平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

東京電力よ、すべてを明らかにせよ。

2012年02月29日 | 事件・出来事
 福島原発事故独立検証委員会の調査・検証報告書が発表された。
 マスコミ報道などで把握している限りだが、政府、東京電力の対応はひどい。
 放射能の拡散を予測するシステム・SPEEDIの存在を官邸は、マスコミに指摘されるまで知らなかったのだそうだ。
 膨大な予算をかけたシステムも活用されなければ、ただの無駄。本当に情けない。
 菅元総理の無能・無策は尖閣列島漁船衝突事件で理解していたが、この原発事故でも遺憾なく発揮。
 周囲を信じない狭量、過剰な介入、無用の混乱……。
 まあ、菅総理の方にも言い分があるだろうから、これ以上は控えるが、<リーダーになってはいけない能力の人がリーダーになって、右往左往している>という感じだろうか。

 さて、今回のことで引っ掛かるのは、東京電力の幹部の対応だ。
 彼らは独立検証委員会の聞き取り調査に応じなかったらしい。
 菅総理を始めとする政治家は応じたのに。
 これはひどい。
 「何かを隠している」「明らかにされたらされたらまずいことがある」ので、聞き取り調査に応じなかったと言われても仕方がない。
 実際、自分たちの対応が正しかったのであれば、胸を張って聞き取りに応じるはずでしょう。
 機会が与えられたのだから、堂々と自分の正しさを主張すればいい。
 それは、今後起きるかもしれない原発事故の教訓にもなる。
 すべてを明らかにして「あの時の、あの判断が間違っていたから改めよう」という姿勢こそが大切なのではないか。

 ジャーナリストの上杉隆は「東京電力に司直の捜査が入らないのはおかしい」と主張されていた。
 ユッケ事件の時はその焼き肉チェーン店を警察が捜査したのに、あれだけの被害をもたらした東京電力に捜査の手が入らないのは不公平だ。
 捜査で、自然災害と人災の区別を明らかにして、人災の部分は、立件は難しいかもしれないが、法廷の場で問われるべきだ。
 東京電力が自ら問題を明らかにしないのであれば、そうするしかない。

 それから電力料金の値上げ。
 この点に関しては、私の不平不満の部分もあるのだが、勘弁してほしい。
 消費税もおそらくあがるのだろうし。
 現状では一般家庭の値上げはないようだが、企業の電気料金が上がれば、それは商品の価格に転化されてわれわれにも跳ね返ってくる。
 東京都の猪瀬副知事や城南使用金庫、世田谷区は<脱東京電力>を行っているが、電話の一社独占がなくなって、携帯電話料金が競争で安くなったように、電力も自由化すれば、きっと安くなる。
 電力を供給するために各社は努力して、効率的に電力を作る技術を開発するはず。
 携帯電話やそのサービスが競争でどんどん進化していったように。
 それが<脱原発>にも繋がる。

 あとは東京電力の経営の問題。
 東電は、社員の給料をカットし、すべての資産を売却したと言っているが、まだ売るものがある。
 たとえば、送電網。
 現状では法的に難しいことだとは思うが、東京電力は電線などの<送電>部分を売却し、<発電>するだけの会社になったらどうか。
 東電の方はおそらくとんでもないと言うだろう。
 しかし、あなたたちは原発事故を起こしたのである。
 <原発事故を起こせば、会社が傾き、送電網を手放すことになる>くらいの覚悟と認識を持っていれば、もっと原発の安全のために設備投資をしていたはず。
 
 ということで、ともかく東京電力の顔が見えない。
 何を考えているのかがわからない。
 現状を維持するために、何かを隠しているとしか思えない。
 このまま、うやむやにしてやり過ごそうとしているのなら、きっと同じことが起きる。
 すべてを明らかにすることこそ、未来に繋がると思うのだがどうだろう?


