平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」~おっさん、第8話に号泣した!

2024年09月13日 | ホームドラマ
 ドラマ「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」(NHK・火曜夜10時)。
 不覚にも第8話に号泣した!

 認知症の祖母・芳子(美保純)。
 娘のひとみ(坂井真紀)が重病で手術を繰り返し、車椅子生活を送っていることに対し、
 こう慟哭する。
「どうしてあの子ばかり嫌な目に遭う? 手術手術で体、刻まれて可哀想やろう。
 何で何で、もっと元気に生んでやれんかった……!」

 ひとみは芳子が認知症であることを娘の七実(河合優実)から聞かされて、
「お母さんに人生の喜びあったかな?」と嘆く。
 芳子は奉公に出され、結婚すれば姑に意地悪を言われ、夫のギャンブルで苦しみ、
 家事をやりながら働いて苦労ばかりして来たからだ。

 このひとみの問いかけに対し、七実はいつもの独特のユーモアで答える。
「あったよ。今もな。婆ちゃん、今も進化中や。進化してどんどん面白い人になっていくんや」

 芳子とひとみのエピソードはつらい話だが、この作品のすごい所は悲惨にならないこと。
 先程の七実のせりふのように、どこかユーモアがあって笑ってしまう。
 この雰囲気を味わうだけでも、この作品を見る価値がある。

 そしてクライマックス。
 退院して家に戻って来たひとみに芳子はお茶漬けを作ってこう語る。
「お腹すいたんやろ。食べて元気が一番やからな」
「ひとみ、足りるか? これも食べ。ひとみは昔からリンゴが好きやったからな」

・娘のひとみに食事をつくってあげること。
・自分のつくったものを元気に食べる娘を見ること。
 これが芳子の幸せだったのだ。

 リンゴの皮を剥きながら芳子は心の中でつぶやく。
「大事なひとり娘がわたしのつくったものを食べて大きくなって、
 大病しても生きてくれて、今もわたしのつくったものを食べてくれてる。
 わたしは幸せや」

 この芳子の言葉を聞くと、
 僕の母はどんな思いで食事をつくっていたんだろう?
 芳子と同じような思いでつくっていたのかな?
 母はどんなことに幸せを感じていたんだろう?
 などと考えてしまう。

 すべての人が心の奥底にしまっている思いをオモテに出してくれる。
「家族だから」はこういう作品だ。

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「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」~今季イチ推しドラマ! やっぱ河合優実さんってすごいな……!

2024年07月30日 | ホームドラマ
『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』
 NHK火曜ドラマ(夜10時放送)が面白い。

・突然亡くなった父・耕助(錦戸亮)
・ダウン症の弟・草太(吉田葵)
・車イス生活の母・ひとみ(坂井真紀)
 突然大動脈解離で倒れ、その後遺症で下半身不随になってしまった。

 暗いハードなドラマになりそうだが、そんなことはない。
 主人公の七実(河合優実)がこれらの困難を飄々と乗り越えて、家族の絆を紡いでいくからだ。

『不適切にもほどがある』でも思ったけど、やっぱ河合優実さんってすごいな。
 脱力系で肩の力が抜けた演技。 
 彼女がいるだけで世界が変わる。空気が変わる。
 あまりにも魅力的で、彼女から目を離せない。
 …………………………………………………………

 さてドラマを深掘り。
 もちろん七実は自分の境遇に落ち込んでいる。
 車イス生活で娘に負担をかけていることで
 母ひとみが「死にたい」と看護師に愚痴を漏らすのを立ち聞きしたりする。
 でも飄々とアクションを起こして、現状を変えていく。

 たとえば第2話。
 七実はお金持ちになるために大道芸人になろうとする。笑
 七実は「三軍女子」だが、体幹が優れているのだ。
 一流の大道芸人になるためにはアメリカに行って修行することが必要。
 そのために学校の英語教師に弟子入りして英語を徹底的に学ぶ。笑
 結局、大道芸人は諦めるが、培った英語力で、
 英語と小論文だけが試験科目の難関近畿大学の「人間福祉学部」に合格する。
 合格して七実は言う。
「やさしい社会にして、あのカフェの段差をぶっ潰す。これがあたしのやりたいことや」
 死にたいと言っていた母ひとみは合格した七実の顔を見て──
「そっか、わたし、この顔を見るための人生をいただいたんやな」

