漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

挑戦記 その6

2013-04-29 20:33:19 | 挑戦記
 2級、準1級の同時受検から1カ月ほどして、2009年12月頃から1級の勉強を始めました。次回の試験は2月ですからこの時点で残り2カ月。2級と同時並行での準1級を、約3カ月の準備期間で合格できたことから、私は不遜にも、2カ月あれば合格は難しいとしても、それなりのレベルまでは行けるのではないかと考えていました。感覚的なものに加えて、準1級で下地はできているはずだし、漢検の準備そのものにも慣れたはずと思ったからです。ところが実際に勉強を始めて見ると、これがとんでもない甘い考えであることを、すぐに実感させられることになりました。

 何回か書きましたが、出題範囲は2級が約2,000字、準1級が約3,000字、1級が約6,300字です。1級の準備を始める前、私は漠然と「1級の範囲は準1級の2倍。だから2倍大変だなぁ・・」などと考えていたのですが、良く考えて見ると、2級→準1級では新出漢字は約1,000字ですが、準1級→1級では新出が3,000字。つまり、級と級の間の格差という意味では、単なる字数だけでも1級は準1級のときの3倍の量があります。これが組み合わさって熟語、四字熟語が形成されるのですから、語彙の数という意味ではさらにその数倍(?)の量があるのです。実際、1級の問題集をやり始めて見ると、準1級までの知識では、ほとんどの問題は正解できないことがわかりました(ちなみに、問題集の最初の20問(読み問題)中、正解は3問でした。100点満点なら15点ということですね(汗))。これがわかった時点で、当初想定していた2010年2月の受検は断念。初めから6月の試験を目指して準備することにしました。

 ここからは、準1級のときと同様の地道な作業の日々になるのですが、準1級ではまだそれなりにあった「見たことはある字」というのが、1級ではほとんどありません。例えば部首別に記載されている対象漢字一覧の最初には、こんな漢字が並んでいます。

弌 丐 丕 丫 丱

 4つ目の【丫】は「あげまき」と読むのですが、これなど漢字というよりほとんど「記号」ですね。 ^^;  そうかと思うとこの次には「丼」なんて字が出てきて少しホッとしたりもするのですが、とにかく、「問題集をやって間違えた問題を書き出して復習」というやり方はこれまでと変わらないものの、ほとんどすべてが「間違えた問題」になるので、結局のところ問題集を丸ごとそのままエクセルに転記して復習しなければならない羽目になります。これはなかなか時間的にも身体的にも精神的にもしんどい作業でした。

 そんな中、ひとつだけ「気休め」になったのは、とにかく1級に合格しさえすれば良いという考えに立つなら、準1級以下の漢字や熟語はほとんど忘れてしまってかまわないということです。1級で初めて出てくる漢字が余りにも多いためか、出題される問題はほとんどが1級新出漢字とその熟語で、準1級以下の範囲はあまりたくさんは出題されません。なので、もし準1級を経ずに初めから1級を受検したなら(そういう人も実際にいらっしゃるようです)、1級に合格できても準1級はおそらく受からないだろうと思います。

 そんなわけで、私も今はもう準1級の四字熟語などはほとんど忘れてしまいました。^^;;;

 なんだかもったいないですね。

挑戦記 その5

2013-04-28 18:17:22 | 挑戦記
 準1級の出題範囲について一通りの学習がある程度進んだことから、2級でも使った成美堂出版社の「本試験型 漢字検定準1級問題集 '10年版」を購入し、9月の終わり頃から、模擬試験的な取り組みを始めました。2級のときは高を括っていていきなりこの問題集をやり、合格点に遠く及ばなかったのは前に書いた通りですが、その時の学習効果で今回はある程度勉強してからやり始めたため、準1級は第1回から172点と合格点(160点)を上回ることができ、自分の勉強方法についても自信を得ることができました。

 この時点で、11月の試験本番まであと約1カ月。1カ月前の段階で、2級、準1級とも合格レベルに達していると実感できたことで、気持ちに余裕をもって最後の仕上げに取り掛かることができました。こと、この11月の試験に限っては、このことは非常に大きかったと思っています。直前期に焦りを感じた状態で過ごすというのはやはり精神的にきついですし、実際の勉強でもあれもこれも気になってしまって集中できない結果になりがちです。「11月の試験に限っては、」と書きましたが、実はこの時がうまくいってしまったことで、その後1級に取り組む際に、勉強方法やペース、「どのくらいやれば合格レベルに行けるか」という感覚といった点で自己過信に陥り、不合格の憂き目に会うことになるのですが、そのことはまた1級のときに。