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サワコの朝~生物学者・福岡伸一 「遊んでいる遺伝子があってもいい」

2012年02月28日 | ドキュメンタリー
 2月25日の『サワコの朝』(TBS系・土曜朝7時30分)で、分子生物学者の福岡伸一さんが出演されていた。
 そこでのお話。
 福岡先生に拠れば
 「細胞は他の細胞との関係の中で、折り合いをつけて、自分の役割を決めている」らしい。
 たとえば
 「君が脳細胞をやるなら、僕は皮膚細胞をやるよ」みたいな感じ。
 私たちの体を構成している個々の細胞は、こんなふうに他の細胞との関係を考えて役割分担をしている。
 決して「君は脳細胞にふさわしくない」とか「僕が脳細胞をやる」とかは言い出さない。
 そして、過度に自己主張する細胞は<ガン細胞>なのだそうだ。

 この<役割分担する細胞>の話は興味深い。
 これって、まさに<人間社会>と同じではないか。
 たとえば、野菜を作る農家の方がいて、それを流通させる運送業者の人がいて、売るスーパーや八百屋さんがいて。
 もっとマクロに見てみれば、個々の人々が自分の役割を果たして、日本という国が構成され、地球の人類というものが成立している。
 つまり個人は<人類という生き物>の細胞なのだ。
 なので、ヒトラーみたいな過度に自己主張する細胞は<ガン細胞>?
 実際、それはガン細胞が増えていくように、ナチスという形で増殖していったし。

 こうなると、福岡先生の理論は、歴史学であり、哲学ですね。

 福岡先生は若者に対してもこんなメッセージを贈られていた。
 「人は他者との関係を作りながら、自分が何者であるかを決めていく。なので自分探しを自分の中に求めても何も得られない」
 確かに。
 自分は<夫>である。<母>である。<子>である。<学生>である。<フリーター>である。<農家>である。<トラック運転手>である。<八百屋>である。
 こんなふうに社会の中で、自分が果たしている役割が、すなわち<自分>なんですね。
 当たり前のことを言っているようだが、このことに気づかずに虚しい<自分探し>をしているのが人間。
 そして人は、
 <人類という生き物の細胞の一部として、過度に自己主張せず、自分の役割を果たしていけばいい>。
 こう考えると、人は結構楽に生きられるような気がする。

 福岡先生は遺伝子についてもこんな話をされていた。
 「遺伝子は生めよ、増やせよで設定されているわけではない。遺伝子はもっと自由で、遊ぶ遺伝子もある。遊ぶ遺伝子は、他の遺伝子が生殖が行っているのなら、自分は遊んでいてもいいと考える」
 これは衝撃だった。
 なぜなら僕は、遺伝子は<種の保存>という形で設定されているものだと考えていたから。
 つまり、人の生きる目的って<子孫を作って残すこと>ではないかと考えていた。
 でも、そうでなくていいんですね。
 <遊ぶ遺伝子>であってもいい。
 あるいは「これ以上、人類が増えては困るから、遊ぶ遺伝子を増やしておこう」「じゃあ、僕は遊ぶ遺伝子を担当するよ」と遺伝子レベルでさまざまなことが考えられているのかもしれない。

 というわけで、福岡先生の細胞理論は実に面白かった。
 すべてが行き詰まっている現代。
 現代は、このような科学、歴史学、経済学、政治学、哲学など、すべての学問を統合する新しい理論が求められている。


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平清盛 第8回「宋銭と内大臣」~何と豊かで生き生きとしておるのじゃ!

2012年02月27日 | 大河ドラマ・時代劇
 宿敵登場! という感じですね。
 宿敵とは藤原頼長(山本耕史)。
 「そなたの料簡を知りたかっただけじゃ。これだけの証拠を突きつけられながら、ひるみもせず、詫びもせず、それどころか法を罵り、浅はかな考えにて、国の仕組みを変えよと求める。私はこれより、そなたのようなものを粛正するべく、法を整え、政を行う」
 頼長は体制側の人間。
 法を厳格にして、横行する悪を根絶しようとする立場。
 現状の腐敗した、ふやけた政治を守ろうとするのではなく、政治の力を強くして、世の中を自分の才覚のもとに管理していこうとする立場。
 現在で言えば、志の高い<霞ヶ関の官僚>だ。