 たとえば第3話。
 家族で沖縄旅行に行った時の写真が見つかって、七実はふたたびみんなで沖縄に行こうと考える。
 その費用を捻出するため
「引っ越しのバイト」
「道路工事の交通整理のバイト」
「野球場の売り子のバイト」
 を掛け持ちする。
 引っ越しのバイトと交通整理のバイトには同じく掛け持ちしている瀬尾さん(岡野陽一)がいて、
 人生や仕事について、いろいろなことを学ぶ。
 たとえば瀬尾さん、いはく、
「人間には二種類の人間がいる。働く人間と働かない人間だ」
 ちなみに瀬尾さん、野球ファンらしく、七実が売り子をしている球場で必ず観戦している。笑
 七実はビールではなくコーヒーの売り子をしていて、最初はまったく売れなかったが、
 最後には「売れっ子のコーヒー売り」に!笑

 そして何とかお金を貯めて、家族3人で沖縄旅行に。
 思い出の沖縄の海岸で母ひとみと七実はこんな会話をする。
「ほんとうに楽しかったよ」
「そやな」
「明日からまたがんばろうな」
「そやな」
 家に帰っていつもの日常が戻って来ると、七実は「何も変わっていない」と愚痴をこぼすが、
 祖母の芳子(美保純)は言う。
「変わらないとあかんのかいな。変わらんでええ。
 昔もええ、今もええ、一所懸命食べて、一所懸命生きてればそれでええ」
 ………………………………………………

 すごいドラマだ。
 いろいろ考えさせられる、深いドラマだ。
 日常の真実を、人生の真実を、さりげなく切り取って語ってくれる。

 そして七実を始め、登場人物たちはたくましい。
 生きていく力を与えてくれる。


※追記
 七実にはさまざまな師匠がいる。
・第2話の英語教師
・第3話の瀬尾さん
・『ミナト運輸』の配送業者・陶山克哉(奥野瑛太)
・近所のコンビニの店長・持田春太(名村辰)
・旅行代理店の篠宮梓(川﨑珠莉)
 などなど。
 どこにでもいそうな人たちだが、皆プロフェッショナルで自分の言葉を持っている。

 その他、福地桃子さんが演じる七実の友達で「三軍女子」の天ヶ瀬環など、
 味のある人物が多数登場する。
 
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「コタツがない家」「いちばんすきな花」~これぞ令和のお茶の間ドラマである!

2023年11月22日 | ホームドラマ
 日本のドラマの神髄は「お茶の間」にある!
 食卓を囲んで、ああでもない、こうでもないと話しをする。
 それは「サザエさん」から続く伝統なのだ。

「コタツがない家」(水曜22時・日テレ系)の第5話の「お茶の間」シーンは秀逸だった。

 登場人物たちはそれぞれに思いを抱えて食卓を囲んでいる。
・万里江(小池栄子)~部下・師島の社内恋愛が上手くいくか。
・悠作(吉岡秀隆)~口うるさい義父・達男に早く出て行ってほしいと考えている。
・順基(作間龍斗)~同じ学校のれいらにフラれて面白くない。
・達男(小林薫) ~師島の恋に脈があるかチェックしている。
・師島(河野真也)~好きな志織が隣りにいて緊張している。
・志織(ホラン千秋)~同居した彼氏が出て行って落ち込んでいる。
・れいら(平澤宏々路)~描いた漫画が編集者に突き返されて落ち込んでいる。
・凛奈(石川萌歌)~上の事情を全く知らない万里江の部下……。

 こうした思いを抱えた登場人物たちが食卓を囲んで会話するのだ。
 
 万里江と師島は志織の彼氏が出て行ったことを知って期待する。
 れいらは同棲してどれくらいなんですか? と興味津々。
 凛奈はれいらにツッコミを入れた順基に「そんなことじゃ女の子にモテないわよ」と言う。
 達男は、万里江と悠作の結婚式の面白話を語り、それがウケて大喜び。

