆なんでしょうね。
 

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薔薇のない花屋 その3

2008年03月25日 | 恋愛ドラマ
 もし裏切られたとしても俺は信じる。

 舜(玉山鉄二)とは正反対の生き方をしてきた英治(香取慎吾)。
 舜はトゲを持つ薔薇。
 誰も信じない。傷つけられる前に傷つけるというのが自分を守る手段。
 英治は信じ続ける。
 どんなに裏切られても与え続ける。
 相手に何も求めない。
 それはどんなに送っても応えてくれない一方的なビデオレターを送る彼女(本仮屋ユイカ)と同じ他人への対し方。
 美桜(竹内結子)はそんな英治のことを「誰の手も離さない人」と言う。
 人は裏切られ傷つけられたら、その人の手を離してしまう。
 だが英治は決して離さなかった。与え続けた。

 直哉(松田翔太)には借金から抜け出すためのお金。
 安西(三浦友和)には孫。愛を注ぐ存在。
 菱田さん(池内淳子)には居場所。
 舜からは借金した。舜が自分の所に戻って来やすい様に。

 こんな生き方の結果、英治が得たものは美桜、雫(八木優希)を始めとする沢山の人たち。
 英治の誕生日。
 たくさんの人が祝ってくれて英治は居心地悪い。
 英治は幸せに慣れていないのだ。

 作品は英治という生き方を描いた作品だった。
 人を信じて与え続ければ「それでも人生は素晴らしい」と言える様になる。
 そんなテーマを描いた作品。
 果たして普通の人に英治の様な生き方ができるかどうか疑問だが、少なくとも英治はメチャクチャ強い人間だ。

 作品としては不思議な作品でしたね。
 頭巾を被ったり、目が見えないふりをしたり。
 一方的なビデオレターも、美桜が「お花屋さん」と呼び続けることも。
 意図はわかるのだけれど違和感。
 同じテーマを描くのにもっと違った文体があってもよかった感じもする。
 僕としては最後まで入り込めない作品だった。

※追記
 喜多善男の中の言葉に「他人を赦し自らを赦せば解放される」というものがあったが、それはまさに英治の生き方でもある。
 英治は他人はいくらでも許すことのできる人間だったが、自分はなかなか許せない人間だった。
 何かを求めたり、幸せになってはいけないという想いが常に英治にはある。
 そんな英治が「愛してる」と美桜を求め、自分は幸せになっていいと自分を許した時、幸福が生まれた。


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篤姫 第12回「さらば桜島」

2008年03月24日 | 大河ドラマ・時代劇
★自分の父親、母親のことを「忠剛殿」「お幸殿」としか呼べないつらさ。
 自分の娘のことを「篤姫様」「姫様」としか呼べない哀しさ。
 これだけで人物の葛藤を描き切る。見事な作劇だ。

 篤姫(宮崎あおい)と忠剛(長塚京三)たちの間にある距離。
 距離にしてわずかだが、彼らは歩み寄り抱き合うことができないのだ。
 見事なカセだ。
 おまけにこの対面のドラマが演じられているのは、ひとつの部屋。
 アクションもなく映像としては『静』。
 しかし描かれているドラマは嵐のような『動』。

 前ふりはある。
 宴のための着物を選ぶ篤姫。
 母の好きな色・柄の打ち掛けを着たいと言う。
 この日常のさりげないやりとりでせつない気持ちを表現する。

 こうした葛藤、緊張感の中でドラマは一気に転じる。
 斉彬(高橋英樹)の計らいで親子だけの対面。
 「父上様」「母上様」
 「於一」
 今まで息を詰めていた視聴者は一気に息をはき出す。
 緊張が解ける瞬間だ。
 張りつめていたものが解けて思わず涙も出て来る。
 その後のやりとり(「元気そうで」「美しくなった」「元気でいてくれればそれでいい」)も感動的だが、何と言っても 「父上様」「母上様」「於一」と名乗り合う所が最大のドラマポイント。
 視聴者は主人公たちにこのひと言を言ってほしくてやきもきしている。息を詰めている。
 緊張から解放へ。
 これがドラマの呼吸だ。

★囲碁の駒
 置かれる場所によって様々な役割を演じる囲碁の駒。
 なるほど! 
 将棋は敵の陣地に入ると「金」になるという変化はあるが、役割・強さは決まっている。
 それは人物に関しても同じ。
 篤姫自身も斉彬(高橋英樹)の養女になることで役割が変わった。
 西郷(小澤征悦)らも場を与えられることで大きな役割を果たすことになる。
 囲碁を語りながら人間論を語っている。
 この作品、こうした直喩、隠喩の宝庫だ。