 一方、<規制緩和>しようとするのが清盛(松山ケンイチ)。
 宋との貿易を官が管理するのではなく、民間に自由に任せろという立場。
 その方が、経済が活性化し、民がうるおい、イキイキとするという立場。
 信長の楽市楽座のさきがけみたいな感じかな。

 というわけで大河ドラマに経済の要素を持って来たのが面白い。
 大河ドラマの登場人物が権力者である以上、<経済>を描かないのはやはりおかしい。
 平家が密貿易をしていることがバレてもお咎めなしなのも、武家としてそれなりの発言力があるのも<豊かな経済力>が背景にあるからなのだ。
 この点、『平清盛』は骨太だ。

 <文化>が描かれるのも面白い。
 毎回、佐藤義清(藤木直人)を要として紹介される和歌。
 今回描かれた菊酒。
 前回、清盛が枝に歌を結んで、明子(加藤あい)に気持ちを告げたのも実に雅。←代作でしたが……

 このように実に内容豊かな『平清盛』。
 脇役たちの描き込みもしっかりしている。
 璋子(檀れい)と得子(松雪泰子)も葛藤も<水仙と菊>で見事に表現されている。
 兄・清盛と対照的な、家のために結婚相手を決めてしまう家盛(大東駿介)の描き分けもいい。
 源氏パートは今回はコメディ。
 義朝(玉木宏)は東国の荒くれどもと戦っているのを「いい武芸の鍛錬になる」と強がり。
 由良姫(田中麗奈)は「○○○と父が申しております」とツンデレ。
 高階通憲(阿部サダヲ)は何となく清盛の軍師みたいな感じだし、兎丸(加藤浩次)はかっこいい。
 兎丸は清盛に言う。
 「落とし前をつけてもらおうか。いつかお前が作れ。宋と商いをしてイキイキと豊かな国を。その手伝いだったらしたってもいい」
 もってまわった言い方をして、みんな素直じゃないんですね。

 そして最後に、清盛の屋敷は、みんなが<バカ笑い>をして実ににぎやか。
 これは陰謀うずまく宮廷とは実に対照的だ。

 今回は、清盛に経済人・政治家としての顔が見えてきた話でした。


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最高の人生の終わり方~現在の自分を肯定すること

2012年02月24日 | 職業ドラマ
 人生で幸せになる方法は<現在の自分を肯定すること>だと何かの本で読んだことがある。
 晴香(前田敦子)の場合もそうだった。
 足が悪い晴香。
 同年代の女性と同じ様な生活が出来ない苦しみ。
 なのでブログには、23歳OL、趣味はジョギングと偽りの姿を書いてしまう。
 でも、これらはすべて<現在の自分の否定>だ。
 これでは少しも幸せになれない。つらいばかりだ。

 だが、小学校時代の恩師・白井幸造(竜雷太)の葬儀を仕切って、こんなことを晴香は考えた。
 足が悪かったから、こうして白井先生の葬儀を行うことが出来た。もし悪くなければ、普通にOLをやっていて白井先生の死に関わることがなかったかもしれない。
 足が悪かったから、現在葬儀屋の仕事をしていて、さまざまな人に「ありがとう」と言われる。
 人の痛みをより深く感じることが出来て、<真心をこめた仕事>をすることが出来る。
 あるいは足が悪かったから、真人(山下智久)たち兄弟とひとつ屋根の下で暮らすことが出来る。いっしょにご飯を食べることが出来る。
 腹が立って兄弟ゲンカをすることもあるが、それも含めて家族だ。
 そばに家族がいることは有り難い。
 このような<自分の肯定>。

 すべては原因があって結果がある。
 <足が悪いこと>が、<葬儀屋の仕事をして「ありがとう」と言われること><人の痛みを深く感じること><兄弟といっしょに暮らせること>という結果に繋がっている。
 だから<足が悪いこと>も含めて、自分を肯定しようという考え方。
 晴香はきっと今後は胸を張って、前向きに生きていくことが出来るだろう。