 話しはあっちこっちに飛び、さりげなくツッコミが入ったりしてスウイングする。
 これが楽しい!
 何だか、ひとつの舞台劇を見ている感じだ。

 ちなみに順基役をやっている作間龍斗さんは「どうする家康」で豊臣秀頼役をやっている。
 ……………………………………………………………………

 同じ食卓シーンでも「いちばんすきな花」(木曜22時・フジテレビ系)では様子が違ってくる。

 ゆくえ(多部未華子)
 椿(松下洸平)
 夜々(今田美桜)
 紅葉(神尾楓珠)
 この4人は、ゆくえと紅葉が幼なじみであること以外、まったくの他人だ。

 そして彼らは食卓を囲み、自分の「過去のトラウマ話」や「現在の苦しみ・悩み」を語り始める。
「実は僕はいい人を演じているんです」
「都合のいい人間の自分が嫌いなんです」
「わたしは母親の玩具でした」
「男女に友情は存在しないのでしょうか?」
「紅葉くんなら、このカップを選んでくれると思っていました」

 僕はこの時間を「トラウマ・タイム」と呼んでいるが、なかなかキモい。
 だって、上に書いたような会話を始めるんですよ!
 自分をさらけ出すと、まわりの人間が「自分もそうだ」と共感するんですよ!
 でも、ハマるとジワジワ来る。
 いつの間にか、この時間を心待ちにしている自分がいる。

 このシーン、会話をまわす松下洸平さんとサブでフォローする多部未華子さんが上手いんですよね。
 これに引っ張られて、若手の今田美桜さんと神尾楓珠さんがいい味を出している。

「コタツがない家」
「いちばんすきな花」
 これぞ令和のお茶の間ドラマである。
 
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「コタツがない家」「ゆりあ先生の赤い糸」~「介護」「不倫」「生産性」「LGBT」といったテーマを扱った令和のファミリードラマ!

2023年11月01日 | ホームドラマ
 秋ドラマでは「コタツがない家」と「ゆりあ先生の赤い糸」が人気らしい。
 いずれも奮闘する女性の物語だ。

「コタツがない家」の深堀万里江(小池栄子)はやり手のウエディングプランナー。
 だが、家に帰れば、
・描けなくなって、毎日ウダウダしている漫画家の夫、悠作(吉岡秀隆)
・アイドルを目指したり、大学進学を否定したりして道に迷っている息子の順基(作間龍斗)
・詐欺で無一文になった、プライドだけが高い元エリート商社マンの父・達男(小林薫)
・ネコのチョーさん がいる。
 いずれも現状、どうしようもない男たちだ。
 だが、万里江は彼らを否定しない。
 文句言ったり、怒ったりするが、最終的には彼らを受け入れている。
 苦労させられるが、彼らとの生活が楽しいのだ。
 時折、心を通わせる瞬間があったりして心地よさもある。
 どうしようもない男たちは「効率や生産性を求める現代社会」へのアンチテーゼでもある。
 ……………………………………………………………

「ゆりあ先生の赤い糸」の伊沢ゆりあ(菅野美穂)は主婦で刺繡教室の先生。
 ゆりあの苦労は「コタツがない家」の万里江どころではない。
 とんでもなくメチャクチャなのだ!
・夫、吾良(ごろう・田中哲司)はくも膜下出血で倒れて意識がなく要介護状態。
・箭内稟久(やない りく・鈴鹿央士)は五良の彼氏!←不倫相手その1
・小山田みちる(松岡茉優)は五良の彼女!←不倫相手その2
・小山田まに(白山乃愛)とみのん(田村海夏)はみちるの娘。五良のことを『パパ』と呼ぶ。
・節子(三田佳子)は五良の母で、認知症気味。昼食、夕食のことばかり気にしている。
・志生里(しおり・宮澤エマ)は吾良の妹。
 母の世話も兄の介護も自分の飼っていた小鳥の世話もゆりあに任せ切っている。
・蘭(吉瀬美智子)はゆりあの姉でメチャクチャなゆりあの生活を傍観者として愉しんでいる。

 ゆりあ先生、すごいですね。笑
 介護だけでも大変なのに、
 認知症気味の義理の母がいて、
 夫の彼氏がいて、
 夫の彼女がいて、
 その彼女には娘がふたりして、
 無責任な義理の妹とその小鳥と、茶化して愉しむ傍観者の姉がいて。
 しかし、ゆりあは負けない!
「おまえらまとめて全部愛してやる!」
 これらを全部受け入れた!