 それからの1カ月、「本試験型」の問題集をこなしつつ、まだ穴のある2級の部首と準1級の四字熟語を中心に復習を繰り返し、2009年11月8日の試験当日を迎えました。午前中に2級、午後に準1級の試験だったのですが、まず、ある程度予想はしていましたが2級受検者の年齢層の低さと広さにびっくり。何度も書いたように2級は常用漢字全部が出題範囲ですので、想定としては高校生以上くらいが対象なのだろうと思いますが、中学生が相当数いる上、どう見ても小学生ではないかという人もちらほら。逆に、かなり年配の方(外見上、「おじいちゃん・おばあちゃん」)もいて、さすがに年間200万人以上が受ける試験だけあると、変なところで感心。私の世代はと言うと、2級受検生の中では明らかに平均よりかなり上で、少々居心地は悪かったですね。^^;
 一方、午後の準1級はさすがに社会人かなと思う人が多く、ただそれでも「中学生か!?」という人も・・・・。私も、もし中学生の頃に漢検があったら、受けていたかもしれませんね。

 そんなこんなで初めての漢検チャレンジは無事終了して手ごたえも十分。正式結果も2級が198点(同音異義語の書取がひとつだけわからず。惜しいっ!)、準1級が182点と上々の出来。すっかり気を良くした私は引き続き1級の勉強を開始したのですが、その時、1級合格までそこからさらに1年3カ月も要するとは、まったく思っていませんでした。

挑戦記 その4

2013-04-25 22:19:08 | 挑戦記
 先日ご紹介した通り、準1級の対象範囲は「JIS第1水準漢字集合2,965字(常用漢字1,945字(当時)を含む)」、要するに常用漢字全部と、それ以外にあと1,020字ということになります。この1,020字ですが、その後苦しむことになる1級の漢字とは違い、「全然見たことないっ!」というような字は、必ずしもたくさんはありません。ですが、やはり「勉強しなくても、もともと書ける」という字はほとんどないですし、出てくる熟語も、2級に比べて格段に知らない言葉が多くなります。そして何より私が(と言うか、おそらくほとんどの受検者が)苦しんだのは四字熟語でした。

 もともと私は四字熟語が好きで、普通の人よりは良く知っているはずと自負していましたし、実際、2級の段階では知らない四字熟語にはそれほど出くわさなかったのです。ところが準1級になって、状況は一変しました。もともと知っている四字熟語がほとんどないのです。例えば以下の四字熟語、漢検にチャレンジしたことのない皆さんはどこかで見たことがありますでしょうか。

一顧傾城(いっこけいせい)、粉白黛墨(ふんぱくたいぼく)、仙姿玉質(せんしぎょくしつ)、太液芙蓉(たいえきのふよう)、明眸皓歯(めいぼうこうし)、沈魚落雁(ちんぎょらくがん)、紅粉青蛾(こうふんせいが)、傾城傾国(けいせいけいこく)

 これらはすべて「美人」を意味する四字熟語なのですが、私はこの中では、「明眸皓歯」を聞いたことがあるような気がした他は、まったく知りませんでした。しかも準1級の範囲とされている四字熟語は約1,000語(ちなみに1級の範囲は、これとは別に約1,000語)あるのです。この事実にぶつかったときはさすがに気が萎えるのを感じましたが、避けては通れません。問題集をやりながら、出てきた四字熟語の読み、漢字、意味をエクセルに入力し、自分で一覧化しながらひとつひとつ覚えていきました。

 当時、すでに40代後半だった私は、やはり一度覚えても若い頃のようには記憶が定着せず、すぐに忘れてしまいます(50代になった今は、もちろんさらにそうなっています。)。なので、完全に忘れ切ってしまう前に、2度目の確認(要するに「復習」)をすることが非常に大切で、これはなかなか忍耐と根気のいる作業でしたが、あるときふと気付いたことがありました。これらの四字熟語が「準1級の範囲」とされているというのは、その四文字の漢字の中に、一つ以上準1級の範囲の漢字が含まれているということをほぼ意味しています(もちろん、例外はあります)。ところで、上に書いた通りそもそも準1級の出題範囲というのは「常用漢字+1,000字」です。つまり、約1,000語ある四字熟語を一通り学習すれば、それで準1級の範囲の漢字をほぼ網羅できるのではないかということになります。学習を終えて振り返ってみると実際にはそれほど単純な関係ではなかったようですが、ただそう思いついたことで、四字熟語をひとつずつ確認・練習するという地道な作業にも、モチベーションを保つことができました。