 最後に。
 晴香がブログに書いた<ラッキーアイテムは四つ葉のクローバー>は偽りでなく、真実だったんですね。
 これについてはさまざまな分析が出来るが、晴香はきっと<偽りの自分>だけではつらかったのであろう。
 一ノ瀬に<本当の自分>を語りたい、知ってほしいという想いがあった。
 <ラッキーアイテムは四つ葉のクローバー>は、こんな晴香の想いが込められた言葉だったんですね。


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『切り裂きジャック・百年の孤独』と『6つのナポレオン』

2012年02月23日 | 小説
 19世紀ロンドンで起こった切り裂きジャック事件。
 6人の娼婦を惨殺した<切り裂きジャックの正体>については未だに謎で、さまざまな推理がなされている。
 『切り裂きジャック・百年の孤独』(島田荘司著・集英社文庫)も、ジャックの正体にスポットを当てた作品だ。
 島田さんの筆による<切り裂きジャック事件>の真相はおおまかに言うと以下のようになる。

 以下、ネタバレ。



『ジャックの正体はマリアという娼婦。
 動機は6人の娼婦のうちの誰かがのみ込んだダイヤモンドを回収するため。
 マリアはダイヤモンドを回収するため、6人の娼婦の腹を切り裂いたのだ。
 変質者の殺人に見えたこの事件の真相は猟奇殺人でも何でもなく、のみ込んだダイヤモンドを取り出すという実利的な単純なものだった。
 ただ遺体が無惨な姿だったので、まわりがセンセーショナルに扱い、<犯行声明文>を面白がって警察に送る愉快犯も登場して、事件はますます複雑になった』

 これが<切り裂きジャック事件>の真相。
 実にミステリー作家らしい切り口である。
 この作品を読んだ時、「なるほど、そういう手があったか」と思って感心した。

 さて、ここで本日の本題。
 最近、シャーロック・ホームズの『6つのナポレオン』という短編を読んだ。
 これは、<6つのナポレオンの石膏像が次々と壊されていく>という事件。
 ナポレオン像はなぜ壊されるのか?
 ここでホームズが明らかにしたのは、ナポレオン像の中に盗まれた<黒真珠>が隠されていたから。
 犯人は<黒真珠>を回収するため、石膏像を壊していった。

 もう、お気づきだとは思いますが、『切り裂きジャック・百年の孤独』と『6つのナポレオン』は事件の内容・犯人の動機という点で酷似している。
 『切り裂きジャック』の場合は娼婦で、『6つのナポレオン』の場合は石膏像。
 『   〃    』の場合はダイヤで、『   〃   』の場合は黒真珠であっただけの違い。

 推測だが、島田荘司さんは『切り裂きジャック・百年の孤独』の着想を『6つのナポレオン』から得たのではないか。
 もちろん『切り裂きジャック・百年の孤独』は優れた作品で、『6つナポレオン』のパクリなどと言うつもりはないが、ここに<作家の創作の秘密>を垣間見たような気がする。
 作家はこんなふうにして、既存のものを換骨奪胎して自分のものにし、まったく新しい作品を作っているのだ。

 こんなふうに作品成立の背景について、推理・分析してみるのも、作品の楽しみ方のひとつですね。


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『運命の人』の原田泰造さんと『最後から二番目の恋』の益若つばささん。

2012年02月22日 | 監督・俳優・歌手・芸人
 『運命の人』の三木琢也役の原田泰造さんっていいですよね。
 妻・三木昭子(真木よう子)を寝取られた病気療養中の元外務官僚。
 自分の境遇を嘆いてばかりで、昭子でなくてもいっしょにいて息が詰まりそうな人物。
 昭子のことを愛しているのだろうが、幼児性が抜けきれず、愛情表現が嫉妬や独占欲など、すべてが負の形で出てしまう。
 そんな屈折した人物を原田さんは見事に演じきっている。