 もちろんくじけることはたびたびある。
 そんな時、頼りになるのは、
 亡き父の生き様と、いろいろ助けてくれる便利屋の伴優弥(木戸大聖)だ。
 …………………………………………………………………

「コタツがない家」の万里江、「赤い糸」のゆりあ。
 いずれもたくましい女性たちだ、
 大きな愛の持ち主でもある。
 それに比べて、男たちのダメダメなことよ……笑

「介護」「認知症」「不倫」「LGBT」「生産性」「子供おじ」といった重いテーマを扱いながら、
 コメディタッチで描いている所が素晴しい!

「コタツがない家」「ゆりあ先生」は令和のファミリードラマだ。
「サザエさん」の素朴な時代はもはや遠くなってしまったんですね。

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妻、小学生になる。~當真あみさん目当てで見ていたら、蒔田彩珠さんが昔のカノジョにそっくりだった!

2023年10月27日 | ホームドラマ
 妻を亡くしてゾンビのように無気力になった新島圭介(堤真一)と娘の麻衣(蒔田彩珠)。
 そんな彼らの前に小学生・白石万理華(毎田暖乃)が現われた。
 彼女は亡くなった妻・貴恵だという。
 実際、彼女は小学生・万理華の体を借りて現われた妻・貴恵(石田百合子)だった。
 圭介と麻衣は万理華が貴恵だとわかり、貴恵に叱咤され励まされて再生していく。
 …………………………………………………………

 面白かった!
 話自体はオーソドックスな「生まれ変わりもの」で、ラストの展開までが読めるのだが、
 登場人物たちが心を通わせ、少しずつ前進していく過程が見事に描かれている。

 まあ、見た動機は中学生作家・出雲凛音役の當真あみさん目当てだったんですけどね……。
 やっぱり當真あみさんはいい!

 でも、それだけではなかった!
 麻衣役の蒔田彩珠さん。
 蒔田さんの活躍は「おかえりモネ」「透明なゆりかご」「朝が来る」などの作品で知っていた。
 だが、ぐはっ! 
 なんと麻衣役の蒔田さんは、僕が20代の頃につきあっていたカノジョとそっくりではないか!
 もちろん蒔田さんの方が美人だと思うが、カノジョの生まれ変わりだと思った!
 いやいや、まだ死んでないけど……。

 その他にも今作には僕の好きな役者さんがいっぱい!

 堤真一さん~荒っぽいおっさんからこういうダメおっさんまで上手いですよね。
 石田ゆり子さん~安定のゆり子さん。好きです!
 吉田洋さん~どうしても怖いお母さん役でキャスティングされがち。笑
 森田望智さん~「全裸監督」では黒木香役。「3年D組」「モネ」にも出ていた。上手い方ですね。
 杉野遥亮さん~「俺の話は長い」「白杖ガール」「どうする家康」など、
         最近、いろいろな作品で顔を見るなぁ。
 飯塚悟志さん~東京03では角田さんが注目されがちだが、
        飯塚さんが登場すると作品の雰囲気がガラリと変わるんですよね。
 そして、
 神木隆之介さん~朝ドラ『らんまん』主役が、ダメな弟役で出ていた!

 まさにキャスティングの妙。
 これだけのキャストが出ていて面白くならないわけがない!

 そして!
 これだけの俳優陣を相手にして、見事に母親役を演じたのが、毎田暖乃(まいだ のの)さん。
 弱冠12歳!
 12歳なのに上記の俳優陣に負けていないどころか食っている。
 彼女に魅力がなければ、この作品は死んでしまうのだが、そんな懸念を完全に払拭。
 最近、どんな作品に出ているんだろう? とwikiで調べたら、
『シッコウ!!』の6話に出ているらしい。
『シッコウ!!』は第2話までしか見ていなかったが、ネトフリにあったから見てみよう。

 というわけで、またひとつ良い作品にめぐり会えました!

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「俺の話は長い」~ボケとツッコミ、雄弁な屁理屈、さけりげない心の触れ合い──実に楽しいホームドラマだった!