 またこれを今和泉の家族だけの対面の場に置いてみると面白い。
 父・母は重要な駒。次女のしのは中ぐらい。
 一方、兄・忠敬(岡田義徳)は於一の会話に出て来ない。いわばギャグメーカー。
 重い駒、軽い駒があるからシーンがイキイキしてくるのだ。
 これがみんな同じ比重だったら、感動も薄くなる。
 また中間にしのがいるから、兄のオチが利いてくる。

★篤姫と幾島
 このふたりには尚五郎(瑛太)たちとは違った信頼がある。
 「幾島、私はそちが嫌いじゃ」
 「承知してございまする」
 「薩摩を思うて泣くのはこれが最後じゃ」
 「しかと承りましてございまする」
 こういうやりとりができる人間関係はなかなかない。
 篤姫にとって幾島(松坂慶子)は自分の本音をぶつけられる相手。
 幾島にはそれを受けとめられる度量が。

 面白い人間関係だ。今後さらに分析していきたい。


 
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24 シーズンⅥ ④~⑥

2008年03月22日 | テレビドラマ(海外)
 ④ 12:00~13:00
 ⑤ 13:00~15:00
 ⑥ 15:00~17:00

★味方が敵に敵が味方に
 24の面白さのひとつは『味方だったキャラクターが敵に変じたりすること』である。
・例えば分析官のモーリス。
 テロリストの拷問に耐えられず、核の起爆装置のプログラミングに協力してしまう。
・マリリンは人質にされた息子を救うためにウソの敵のアジトを教える。結果アジトは爆破。CTUの戦術チームは全滅する。
・自らの信じる考え方によって敵に力を貸すこともある。
 大統領補佐官のトム。
 テロを防ぐ方法で大統領のウェインと対立。
 自分の意見を通すために大統領暗殺に加担する。
 液体爆弾を持った暗殺者を大統領のいるバンカーへ入れるのだ。

 まさに千変万化するキャラクター。
 オセロゲームの様に白が黒に変わり、状況が二転三転する。

 白になるか黒になるかわからない不安定さもドラマを面白くする。

 マッカーシーの情婦。
 捕らわれたモーリスにテロに加担しないよう説得される。
 彼女は核爆発に手を貸すのはイヤだと思って悩む。
 結果、彼女はマッカーシーを殺害するが、それはテロを阻止するためでなく報酬を独占するため。
 観客は情婦が白になるかと期待して見事に裏切られるわけだ。
 
 テロと戦うために自分も手を貸すというチャールズ・ローガンもそう。
 過去の経緯があるだけに彼の言うことは今ひとつ信じられない。
 彼は本当に心を入れ替えたのか、何か裏があるのではないか。
 そんな先入観をもって見てしまうため実に不安定。

 黒になりそうなキャラが白になる時はカタルシスを覚える。
 先程の大統領補佐官のトム。
 いったんは加担したものの、大統領の暗殺などあってはならないことだと思う。
 思い直すが、逆に敵に勘づかれて拘束。
 拘束されている最中にバンカーでは爆弾が爆発し、大統領は重傷。
 トムは誘惑を受ける。
 「大統領は不在。副大統領が実権を握る。そうすればトムのテロ政策を実行できる。爆発の犯人はアサドに押しつけることができる。おまえが黙っていればすべてがうまくいく」
 敵は自分の政策を実現したいトムを誘惑しているわけだが、果たしてトムは……「このふたりを拘束しろ。このふたりが大統領暗殺の犯人だ」とシークレットサービスに通報する。
 ここで観客は拍手。すっきりするわけだ。

 「24」はこの様に○→● ●→○ のドラマ作りがうまい。
 そして常に揺るがず、○として戦うのが、主人公ジャック・バウアーなのだ。


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鹿男あをによし 最終話

2008年03月21日 | その他ドラマ
★うらやましいぞ、小川隆信!
 何と小川(玉木 宏)が道子(綾瀬はるか)とイト(多部未華子)とダブルキス!
 ヒロインふたりとキスする最終回などドラマ史上なかったことであろう。

 小川×道子はまあ分かる。
 あの世の中とズレまくりのふたり、他に相手を探してもピッタリくる人は他にいないだろう。
 道子は小川を信じてくれたしね。
 小川も道子の前では自然体でいられる。長岡美栄(柴本 幸)の前では緊張しまくりだし。
 いっしょに人生を歩いて珍道中を繰り広げて下さい。

 小川×イトは許せん!いくら顔を元に戻すためとはいえ。
 もっとも自分のために他の人が犠牲になってくれたらグラッと来るよね。
 かなえられる願いはひとつだけ。
 小川はイトのために使った。

 キスの場所もロマンチック。
 道子とは奈良を見渡せる山の上。(これからデートスポットになるでしょう)
 イトとは奈良のローカル線のホーム。(なかなか趣がある駅。衆人環視の中はまずかったですけど)