 実際、三木琢也という役は難しい。
 やり過ぎるとホラー映画の狂気の男になってしまうし、出世コースから外れたプライドの高い官僚の悲哀、支配したいと思っている妻に食べさせてもらっている屈辱、同時に昭子を求める心など、さまざまなことを短いセリフと出番の中で表現しなければならない。

 『最後から二番目の恋』の人気脚本家・栗山ハルカを演じている益若つばささんもいい。
 ハルカはこんな女性。
 生活臭がなく、何を考えているのかわからないあっけらかんとした女の子でありながら、しっかり結婚している。
 脚本が書けなくて悩んでいるのかと思いきや、実は他のテレビ局の脚本を書いている。
 そんなしたたかさを持ちながら、その脚本を間違って、千明(小泉今日子)の所にメールで送ってしまう軽率さもある。
 確か益若さんも結婚されているんですよね。
 そんな現実のプライベートもオーバーラップして、ハルカという役は益若さんにピッタリ。

 『運命の人』の原田泰造さんといい、『最後から…』の益若さんといい、上手いキャスティングに出会うと拍手したくなる。
 バラエティのタレントさん、モデルさんがそのキャスティングに応えて、いい演技をしてくれると嬉しくなる。(原田さんなどは役者としての実績をすでに作られていますが)

 その人でなければ出せない雰囲気がある。
 その人でなければ出来ない役柄というものがある。
 役者さん、タレントさんがそういう役柄に出会えた時は最高の喜びであろう。


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SP 革命篇~国民と向き合って、国民に詫びを入れろ!

2012年02月21日 | 邦画
 占拠された国会でテロリストたちを撃ち倒すべく暗躍する井上(岡田准一)たちSP。
 これは『ダイハード』ですね。
 占拠されたビルで次々とテロリストを倒していったブルース・ウィリスのマクレーン刑事と同じ。

 さて、国会を占拠した尾形(堤真一)たちテロリストの目的とは、政府の閣僚に自分がやってきた不正を語らせること。
 尾形は閣僚たちに叫ぶ。
 「汚職と派閥争い、失政のツケを国民にまわしてきたことを認めろ!」
 「この国をあやしくしているのは貴様らだということを認めろ!」
 「最後に国民と向き合って、国民に詫びを入れろ!」
 これって、何となくわれわれが政治家に対して思っていることですよね。
 「尾形さん、よく言ってくれた」という感じ。
 なので、尾形たちのしたことって、もしかしたら<正しいこと>ではないかと思えてしまう。
 もちろん、国会占拠・クーデターという手段は市民感覚からはかけ離れているし、間違っている。
 しかし、政治家がしてきた不正を明らかにすることは間違っていない。
 ただ手段が強引であっただけ。
 あるいは多少、強引でなければ世の中は変えられない。
 そうなると、逆にSPの井上たちはただの<国家の犬>で、井上たちの戦いこそ違うのではないかと思えてくる。
 このように何が<善>で、何が<悪>かって、相対的なもので、状況が変われば、<悪>も<善>になり得るんですね。
 ちなみに尾形が、閣僚を守ろうとする井上に問いかけた言葉は、「この連中に命をかける価値があるのか?」
 これに対する井上の返事は「SPの職務と名誉には命をかける価値がある」というもの。
 ちょっと理由としては弱い。

 そして、このテロ事件の黒幕。
 それは霞ヶ関の若手官僚たちだった。
 彼らはこの占拠事件をテレビを見ながら観戦している。
 霞ヶ関の官僚が悪で、背後で糸を引いているというのは、使い古された図式だが、彼らが発した言葉はなかなか面白い。
 事件の解決に動き始めた各省庁については「彼らは結局何もしないよ。やっているふりをして、動きまわっているだけだ」
 事件によって与党幹事長の伊達(香川照之)をヒーローにし、伊達を傀儡にして自分たちの手で国を動かそうとすることには「壊すことは愉しく、支配することはもっと愉しい」
 描かれている官僚の姿は類型的だが、こういうせりふを言わせることでリアリティが出て来る。いいせりふだと思う。