2023年10月07日 | ホームドラマ
 家族の何気ない日常を描いたドラマである。

 生田斗真、小池栄子、安田顕、清原果耶、原田美枝子。
 芸達者な役者さんによるせりふの応酬が楽しい!
 ボケとツッコミ。
 ひとつのボケに他の3人から一斉にツッコミ。
 雄弁に語られるウンチク。
 おかしなこだわり。
 ボソッと漏れる本音。
 さりげない心の交流。
 やはり会話劇は楽しい!

 全編を通して展開される物語は──
・ニートの満(みつる・生田斗真)の自分のやりたいこと探し。
 ただし満は現在の境遇にまったく卑屈になっていない。
 雄弁に語り、理論的に現在を肯定している←ここがミソ!
・春海( 清原果耶)の恋愛話と進学話。
・春海と義理の父・光司(安田顕)の距離~素直に「お父さん」と呼べない。
・昔、プロのベースのギタリストだった光司の音楽へのこだわり。
・きつい綾子(小池栄子)に対する満と光司の共闘。
・ニートの実を心配する母・房枝(原田美枝子)。
・房枝の恋愛話~ただし房枝にはまったくその気がない。

 これらがシンコクにならずに、
 縦糸、横糸として絶妙に編み込まれて楽しいホームドラマになっている。
 上手い脚本だ。

 5人の家族は日常の出来事を通して少しずつ距離を縮めていく。
 満と春海は伯父と姪の関係である。
 満と光司は義理の弟と兄で血のつながりはない。
 春海と光司も、もとをただせばアカの他人だ。
 そんな彼らかけがえのない存在になっていく。
 その過程が心地いい。
 ………………………………………………………

 さて主人公の満。
 彼を少し深掘りしてみよう。

 満は6年前にコーヒー店を起業して挫折。
 それ以来、ニート生活を送っている。
 とはいえ彼は、先程書いたように、少しも卑屈でない。
 それどころか雄弁で、屁理屈のかたまりだ。
 ひとつ間違うとイヤなやつになってしまうのだが、
 そう視聴者に感じさせない所が、役者・生田斗真の上手い所。

 でも実は、満は心の奥底で悩んでいるんですね。
 6年前の挫折のせいで新しい一歩を踏み出せないでいる。
 踏み出すのが怖いのだ。
 コーヒー店にもこだわりがあって、新しい目標を見つけられずにいる。
 満が雄弁で屁理屈のかたまりなのは、元々の資質もあるが、自分を守るため。
 ハリネズミが背中にハリを立てるように、言葉でガードしている。

 そんな満の背中を押したのは、
 満と一時、恋仲になった実業家・三枝明日香(倉科カナ)の言葉。
 明日香の言葉は短くてシンプルだった。
 ただひと言。
「やれ」
 たったこれだけの言葉が満の屁理屈を打ち砕いた。

 そして家族の応援、思いが背中をさらに押して、満がともかくやってみようと思った。

 考えてみると、今作の5人の家族は前に向かって少しずつ歩いている。
 満に対してきつい綾子も夫と娘を変えてくれた満に感謝の言葉を述べた。
 夫の光司のすべてを受け入れ、光司の好物のロールキャベツをつくった。
 その歩みは遅々としたものだが、
 この家族はこれからもバカ話をしながら前進していくのだろう。


※追記
 さて、これから日テレ系の秋ドラマとして『コタツのない家』が始まる。
 主演は小池栄子さん。
 脚本は『俺の話は長い』を書いた金子茂樹さん。
『俺の話は長い』では、「コタツは世界平和をもたらす」「床暖房の家はつまらない」というせりふがあったが、これは期待だ。
『コタツのない家』は『俺の話は長い』の系統の話になるに違いない。

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「私の家政婦ナギサさん」「親バカ青春白書」~おっさんがモテる時代がついに到来!?

2020年09月08日 | ホームドラマ
 普通のおじさん”が若い女性にモテるドラマが話題となっている。

『私の家政夫ナギサさん』
 相原メイ(多部未華子)は家政夫・鴫野ナギサ(大森南朋)と結婚。
『私の家政夫ナギサさん』の〝家政〟が取れて『私の夫ナギサさん』に!
 このふたり、まさか結婚まで行くとは思わなかったよ。
 本日(9/8)はふたりの結婚生活を描いた2時間SPが放送!
 