★歴史
 60年前、奈良・京都・大阪に学校を作ったのは、小川と同じ運び番をやって願いをかなえられた人物だった。
 彼は願い事でお金を要求し3つの学校を作った。
 裏設定。
 この3つの学校を作った人物の思いを推理するとまたロマンになる。
 60年前にどんなドラマがあったのか知りたくなる。
 おそらく重さんのお母さんなんかが絡む壮大なドラマがあったのでは?
 これが歴史を推理する楽しみ。

 鹿の卑弥呼に対する想いも興味深い。
 卑弥呼に「美しい」と言われたことから鹿は千年以上もこの儀式をやって来た。
 かつて人間と動物にはこの様な関わりがあったのですね。
 これが冒頭の中井貴一さんのナレーションに関わるサブテーマ。
 今回、鹿は小川と友情に似た関わりを持った。
 小川との友情を胸に鹿は今後も儀式を続けていくのだろう。

 時間のことで言えば、奈良で過ごした小川の二ヶ月は濃い毎日だった。
 何しろ日本を救ったし、大和杯も獲った。
 道子とも恋人(婚約者?)も得た。
 顔が鹿に変わりイトとはキス。
 鹿とは友情。
 ドラマの時間とは緊密なもの。
 恐らく今後の小川の生涯でもこんな濃い時間はないだろう。

★最終回の藤原道子
①願いをひとつしかきいてやらない鹿に
 「おまけしてくれてもいいじゃないですか、ケチ!これから鹿に鹿せんべいあげませんからねー!」←子供か!
 道子は天然でいてなかなか頭がいい。
 鹿をしっかり見分けられる様になったし、誘導尋問で鹿から小川を元に戻す方法を聞き出した。

②小川に抱きしめられて
 「こういうことをされますと、また勘違いしてしまいますので」
 『ですます』調の美しさ。
 逆に新鮮。
 今の女性も『ですます』調を自分のボキャブラリーにして使えばいいのに。

※追記
 小川が鹿に言った。
 「さびしいか?」
 折しも玉木さんが番宣で出ていた「笑っていいとも」でタモリさんが「さびしいか?」をギャグにしていた。
 番組中、玉木さんから「さびしいか」がキイせりふで使われるフリはなかったから、これはすごい偶然。
 確認されたい方は日曜日の増刊号を見てみよう!


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あしたの、喜多善男 その3

2008年03月20日 | その他ドラマ
★善男はこんな人だった
 善男(小日向文世)は現実と向き合うことを避けてきた男だった。
 みずほ(小西真奈美)との結婚は決して美しいものでなく、保険金を得るためのものだったこと。
 近づいてくる者はすべて自分を騙し利用しようとする者であったこと。
 善男自身はそれらを知りながらも、他人に相手にされたいがために知らないふりをしてきたこと。
 偽りでも他人にやさしくしてもらうために、いい人間を演じてきたこと。
 そしてつらい過去と現実を否定するためにネガティブ善男を作り出した。

★あしたをどう生きるか?
 「ハチミツとクローバー」では過去は美しいものとして総括された。
 この作品では、過去はつらく絶望しかもたらさないものとして描かれた。
 「ハチクロ」の竹本は美しい過去を胸に未来を信じて生きていけるだろう。多少の困難があったとしても。
 では善男の様な人間はどう生きるか?
 同じヨシオである小島よしおは「そんなの関係ねえ」と過去を否定して生きることを勧めた。
 それができない人間は、喜多善男の様に自殺するしかないのか?

 宵町しのぶ(吉高由里子)は台本を読んで涙する。
 「他者を赦(ゆる)し自分を赦すことが調和につながる」
 これは死のうとする善男へのメッセージ。
 翻訳すれば、自分を利用した者(みずほ達)を赦し、現実から逃げていた弱い自分をも赦すということか?
 あらゆるとらわれを捨てよということか?
 
 平太(松田龍平)は叫ぶ。
 「逃げたいヤツは逃げればいい。弱くたってかまわない。その人間なりに必死で生きていればいい。俺がオヤジを嫌いだったのは自殺したから」
 どんなに悲惨で格好悪くても生きればいいと言う。

 しのぶも平太も結構実行困難なことを言っている。
 頭ではわかるけど現実では……という所か?
 それよりも善男が生きようと思ったのは、「生きていて欲しい」心から言ってくれる友人ができたことだろう。
 平太やしのぶは、善男の弱さも含めて受け入れてくれる。
 そばにいてほしいと言い、善男のカレーを食べたいと言ってくれる。

 この作品のスタッフさんはハードボイルドで叙情的に表現することを避けている様だが、つまる所、善男があしたを生きようと思ったのは平太らの存在だ。
 

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