 いいせりふと言えば、こんなものも。
 尾形たちの占拠に対し、「こんなことはやめろ!」と叫ぶ国会議員に対し、尾形は言う。
 「それは本物の勇気か? それとも腐った虚栄心か?」
 国民に対して尾形は「覚醒せよ! 自分の頭で考えて立ち上がれ!」

 尾形の言葉は妙に突き刺さる。
 これは要するに、現在のどうしようもない政治に対する怒り・諦め、<政治不信>ということなのですが……。


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平清盛 第7回「光らない君」~楽しき時も苦しき時も、共に面白う生きていきたい。

2012年02月20日 | 大河ドラマ・時代劇
 前半はコメディ。

★光源氏のような殿方が現れるのを願う時子(深田恭子)の前に「厠はどこじゃ~!」と現れる清盛(松山ケンイチ)!
★明子(加藤あい)の話を聞いて、「そのお方はまさに光る君、高貴なお方」と夢想する時子の前に現れる清盛!
★佐藤義清(藤木直人)に妻がいることを聞いて、「そうか、妻が」とつぶやいて、その後に「ええっ!」と驚くノリツッコミの清盛!
★「どうかまた(明子に)会えますように」と神に手を合わせる清盛の後ろに現れる明子!
★明子からの返歌を読む清盛。その感想は「さっぱりわからんぞ!」。

 この5つのギャグ、全部オチを予想できてしまう<ゆるさ>がいい。
 大河ドラマのギャグのキレはこんなもんでしょうね。

 しかし、後半はストレート。
 「歌など交わすのは性に合わぬ」と乗り込んできて清盛は「代作」を詫び、結婚を申し込む。
 明子が不安を口にすると
 「みくびるでない!俺が住吉明神のお導きでそなたを思うておると申すか? 俺は、そなたと会うた時、なんと清げなる女かと思うた! そなたの夕餉を食い毎日食いたいと思うた! 海賊やから船の話に目を輝かせているそなたを見て、生涯俺のそばにおってほしいと思うた! 俺は、俺の心に従い、そなたを妻にしたいと申しておるのじゃ!」
 とまっすぐな剛速球をぶつけた。
 このあたりは実に清盛らしい。

 これを受けた明子のせりふも上手い。
 「海に行きとうございまする。清盛様の目に映る広い広い世界を見とうございまする」
 明子は清盛の<海>の話に惹かれていたんですね。
 同じ話を「おなごにそのような恐ろしい話するのですか」とリアクションした時子とは大きな違い。
 そう言えば、清盛が明子に海の話をしたシーンの、橋と緑の木々は美しかった。
 映像のことがいろいろと話題になっているこの作品だが、ワンシーンにこれだけ作り込んだ情景を見せてくれることを評価すべきであろう。

 そして一族への紹介。
 忠盛(中井貴一)に明子のどこに惹かれたのかと聞かれて、清盛は堂々と答える。
 「明子殿は、つまらぬ戯言に惑わされることなく、どんな事もおのが力で乗り越えようとするおなごです。かようなお人と、楽しき時も苦しき時も、共に面白う生きていきたい。そう思いましてござりまする」
 まだまだ子供の清盛にしては立派すぎる発言だが、これが<夫婦>というものでしょうね。
 <楽しき時も苦しき時も、共に面白う生きていきたい>。
 <楽しき時>は、まだいいとして、<苦しき時>は関係が壊れがち。
 苦しい時に共に歩むから、本当の絆が出来る。