挑戦記 その3

2013-04-24 06:16:21 | 挑戦記
 勉強を始めて1カ月ほどたつうちに徐々に問題集での点数が上がっていき、合格点の160点が取れるようになっていきました。勉強の成果で漢字や部首そのものを覚えていったからというのはもちろんなのですが、その頃から、私はあることを感じ始めていました。

 それは、毎日のように勉強を続けていると、まだ書く練習をしていない、つまり例の「読めるけど書けない」はずの漢字が、初めから書ける場合が出てくるということです。理由はわからないですし、感覚的なものなので本当にそうなっているのかもわからないと言えばわからないのですが、これはその後1級に取り組むようになってからも実感しているので、おそらく事実なのではないかと思っています。

 英会話学校や英会話教材などで、よく「英語脳(を作る)」という表現が使われています。英語を英語のまま感じ取る力、みたいな意味かと思いますが、それと同じで「漢字脳」とでも言うべきものがあるのでしょうか。「読めるけど書けない漢字」というのは、全体の雰囲気はなんとなくわかっているのだけれど、思い出そうとしてもピンボケの写真のようにボワっとしていて具体的な点画が出てこない、と言う感じかと思いますが、それがなぜかはっきりと浮かび上がってくることがあるのです。これは今まで感じたことのない新鮮な感覚で、ますます漢字の勉強にはまっていきました。

 それからさらに1カ月ほどたって8月になる頃には、問題集では9割の180点前後をコンスタントに取れるようになり、本番でも確実に合格できる自信がつきました。この年の次回の漢検は11月でしたので、この段階で実際の試験まではまだ3カ月あることになります。そうなると、もともと1級を取りたいと思って始めたことでもあり、欲が出てきました。漢検というのは、全部の級の試験が一斉に実施されるのではなく、いくつかの級ごとに時間を区切って行われるので、隣り合った級は同じ回に同時に受検することができます。

 そう思い立つと気がはやってしまうのが私の癖で、一旦はすぐには無理と思っていた準1級も、2級と同時に取り組んでみることにしました。漢検協会から出版されている「完全征服 準1級」「漢検 漢字辞典」「漢検 四字熟語辞典」を購入し、2級と並行して準1級の勉強を始めました。

挑戦記 その2

2013-04-23 06:32:31 | 挑戦記
 2級は常用漢字だけが出題範囲(正確には人名用漢字の読みも2級の範囲ですが、実際にはほとんど出題されません。)ですので、試験でも「見たこともない字」というのは出てきません。実際、特に読み問題に関しては、例えば「会釈(えしゃく)」「煩雑(はんざつ)」「督促(とくそく)」といった感じで、新聞や小説、ビジネス文書などを普通に読める社会人であれば、それほど難しくはないのです。

 ところが、購入した「本試験型」の問題集の第1回をやってみたところ、得点は200点満点中135点でした。2級の試験の合格点は155点ないし160点ですので、合格に20~25点も足りないということになります。なぜこんなことになるかというと、2級の試験の場合、200点の配点は次のようになっています。

①読み 30 ②部首 10 ③熟語の構成 20 ④四字熟語(書取) 20
⑤四字熟語(意味) 10 ⑥対義語・類義語 20 ⑦同音異義語 20 ⑧誤字訂正 10
⑨送り仮名 10 ⑩書き取り 50

 つまり、読み問題の配点が200点中30点分しかなく、逆に広い意味での書き取り問題が上記④および⑥~⑩で合計130点分あるのです。漢字は「読めるけど書けない」ということが良くあると思いますが、漢検に関してはそれではやはりダメなのですね。またそれに加えて、配点は10点と少ないですが、部首問題が非常に難しいのです。漢字全体から言えば、部首というのは「『体』は『にんべん』」みたいに一目瞭然のものが多いのですが、もちろんこんなものはあまり出題されず、出題されるのは例えば「亜」とか「喪」とかいった字です(正解はそれぞれ「二」と「口」)。こんなのは理屈ではわからず、とにかく●●の部首は●●と覚えるしかありませんよね。

 そんなわけで、1級が目標と思いながら準1級も難しく、一歩引いて始めたつもりの2級もこんなありさまで、「漢検手強し」を痛感しました。

 それからは、もう小中学生が漢字のテストに向けてとにかく何度も書いて覚えるのとまったく変わりません。専用のノートを一冊作って、問題集をやりながら間違えた問題は繰り返し書いて覚える、ということをひたすら続けて行きました。