『親バカ青春白書』
 小比賀太郎(ムロツヨシ)は衛藤美咲(小野花梨)にアプローチされている。
「あたし、ガタローのカノジョに立候補しちゃおうかな?」
 第6話ラストでは酔った勢いだけど、ガタロー、美咲にキスされちゃった!

 さて、この2作品を見ての僕の感想だが──
 つ、ついに、おっさんの時代が来たか!
 今まで忌み嫌われてきたおっさんがついに輝く時が!
 つまり僕もモテる!

 んなわけあるかーーっ!
 勘違いしてはいけない。
 現実とフィクションを混同してはいけない。
 シビアに現実を見つめよう。

 しかしな。
 平凡で毎日が同じように流れていく日々の中、
 勘違いして、すこしくらい夢を見たっていい気もする。

 フィクションは生きていく上でのビタミン剤なんですよね。
 ナギサさんやガタローがモテてるのを見て、
 もしかしたら……と勘違いし、明日はもう少しがんばって生きてみようと思う。

 まあ、僕の美学は『男はつらいよ』なんですけどね。
 こんなヤクザな男を好きになっちゃいけねえ。
 愛する女性の幸せを願って身を引く。
 このやせ我慢。
 人生は涙と哀しみ。

 でも、『親バカ青春白書』のガタローのように、ときどき青春したくなる。


※関連記事
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義母と娘のブルース 新春SP~育児×親子×ビジネス 楽しくて、育児問題も提起した、いいドラマでした!

2020年01月04日 | ホームドラマ
 相変わらずの亜希子さん(綾瀬はるか)でしたね。

 大阪でのビジネスはボケとツッコミが要求され、高度なコミュニケーション能力が要求される(笑)
「考えとくわ」は「考えないこと」と同意(笑)
 ソースの二度づけ禁止には裏技がある(笑)

 そんな大阪で大活躍の亜希子さんだったが、プレゼンの失敗の責任を押しつけられてクビになり、東京へ。
 そして始まるドタバタ劇!
 ………………

 この作品、登場人物が自由自在に動きまわっていますね。
『うる星やつら』などの漫画家・高橋留美子さんは、
「キャラクターが作者の手を離れて自由に動きまわった時、作品は面白くなる」
 みたいなことを語っていたが、今作もまさにそれ。

 捨て子の赤ん坊(通称・専務)を亜希子さん、みゆき(上白石萌歌)、店長(佐藤健)たちの中に放り込んだら、彼らはどんなリアクションをするか。
 作家はそれをただ書き留めていけばいい。
・亜希子さんは子育てのノウハウを実践を通してシステマティックに学んでいき、子育てにニーズがあることを知り、ビジネスに昇華していく。
 おまけに母乳まで出してしまう(笑)
・みゆきは自分のかつての境遇を重ね合わせて、どうしたら専務が幸せになるかを考える。
・店長はDNA鑑定をするために専務の髪の毛を抜こうとし、亜希子さんと結婚するために父親の口の粘膜を採りにいく(笑)
 このような作品が面白くないわけがない。
 育児と親子関係とビジネスを上手く掛け合わせているのもお見事!

 現在、育児は考えるべき社会問題となっている。
 シングルマザー、シングルファーザー、共働き。
 社会インフラは不十分で、親戚や近所とのつき合いがなければ、そんな方々にとって育児は本当に大変。
 先日もシングルファーザーの方の痛ましい事件があった。

 だから、亜希子さんが考え出した『スポーツクラブで子育て支援』、いいアイディアだと思う。
 僕の通っているスポーツジムには子育てを終えた年配の方がたくさん来ている。
 彼女たちは子育てのプロだ。
 そんな人たちがポイントと引き換えに、出来る範囲で子育てを手伝ってくれたら。
 スポーツクラブだから子供のための場所も広く確保できるし、マタニティヨガなどもレッスンに組み込める。
 要は、こういう場所の提供と人材のマッチングなんだよなあ。
 ところが、国がやると、規制とルールに縛られてたちまち柔軟性を失う。

 この作品、親子のドラマですが、今回は社会派ドラマでもありました。
 専務の父親が子を捨てるまでの葛藤や苦悩もていねいに描かれていたし。
 こういうドラマがもっと増えるといいですね。