 この点、物語の中にいる時子はまだまだですかね。
 物語の世界が崩れて、厳しい現実が現れた時、おそらく夫への想いが覚めてしまうだろう。
 もっとも明子が清盛のプロポーズを受け入れた後の、時子がひとり寂しそうに歩くシーンは様々なことを暗示している。
 おそらく清盛と明子のやりとりを見た時子は、<本当の恋愛>とは何かを考えたのだろう。
 つまり、<本当の恋愛>とは<物語の世界>とはまったく違ったものであること。
 本当に好きになる男性というのは<光らない君>であるということ。
 また、鳥羽院の皇子がほしいという得子(松雪泰子)も、結局は璋子(檀れい)に負けたくないという想いからで、鳥羽院を愛しているわけではない。
 得子と比べると、清盛と明子の関係は実にさわやかですね。


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海賊戦隊ゴーカイジャー~アイム様、究極の名セリフ!! 「ライオンさんもお願いします」

2012年02月17日 | コミック・アニメ・特撮
 『海賊戦隊ゴーカイジャー』も今度の日曜日がいよいよ最終回。
 そこで今回はアイム様(小池唯)の名セリフ集。

 アイム様、大活躍のエピソードとしては何といっても29話「アバレ七変化で新合体」。
 花嫁、女子高生、ナース、婦人警官にコスプレ(?)して、ダイヤールから幸せエナジーの詰まった杖を奪回しようとする。
 そこでのせりふはこれ。
 「抱っこしてキスして、ダーリン」「じゃあ、誓いのキスだよ」「これは命令です!」「隙ありです!」「痛くないよ~、じっとしてなきゃダメだよ~」「油断しちゃったねえ。じゃあ、これ持っててあげる。お休み」「警察です!」「結構、疲れました」
 と、いずれも萌えせりふ!
 鎧(池田純也)が言うとおり「いつものアイムさんを捨てて」の大活躍!
 これでアイム様ファンが急増したことは間違いないだろう。

 ちなみに世の中には偉大な人がいて、この29話のアイム様のせりふを再編集して、YouTubeにアップしている人がいる。
 ご覧になりたい方はこちらへ。
 豪快29話のアイム様の台詞に悶えたら負け

 第46話「ヒーロー合格」のアイム様も名セリフを連発。
 悪魔祈祷師ジュジュの宇宙水晶により悪の心に火が付いてしまった鎧とハカセ(清水一希)。
 このふたりの争いをやめさせようとして、アイムは捨て身の行動に出る。
 鎧たちの攻撃を受けながらアイムは叫ぶ。
 「ハカセさんは誰よりもやさしい人です! 鎧さんは誰よりも人の幸せを考える人です! 私は信じております。おふたりが自分の心を取り戻すことを!」
 そして、ハカセが剣を、鎧がロッドを突きつけた時は「手加減なさらずともいいのですよ」。
 この一連の行動で、鎧とハカセは良心を取り戻す。
 そこでアイムはふたりをひざ枕して
 「お帰りなさい、ハカセさん、鎧さん」
 アイムは鎧たちのことを心から信じていたんですね。
 この仲間を信じる強い心!
 そして「お帰りなさい」の膝枕は、母親のよう。
 アイム様の愛の大きさを物語るエピソードだ。

 何気ないせりふにグッと来るものもある。
 第39話「どうして? 俺たち高校生」では、アイムたちが高校生になる。
 そしてマーベラス(小澤亮太)たちが授業をボイコットして校内をうろつきまわることにした時、アイム様はつぶやく。
 「あらまあ、では私も探検に」
 このあたりはかなりマニアックになるが、この「あらまあ」の言い方がいい(笑)。
 アイム役の小池唯さんならではの味。
 こんなのもある。
 第43話「伝説の勇者に」。
 このエピソードは宇宙最強の男・ダマラスが倒される話だが、ここでガオ・ライオンを呼び出す時のアイム様のひと言がいい。
 「ライオンさんもお願いします」
 何と可愛い言い方ではないか!
 ファンはこうした何気ないせりふにも心ときめくのである。

 最後は何と言っても第41話の「なくしたくないもの」。
 故郷のファミーユ星を滅ぼしたザツリグを倒す話だ。
 ここで王女だったアイム様は「海賊になりたい」と思った理由を話す。
 「私の故郷はもうありません。けれど、他の星に逃げのびた方々はいらっしゃいます。その方たちがファミーユ星の誇りを持ち続けられるよう、象徴として生き続けたいのです」
 「この手配書に顔が乗れば、私が生きてザンギャックと戦っていることが見せられますから」
 何という強い意思だろう。

 そして究極の名セリフはこれ。
 ザツリグをひとりで倒しにいこうとするアイムにマーベラスたちが「俺たちがいるだろう」と言った時に返したせりふ。

 「皆さん、私に力を貸して下さい。ザツリグを倒すために」

 これぞ、アイムの究極のせりふ。
 せりふには様々なものがあるが、やはり<心の底から絞り出した必死のせりふ>が胸を打つ。
 仲間たちとの強い絆も感じる。

 というわけで、今度の日曜日が「ゴーカイジャー」の最終回。
 アイム様たちに会えなくなるかと思うと、本当に残念である。


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相棒10 「宣誓」~あなたのしたことは真面目に勤めている警察官への冒とくですよ!

2012年02月16日 | 推理・サスペンスドラマ
 良心のみ従って、職務を全うしていくのが警察官。
 しかし人間だから間違うこともある。感情的になり偏見を持ち、物事を正確に見えなくなることがある。
 元警官・国原貴弘(石垣佑磨)もそうだった。
 同期の女性警官・屋島真美子が殺された事件で、野橋幸也(川屋せっちん)が犯人であると思い込む。
 明確な証拠はないが、捕まえて尋問すれば必ず犯人であると特定できると考えて、キャッシュカードを使って<証拠を偽造>する。
 国原が道を間違えたのは、この<証拠を偽造>した瞬間だった。
 行き過ぎた思い込みや偏見。プラスの言葉で表現すれば、過度の正義感。
 これが国原に道を誤らせてしまった。
 そして、警察学校での<宣誓>は、国原のような警官を作らないためにある。
 「良心のみに従って職務を全うし……」と自分に言い聞かせることで、行き過ぎた思い込みや偏見を排除することが出来る。
 式典などでの<宣誓>は堅苦しい儀式に思われがちだが、実は大事なことを教えている。
 <宣誓>した内容を国原が自分の<心の軸>にしていれば、今回のような悲劇は起こらなかったはずだ。

 もうひとりの犯人、生活安全課の課長・安達(渡辺憲吉)に関しては、悲喜劇。
 借金を返すために暴力団から金を受け取り、情報を流していた。
 しかし、ひとつ悪に手を染めると、それは加速度的に拡大していくんですよね。
 情報を流していたことが女性警官・屋島真美子にばれ、暴力団は真美子を殺してしまう。
 そして悪いことは重なるもので、真美子の殺害がえん罪事件になって、証拠隠滅(調書の書き換え、データを消去)をすることになる。
 安達はひとつの悪を隠すために、次々に罪を重ね、どんどん泥沼にハマっていった。
 まさに悲しい喜劇。
 「このくらいなら大丈夫だろう」と思ってしたことが、雪だるま式に膨らんで、結局身の破滅に繋がるといういい例だ。
 堤防は小さな穴から決壊するのだ。

 ということで、今回の教訓めいたこと。
 <心の軸>を持って生きていきたいですね。
 警察官なら警察学校で宣誓したことを、会社員なら社是みたいなものを、よく噛みしめてみたい。きっと大切なことが書かれているはず。
 また、日常生活においては、<どんな小さなことでも悪いことはしない><これくらいなら大丈夫だろうと思わない>みたいな<心の軸>。

 神戸(及川光博)は今回のことで、改めて『贖罪』のエピソードのことを思い出したようだ。
 あの事件の時、神戸は大河内(神保悟志)にこう語った。
 「嘘をつきました」「やつの言い分を信用しようとしなかった」「犯人と決めつけていた」「信じてやるチャンスがあったのに」「やつが憎かった」「死刑判決を望んでいた」「警察官だったのに、俺は。警察官だったのに……」
 自分と国原を重ね合わせる神戸。
 神戸は、どのような結論を出すのだろう。


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