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ひよっこ 最終回~出会いの物語。出会いを大切した結果、こんな豊かな人間関係が築かれた

2017年09月30日 | ホームドラマ
〝出会い〟の物語でしたね。

 さまざまな出会いがあって、さまざまな人と関わりながら人は生きていく。
 そして、宗男おじさん(峯田和伸)が言っていたように、
〝悲しい出来事も良い出会いが変えていく〟

 この言葉が作品全体を集約している。

 みね子(有村架純)たちの出会いはほとんどが偶然だった。
 たまたま入った洋食屋がすずふり亭で、滑り込みで就職した工場が向島電機で、たまたま入居したのがあかね荘。
 人間の出会いとは、こういう偶然の積み重ねなのだろう。
 そして、最初は奥茨城の小さな人間関係だったのが、最終回ではこんなに大きくなった。
 みね子がひとつひとつの出会いを大切にしていった結果だ。

『さよならだけが人生だ』って言葉があるけど、『出会いこそが人生』なんじゃないのかな?

 重箱は最後に絶対、出ると思った。
 何しろ唯一、解決していない案件だったから。

 みね子たちには明るい未来がある。
 では、50年後の2017年はどうなのだろうか?
 みね子たちのようにキラキラしていない気がする。

 ノスタルジーとファンタジーですね。
 でも、自分や社会にまとわりついている垢を落としていけば、みね子たちの世界に行けるかもしれない。

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過保護のカホコ~〝愛情の貯金〟がいっぱいの加穂子が現実に触れた時、世界は光り輝く

2017年07月13日 | ホームドラマ
 加穂子(高畑充希)はずっと現実に触れずに生きてきた。
 現実に触れそうになると、母・泉(黒木瞳)がそれを見せないようにするのだ。
 理由は、加穂子に挫折を味合わせたくないから。
 就職できないという挫折も、「だったら花嫁修業をすればいい」と方向転換してなかったことにしようとする。

 そんな香穂子の閉ざされたドアをたたく者が現われた。
 同じ大学の麦野初(竹内涼真)だ。
 彼は半ばキレて問いかける。
「お前のような過保護な人間が日本をダメにする!」
「そもそもお前は何のために働くんだ?」
「お前はいつ親から自立するんだ?」
「お前はいつまでも竜宮城にいて、子供のままでいたんだよ!」

 ドアを叩かれて、加穂子は考え始める。
「過保護って何?」
「自立って何?」
「わたしは就職活動をしているけど、何のために働くの?」
 ………………

 面白い設定ですね。
 脚本の遊川和彦さんって〝社会派〟の脚本家さんだと僕は思っているんですけど、今、なぜ遊川さんは〝過保護〟を描こうと思ったのか?
 高畑充希×遊川和彦のコラボが、どのような相乗効果を生むのか、も楽しみ。
 父・正高(時任三郎)のツッコミが入りつつのナレーションも面白い。
 竹内涼真さんは役者としてどんどん上手くなっている感じですね。
 朝ドラ『ひよっこ』の島谷さんとは雰囲気が大きく違う。
 かたや真面目で誠実な大学生、かたや少し屈折した大学生で、役柄を見事に演じ分けている。
 ………………

 さて、加穂子。
 彼女には、ふたつの良い点がある。

 ひとつは、こうと決めたら、とことんやり抜くこと。
 ティッシュ配りもピザの配達も、疲れることも疑うこともせずに一生懸命やる。
 心の奥底で、「何のために働くのか?」もずっと考え続けている。

 ふたつめの良い点は〝愛情の貯金〟がいっぱいあること。
 両親や親戚に愛され続けてきた加穂子の心の中には、愛情がたくさん貯まっている。
 普通の人の愛情残高が10万円なら、加穂子の場合は100万円。
 そんなたくさん詰まった愛情が外に向かって吐き出される時、世界は光り輝く。
 現に今回、麦野は加穂子に浄化され、絵描きとして生きる決心を新たにした。

 何のために働くか、という問いに、人を幸せにするために働く、という答えを見出した加穂子。
 加穂子は現実世界で何を見て、何を感じ、まわりにどんな影響を与えていくのだろう?

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